中国「四大奇書」の魅力と見どころを徹底解説!『水滸伝』や『西遊記』など

更新:2019.7.28 作成:2019.7.28

中国の元から明の時代に成立した長編小説「四大奇書」。歴史上の出来事や人物をもとに架空の物語を加えた、エンターテインメント性の高い作品が揃っています。中国だけでなく、日本でも愛されているものばかり。あらすじと魅力を紹介していきます。

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「四大奇書」とは

 

中国の元から明の時代に制作された4つの長編小説「四大奇書(しだいきしょ)」。奇書とは、世にも珍しいほど秀逸な書物という意味を表しています。

清の時代に活躍した劇作家の李漁(りぎょ)が、『三国志演義』『水滸伝』『西遊記』『金瓶梅』の4作をまとめて「四大奇書」と称したことが始まりだそう。当時は書店などで、販売促進のためのキャッチフレーズとして用いられていました。

また現代の中国では、『金瓶梅』ではなく『紅楼夢(こうろうむ)』入れたものを「四大奇書」と呼ぶこともあります。

これらの作品は、歴史上の出来事や人物をモデルに、新たに逸話や架空の登場人物を盛り込まれているのが特徴。「四大奇書」から派生した物語も多く、日本でもドラマや漫画、ゲームなどに用いられています。

日本でも有名な「四大奇書」の代表作『三国志演義』

 

時は西暦220年。中国では後漢が滅亡し、新たな時代を創設するために「魏(ぎ)」「呉(ご)」「蜀(しょく)」という三国が名乗りをあげました。

それぞれ曹操(そうそう)、孫権(そんけん)、劉備(りゅうび)を筆頭に、三つ巴の戦いが幕を開けます。

著者
出版日
2014-09-11

 

『三国志演義(さんごくしえんぎ)』は、中国の明の時代に書かれた時代小説。作者は『水滸伝』を手掛けた施耐庵(したいあん)もしくは羅漢中(らかんちゅう)だといわれていますが、明らかになっていません。

3世紀の晋の時代に記された歴史書『三国志』をもとにしていて、逸話や雑劇などを加えた内容です。『三国志』は淡々と事実を語っているのに対し、『三国志演義』は物語として楽しめるように起承転結をしっかりとつけているのが特徴。

また登場人物のキャラクター設定もなされました。曹操は優秀ながら残忍で、孫権は血気盛んな情熱家、劉備は民を尊重する平和主義など……読者が感情移入をしやすいように工夫がされているのです。

井波律子が翻訳した本作は、ルビが多用され、馴染みのない言葉には注釈が付けられているので初心者にもおすすめ。生き生きとした文章で三国の栄枯盛衰物語を堪能してみてください。

108人の英雄を描いた「四大奇書」『水滸伝』

 

各地で疫病が流行っている時代。北宋の仁宗皇帝は、竜虎山にいる仙人へ使いの洪信を派遣し、祈祷を頼みます。洪信はたくさんのお札が貼ってある「伏魔殿」という扉を見つけました。興味本位に開いてみると、中からたくさんの光が飛び出してきます。

伏魔殿には108の魔物が閉じ込められていたそうで、洪信が扉を開けたことにより、それらが世に放たれてしまったとのことでした。

時は変わって、北宋末期の1121年。汚職や不正がはびこっています。悪徳官吏を倒すために、宋江という男が108人の仲間とともに国に反乱を起こしました。梁山泊(りょうざんぱく)を舞台に、命をかけて戦います。

著者
北方 謙三
出版日
2006-10-18

 

『水滸伝(すいこでん)』は、明の時代に書かれた作品。作者は施耐庵か羅漢中といわれています。タイトルの『水滸伝』とは、「水のほとりの物語」という意味。反乱の拠点となった梁山泊は、実際に広大な沼地だったそうです。そこに総勢108人の男が集まり、彼らは英雄として語られるようになりました。

108人はみな、事情があって世間からあぶれた人物。盗みや殺人を犯した者もいれば、もともとは恵まれた環境にいた者など、さまざまです。それぞれのもつ志と、そんな彼らを宋江がまとめあげるさまが見どころでしょう。

本作は、小説家の北方謙三が執筆したもの。説話の寄せ集めだった『水滸伝』を時系列順に直し、独自の解釈も加えて再構築しています。登場人物の一覧も載っているので、誰が誰だか混乱することもありません。己を懸けて戦った男たちの熱を感じられる作品です。

「四大奇書」のなかでも読みやすくておすすめ『西遊記』

 

