本作は、両親のいない小学生が叔母と暮らす物語。小学生でも安全に作れるお手軽朝ごパンレシピは、読めばきっと試してみたくなるものばかりです。ただのレシピ漫画ではなく、パンをとおして、彼らの関係が変化していきます。伯母と甥っ子の、あたたかくもちょっとハラハラドキドキな共同生活。そんな本作の優しい魅力を、全巻分ネタバレを含みながら紹介していきたいと思います。 2018年10月に縦型アニメ視聴アプリ「アニメBeans」でも配信された作品です。
5年前に山岳事故で母親を亡くした少年は、伯母に引き取られ、二人はともに暮らしています。人間嫌いで猫好きな34歳の伯母・モモちゃんと、母を亡くしてから大人びた顔をするようになった12歳の甥っ子・シロ。
2人の生活を優しく包むのは、簡単美味しいパンの朝ごはん(通称、朝ごパン)。「共存のたしなみ」として、シロはモモちゃんのために毎朝「火も包丁も使わない」朝ごパンを作ります。しかしそれには、秘められたシロの想いがありました。
シロとモモちゃん、猫のクーちゃんとの共同生活は、美味しい朝ごパンと、そしてお互いを思い合うあたたかい気持ちに満ちています。
- 著者
- うさとさや
- 出版日
- 2018-01-20
少し不器用なモモちゃんと、シロの大人びているとはいえ小学生なりの幼さで、一生懸命彼女に気持ちを伝える姿。そして美味しそうな朝ごはんのレシピ。さくっと読めて、ほんのり甘くてあたたかい、まるでパンのような読みごたえがある本作。
ショタ少年可愛さだけでなく、幼い恋心の行方やモモちゃんの思い、家族や絆に癒される優しさのあるストーリーは、ちょっと一息入れたいときにおすすめです。また本当に簡単レシピばかりなので、明日の朝はパンにしてみようかな?という気分になれます。
本作品の魅力の1つ……それは、毎回出てくる「朝ごパン」。
フレンチトースト風なバナナプリントースト、がっつり満腹感を感じるビビンバーグこっぺ、とろとろチーズが魅惑のアサリのトマトグラパン……。名前を聞いただけでも美味しそうなパンが、他にもずらりと登場します。
そして、このレシピは「火も包丁も使わない」で作れるという、とっても簡単な料理なのです。ほとんどが5工程ほどで完成し、混ぜた具材を乗っけて挟むだけというもの。挑戦しやすく「ちょっと食べてみたい!」という好奇心を刺激してくれます。ほどよいレシピを楽しむだけでも、充足感が味わえます。
さらに、レシピとともに紹介される「本日のおいしい食材」コーナーでは、普段の料理にも活かせそうな食材の豆知識が書かれています。作品の中で使われる食材に「疲労回復効果あり」「同時に摂取すると吸収率アップ」というような栄養学てきな知識が書かれており、長く保存しておきたい作品です。
美味しく楽しく読み進められて、自炊や日々のご飯の参考にもなる朝ごパンの魅力は本作品のおすすめポイントです。
少年・シロの健気さも本作の魅力の1つです。モモちゃんが大好きで、ずっと一緒にいたいと考える彼は、どうにかその願いを叶えるために努力を重ねるのですが……その発想が斜め上の方向で、作品に面白みを与えます。
伯母と甥っ子という関係でも、将来ずっと一緒にいられるかどうかは分からない……。
そう思い悩んだシロは、猫好きなモモちゃんの「飼い猫」になればいいのでは?という結論に達します。ペットの猫・クーちゃんのように、モモちゃんから必要とされる存在になるために、ちょっと間違った方向の努力が始まるのでした。
「無言の愛の告白」と称して猫の尻尾をつけたり、首には猫鈴を付けたり、さらにペットになるための誓約書を準備します。シロの謎の行動に、普段冷静なモモちゃんもとまどいます。
微笑ましくも可愛くて可笑しいシロの頑張りは、見ていて応援したくなってしまいます。
