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ヒロタシンタロウ『セイキマツブルー』が面白い!怪虫の夏もネタバレ【映画】

更新:2020.12.2 作成:2019.7.26

本作は、「異形」と「少女」という組み合わせで織りなされる青春漫画です。「いじめ」や「世界の滅亡」という暗い話題も出てきますが、うつ展開はなく、スッキリした結末を迎るので、安心して読み進めることができます。 さらに、2020年には映画化も決定している本作のあらすじと魅力について、ネタバレを交えながらご紹介します。

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『セイキマツブルー』がMNL48のAbbyで映画化!ヒロタシンタロウの名作が面白い【あらすじ】

1999年4月、どこにでもいる女子中学生の高坂(こうさか)は、クラスメイトの女の子・遠峰(とおみね)がいじめられている現場にたまたま居合わせてしまいます。

成り行きで会話することになった高坂は、彼女のスカートから形容しがたい姿をした奇怪な怪物が出てくるのを目撃し、驚きを隠せません。怪物とともにする彼女は、怪物のことをノストラダムスの予言に出てくる「恐怖の大王」と表現しました。

それからというもの、遠峰のことが気になってしかたがない高坂。積極的に話しかけてくる彼女を拒絶できない遠峰。2人の間に、奇妙な友情が芽生えていくのですが……。

著者
ヒロタ シンタロウ
出版日
2018-12-25

本作は、漫画配信サイト「コミックガム」で連載されました。単行本には、『セイキマツブルー』のほかに、短編「怪虫の夏」が収録されています。本作のタイトルになぞらえて、中の紙がすべて青く刷られているのが特徴です。

本作は映画化も決定しており、2019年12月のフィリピン国際映画祭で出品し、2020年には国内外で上演される予定です。

キャストには、AKB48の海外姉妹グループMNL48のAbbyを主演とし、妹役に同グループのBreiとColeenも出演が決まっています。そのほかにも、さまざまなアイドルグループに所属しているメンバーが脇を固めることが決定しています。奇妙な群青劇を、どう描くのでしょうか。映画の続報についても目が離せません。

作者・ヒロタシンタロウとは

作者のヒロタシンタロウは、ほとんど素性を公開していません。

本作が発売される前から、自作のイラストや漫画を投稿できるPixivやnoteといったサイトに作品を投稿しており、2019年7月現在もアカウントが存在しています。本作に収録されている短編『怪虫の夏』は、もとはPixivに投稿された作品のようです。

作品投稿は2019年7月現在も続いているので、チェックしてみるとよいでしょう。

投稿されたイラストは、本作のような異形や機械と人間の姿を描いたものが多く、幻想的な雰囲気が出ています。水彩絵の具のような淡い着色に癒されます。

また、本作に収録されている『セイキマツブルー』と『怪虫の夏』は百合要素が含まれており、作者は友情と百合を混同した作品が得意なようです。漫画家としてのデビュー作である『セイキマツブルー』が早くも映画化が決まり、今後の作品に期待が寄せられています。

作品の魅力をネタバレ紹介!結末からどんなことを感じる?

作品の魅力をネタバレ紹介!結末からどんなことを感じる?
出典:『セイキマツブルー 』

恐怖の大王は、遠峰の悲しみの心と共鳴して大きくなっていきます。

高坂は、彼女の心と共鳴して恐怖の大王が大きくなる場面を目にしており、本当に地球を滅亡させるのではないかと考えてしまいます。しかし、恐怖の大王がいなければ2人は話をすることもなく卒業を迎えたんだと思うと、どうしても恐怖の大王が悪い物には見えないのです。

恐怖の大王がノストラダムスの予言通りの存在なら、滅亡へと導いたのは遠峰ということになってしまいます。はたして恐怖の大王は本物なのか、そして2人の友情はどのような結末を迎えるのでしょうか。

また、遠峰がどうしていじめられるようになってしまったのかという、彼女の過去にも注目です。その姿は、過去に何があっても生きなくてはいけないのだと思わせられます。少女たちの近くも遠い心の距離感に、本当の友情について考えずにはいられません。

遠峰がいじめられるシーンなどは、心が痛くなることもありますが、高坂とともにいる姿とのギャップに萌えを感じます。青春時代、友人に特別な感情を抱いた経験がある人もいるでしょう。本作は、そのときの甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれます。

『セイキマツブルー』収録「怪虫の夏」も面白い!【あらすじ】

『セイキマツブルー』収録「怪虫の夏」も面白い!【あらすじ】
出典:『セイキマツブルー 』

女子高生のかな子には、最近の日課がありました。それは、毎日廃ビルに行くこと。

それには、ある理由がありました。彼女にはバイト先で出会った正人という恋人がいました。しかし、彼は突然バイトを辞め、音信不通に……。

何も聞かされていなかったかな子は呆然としますが、ふと、正人と以前訪れた廃ビルのことを思い出し、ひとり向かうのでした。そこで目にしたものは、どんな図鑑にも載っていない巨大な虫だったのです。

彼女は、彼から借りていたフランツ・カフカによる『変身』を思い出します。それは、突如虫になってしまう物語。それからは、まるで『変身』に出てくるような大きな虫の姿となってしまった正人のために、餌をあげたり掃除をしたりと、毎日世話をするかな子。

彼を助けてもらおうと、友人である順子に打ち明けますが、彼女はある理由からかな子を助けることはしません。そして彼女たちの友情には、亀裂が入り……。これは、虫になった恋人を巡る、2人の友情を描いた青春短編作品。

虫になった正人ではなく、それをめぐる順子とかな子の友情がメインの物語。突然、恋人が虫になっても彼を好きでいるかな子と、現実的に考えろと止める順子。

順子は、かな子の思いは尊重したいけれど虫になった正人に関わって欲しくないと思っています。彼女の行動で、どのように物語が動くのか。注目です。

作品の魅力をネタバレ紹介!遠峰と高坂のはぐくむ友情とほんのり入った百合要素に癒される

著者
ヒロタ シンタロウ
出版日
2018-12-25

百合要素は薄めと感じる人もいるかもしれませんが、友情と恋心が入り混じった2人の微妙な距離感は本作の魅力です。

作中で2人は水族館に行くことになります。怪物を抱えながら、水槽を泳いでいる魚を見ている遠峰に、高坂は思わず見惚れてしまったり、彼女の行動に赤面して好意を寄せているような反応をしてしまったり、可愛らしい中学生の反応に癒されるでしょう。

そんな2人は、少しずつ距離を縮めていきます。怪物を見れば恐怖を抱くでしょうが、高坂は彼女のどんな姿を見たり、話を聞いたりしても受け入れる姿勢を崩しません。そんな彼女に遠峰も心を許していき、お互いに欠かせない存在になっていきます。

がっつり百合要素が入っているわけではないので、百合漫画が好きな人には物足りないかもしれませんが、彼女たちの固い絆には胸を熱くさせるものがあります。

本作は「怪物」「いじめ」「世界の滅亡」といった、不穏なワードが多く登場します。決して明るいテーマではないものの、青く刷られたページや少女たちの可愛らしい姿に、本作にしかない独特の美しさが感じられます。

2人の友情が、どのような結末を迎えるのか。映画公開の前に読んでみてはいかがでしょうか。