不老不死を求めて仙人に弟子入りをした孫悟空。さまざまな術を身に着けたものの、調子に乗って大暴れをしたために五行山に閉じ込められてしまいました。

それから500年後。唐の僧侶である玄奘三蔵は、観世音菩薩から命じられ、インドの天竺まで経典を取りに行くことになります。五行山を通りかかり、孫悟空の封印を解いて弟子にしました。

猪八戒と沙悟浄も仲間に加え、旅を続けるのですが、行く先々に仙人や妖怪が立ち塞がり彼らの行く手を阻みます。無事に天竺へ辿りつけるのでしょうか……。

著者
中野 美代子
出版日

 

明の時代に書かれた『西遊記』。作者は、文人として活躍した呉承恩(ごしょうおん)だといわれています。玄奘三蔵は実在する人物で、彼が中国からインドに渡り仏教の経典を持ち帰るまでの旅を記録した『大唐西域記』をもとに、妖怪や仙人、竜など架空の存在を加えた伝奇小説です。

玄奘三蔵ら一行と妖怪たちの戦いが主な内容。ひとつひとつのエピソードは長くないため、敷居は高くありません。そもそも孫悟空や猪八戒、沙悟浄らも妖怪で、もの凄い術を身に着けていながら性格は短気など、長所と短所がしっかりと描かれているのが魅力的。個性豊かな彼らのやり取りが面白いのです。

日本でもさまざまな派生作品が発表されていますが、本書は特に翻訳がわかりやすいのが特徴。中国の文化や風習を理解したうえで訳していて、注釈も豊富になっています。『西遊記』の最初の一冊としておすすめです。

『水滸伝』のスピンオフ作品『金瓶梅』

 

主人公は薬屋を営む富豪の男性、西門慶(せいもんけい)です。権力を手に入れ好き放題をしており、正妻を含め5人の妻がいました。

そんななか、蒸し餅を売っている武大(ぶだい)という男の妻、潘金蓮(はんきんれん)と密通をします。その後武大を殺して、潘金蓮を6人目の妻としました。

武大の弟の武松は仇討ちを計画するのですが、なんと別人を殺してしまいます。命を狙われた西門慶と潘金蓮は、孟州へ逃げました。そこで西門慶は、未亡人の李瓶児(りへいじ)を見初めて7人目の妻にし、さらには使用人や芸者たちとも欲望のままに関係をもつのです……。

著者
出版日
2018-04-30

 

明の時代に書かれた『金瓶梅(きんぺいばい)』。『水滸伝』のなかの武松にまつわるエピソードを抜粋し、膨らませたスピンオフ作品です。『水滸伝』で武松は兄の仇討ちに成功していますが、本作は「西門慶と潘金蓮が生き延びていたら」というもしものストーリーを描いています。

淫猥すぎるとして何度も発禁になった過去があり、官能小説として知られています。しかし本作の魅力はそれだけでなく、当時の中国の服飾や邸宅、食べ物など、暮らしぶりが描かれているところでしょう。

香り立つ欲望と艶やかな文化、そして登場人物たちの情欲を感じてみてください。

「四大奇書」に追加されるほど優れた物語『紅楼夢』

 

天上界の夢幻境に住んでいて、上流階級の賈家の御曹司として生まれ変わった賈宝玉(かほうぎょく)。勉強が嫌いで、屋敷にたくさんの美少女を住まわせて暮らしていました。
 

なかでも美しい林黛玉という少女と互いに惹かれあいますが、プライドの高い性格が仇となり、思いを伝えることができません。

ある日些細なことで喧嘩をし、仲直りをすることなく、林黛玉が病気で亡くなってしまうのです。

著者
曹 雪芹
出版日
2013-09-26

 

清の時代に書かれた『紅楼夢(こうろうむ)』。前半を曹雪芹(そうせっきん)が、後半を高鶚(こうがく)が書いたといわれています。

林黛玉が亡くなった後、賈宝玉は薛宝釵(せつほうさ)という面倒見のよい女性と結婚をします。林黛玉は痩せていて病弱で、少しツンツンとした性格。一方で薛宝釵はふくよかで健康的で、温厚な性格。対照的に描かれた2人のヒロインが魅力的で、中国では「恋をするなら林黛玉、結婚をするなら薛宝釵」という言葉があるほどです。

本書は、中国文学者の井波陵一が翻訳を担当し、これまで曖昧だった描写の改善や、セリフのわかりやすさが評価されています。まさに中国版大奥ともいえる一冊です。