ようやく、梅雨も明けて、夏らしくなってきましたね。皆さま、お元気でしょうか? 熱中症にはお気をつけください。夏といえば、私は高校時代のことをよく思い出します。今回はこの本をご紹介したいと思います。
私は高校生のとき、演劇部でした。クラスに友達がいなかったので、部活は本当に楽しかった。皆んなで発声をしたり、大道具にペンキを塗ったり、台本何にするか考えたり。毎年、夏に高校演劇の大会があります。その大会は地区大会、県大会、地方大会、全国大会とあって、勝ち進まなければいけません。私がいた三重県はなぜか一位と二位は中部大会に進み、三位は全国大会には進めないけど近畿大会で上演することができるという謎ルールが存在していました。私たちは高2の夏、三位になりました。全国大会には行けないけど、また皆んなで上演できることがうれしかった。
その年、近畿大会で前田さんは審査員をしていました。そのことに気づいたのは何年も後のことです。
前田さんというのは前田司郎さんのことです。
私は毎年お正月に、前田さんたちと演劇をやります。すごく楽しくて、毎日お正月ならよいのに!と思います。前田さんは料理が上手で、鍋を作ってくれたりします。前田さんのお手伝いで台所に立つと、まな板が木で、包丁も何種類もあってピカピカで、すごいなