長期休みになると課題として出される読書感想文。そもそもどのような本を選べばよいのか、迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。そこでこの記事では、本を選ぶコツやポイント、そして高校生におすすめの本を紹介していきます。
読書感想文の課題が出た際に、多くの人はそもそもどんな本を読めばよいのかわからずに止まってしまうのではないでしょうか。まず本選びのコツを説明していきます。
・自分が好きなことや、興味のあることに関係する本
いやいや読むよりも、前向きな気持ちで読んだほうがいいですよね。自分の好きなことや興味のあることがテーマになっている本であれば、読みやすく、そして印象に残りやすくなります。将来の夢に関わるものを読みたければ、著名人の伝記やノンフィクションもおすすめです。
・自分と共通点がある本
自分と同年代の登場人物が描かれた作品は、感性を共有しやすいのがポイント。彼らの行動と自分の考えを対比して、共通点や違いを軸に読書感想文を書くとよいでしょう。
・書店や図書館でおすすめされている本
学校が長期休みの時期になると、多くの書店や図書館などでは、読書感想文におすすめとされる本のコーナーが作られます。そのなかから気になったものを選ぶのもよいでしょう。
また読書感想文を書く際は、「過去に読んだ本」を選ぶことも可能です。本は読むたびに感想が変わるもの。最初に読んだ時に感じたことと、新たに読んだ時に感じたことを比較するのもおすすめです。
ベルリンオリンピックが開催される1936年。記者をしていた峠草平は、ドイツに留学していた弟の勲が惨殺死体として発見されたことを知ります。勲は、ナチス最大の機密事項である「アドルフ・ヒトラーの出生の秘密」を知ってしまったために、秘密警察による口封じで殺されてしまったのです。
同じ頃、日本には2人のアドルフがいました。ドイツ人と日本人のハーフであるアドルフ・カウフマンと、ドイツから亡命してきたアドルフ・カミルです。彼らもヒトラーの秘密を知ることになり、運命が変わっていきます。
- 著者
- 手塚 治虫
- 出版日
1983年から1985年まで雑誌上で連載された手塚治虫の漫画作品です。ナチス政権が支配をしていたドイツを舞台に、「アドルフ」の名をもつ3人の男の物語が描かれています。
ベルリンオリンピックやゾルゲ事件、第二次世界大戦などの史実を軸に、「反ユダヤ主義を掲げて大規模な虐殺をしていたヒトラーに、もしもユダヤ人の血が混ざっているとしたら……」というフィクションをまじえてストーリーが展開していくのが特徴です。
それぞれの登場人物は、自身が抱く正義と悪にもとづいて行動しています。読者は自分はどう思うのか、否が応でも考えさせられることになるでしょう。
漫画なので読みやすく、長い文章を読むことに苦手意識がある人にも、読書感想文におすすめです。
小学生の時に「ムーミン」シリーズを読み、フィンランドに興味を抱いた作者の高橋絵里香。それ以来、フィンランドの高校に進学することを目標にします。
しかし、上下関係が厳しく、体罰も日常的におこなわれる壮絶な中学時代を過ごすうちに、しだいに夢を諦めかけてしまうのです。そんな彼女の背中を押してくれたのは、ほかでもない両親でした。
そうしてついに留学を実現。言葉や宗教の壁にぶつかりながらも、なんとか高校を卒業するのです。
- 著者
- 高橋 絵里香
- 出版日
- 2007-03-16
2007年に刊行された、高橋絵里香の作品です。
何といっても本書の魅力は、「フィンランドに行きたい」という強い熱意と、それを高校生で本当に実現してしまう作者の行動力に尽きるでしょう。同年代の読者は、自分の意志で人生を切り拓いていくそのエネルギーに触れて、何を思うでしょうか。
しかし彼女は、ひとりで成し遂げたわけではありません。留学前は両親に励ましてもらい、留学後は現地の同級生やホストファミリーに助けられます。