本作の最大の魅力は、シロとモモちゃんの関係です。モモちゃんに恋するシロは、伯母と甥っ子という関係性を理解しつつ、それでもずっと一緒に生きて行きたいと願っています。自分達は家族ではなく共存している、と考えているシロはこの共存関係を永遠にするためにいつも一生懸命なのです。
恋心は隠したままで、モモちゃんが自分を手放したくないと思ってくれるにはどうしたらいいのか?小学生なりに考えて、さまざまなアプローチを試みるシロ。けれど、大好きだという言葉は面と向かっては言えません。
「大好き」と言おうとして「大嫌い」と言ってしまったりするのに、眠っているモモちゃんの頬にそっとキスをしてみたり……。彼のあまのじゃくな行動に、モモちゃんも読者もハラハラドキドキしてしまうでしょう。
20歳以上も離れた彼らの関係は、これからどう変わっていくのでしょうか?注目ポイントです。
伯母であるモモちゃんと暮らす小学生・シロ。彼のかんがえる「共存のたしなみ」は、朝が苦手なモモちゃんに「朝ごパン」を作る事です。それは彼の内緒の決意であり、秘密の恋心の表れなのでした。
大好きなモモちゃんとずっと一緒にいたいのに、シロの前に立ちふさがる壁は多種多様です。伯母と甥という関係、大人と子供という歳の差、素直になれない自分の性格と母を亡くしたトラウマ……。それでも、モモちゃんと食べる朝ごパンが、2人の毎日を優しく支えてくれています。
けれど、モモちゃんのお見合い話が持ち込まれ、さらにはモモちゃんに不治の病疑惑が……!?シロとモモちゃんの共同生活は、一体どうなってしまうのでしょうか?
- 著者
- うさとさや
- 出版日
- 2018-01-20
シロとモモちゃん、2人の関係は不思議なバランスの上に成り立っています。一見不安定に感じるそのハラハラ感に、思わず続きが気になってしまう本作品。
1巻の見所は、シロの運動会に参加するモモちゃんとの2人3脚。大人と子供、伯母と甥っ子。保護者のモモちゃんを守れるようになりたいと願うシロが、精一杯の男らしさを発揮して見せてくれる場面はぐっときてしまいます。
一緒に買い出しに行く事を密かにデートと呼んでいたり、大人びた言動をする割に、子供らしく考えが足りない部分に焦ったりするシロの可愛さにも注目です。
モモちゃんが不治の病であるという誤解が解けて、ひと安心のシロ。ですが、伯母と甥っ子という関係上、自身の恋心は実らないどころか罪にさえなりうります。この想いがバレてしまったら、側にいられなくなってしまうかもしれない……。
そう考えたシロは、ますます素直な気持ちを伝えられなくなり、モモちゃんに心ない発言を繰り返してしまう事に……。一方のモモちゃんは、自身がシロの保護者として頼りないあまりに、彼が子供らしくいられないのではないかと悩みを深めていました。
早く大人になりたいシロと、大切な家族としてシロを守りたいモモちゃん。思い合いながらすれ違う2人の、心の行方は?
- 著者
- うさとさや
- 出版日
- 2018-10-20
シロとモモちゃん、2人の共存のかたちが見えてくる最終巻です。
見所は、自分達の関係は「共存」であって「家族」じゃないと考えているシロに、モモちゃんがその考えは違うと諭す場面です。家族じゃないから共存しているのではなく、家族だからこそ共存しているのだと話すモモちゃんに、2人の絆が見えるようです。
そして、伯母と甥っ子という2人の大きな壁を崩す新事実も発覚して……モモちゃんとシロの「家族」の関係は、どのような決着を見せてくれるのでしょうか?ラストのシロの笑顔、満ち足りた表情の意味は……ぜひ、ご一読して感じて頂きたいです。
ほのぼのしていて読みやすく、おすすめです。