また、教育先進国といわれるフィンランドでの生活の様子も興味深いです。 なんと、高校を卒業するまでの年数を、自分で選べる制度があるのだそう。将来について悩んでいる人にも、すでに夢や目標がある人にもおすすめの一冊です。
すべてをわかりあえる人なんていない。世の中には仲良くできない人もいる。
学校で「みんな仲良く」という教育を受けてきた私たちにとっては、少しびっくりしてしまうかもしれません。
- 著者
- 菅野 仁
- 出版日
- 2008-03-06
2008年に刊行された、社会学者である菅野仁の作品です。
本書は、「友だち」自体を幻想だといっているわけではありません。「自分を丸ごとすべて受け入れてくれる人がいる」という考えを幻想だとし、人との関係の築き方を教えてくれています。
合わないなと感じる人がいても、無視をするのではなく、適度な距離を保ちながら並存する……これからの時代は、他者と良い関係を築くためのスキルを磨くことが大切で、またルールを知っていればより豊かな関係を築いていけるのだとか。
新書というと高校生には少しとっつきにくいかもしれませんが、易しい言葉を用いてわかりやすく書かれているので問題ありません。読書感想文を書く際は、自分の周りの人間関係をあらためて見直してみて、本書に書かれている内容と比較してみるとよいでしょう。
1997年にパキスタンで生まれたマララ・ユスフザイ。父親が学校の経営をしていたこともあり、マララは学校に通いながら医者を目指していました。
しかし彼女の住んでいる地域が武装勢力に支配をされると、女性は教育を受ける権利をはく奪されます。当時11歳だったマララは、イギリスの公共放送を通じて自国の現状を発表。それ以降、平和と、女性の教育の必要性を訴えるようになりました。
その数年後、中学校から帰るスクールバスに乗っていると、複数の男から銃撃を受けることになるのです……。
- 著者
- マララ・ユスフザイ クリスティーナ・ラム
- 出版日
- 2013-12-03
パキスタンの人権運動家であるマララ・ユスフザイと、イギリス人ジャーナリスト、クリスティーナ・ラムの作品です。マララは2014年に史上最年少の17歳で「ノーベル平和賞」を受賞しています。
本書では、彼女の生い立ちや、武装勢力からの襲撃、その後の活動などが手記として綴られています。戦争が身近にある恐怖、女性への厳しい差別などは、日本に住んでいる私たちからすると想像をめぐらせることしかできません。ただ本書を読んで、当事者であるマララがどのように感じて行動したのかを知ると、いつもよりも1歩深いところで平和について考えることができるのではないでしょうか。
上流階級である白人専用の高校に通っている少女、スター。もともとは、「ゲットー」と呼ばれる黒人街で育っていました。
ある日、友達とともにパーティーに参加した帰り道、幼馴染のカリルが白人警察に射殺されるところを目の当たりにします。カリルは武器などを持っていませんでしたが、「ギャング風の見た目である」という理由で撃たれたのでした。
しかも周囲は、白人警官の正当性を立証するために、カリルを悪者に仕立てあげます。スターは幼馴染の実実を証明するために、そして黒人へのヘイトをなくすために、覚悟を決めて立ち上がりました。
- 著者
- アンジー・トーマス
- 出版日
- 2018-03-24
2018年に刊行されたアンジー・トーマスの作品。2019年の「青少年読書感想文全国コンクール」高校生の部の課題図書にも選出されています。
スターは証人として法廷に立つことになるのですが、そこにいたるまでの心の葛藤が繊細に描かれています。彼女は特別な才能があるわけではない、本当に普通の高校生。しかし、肌の色が異なるだけでなぜ差別を受けなければいけないのか、真剣に考え、戦っていくのです。
現在進行形のアメリカにおける人種差別問題はもちろん、ひとりの少女が不安や葛藤を抱えながらも、勇気をもって行動する姿に心動かされる作品です。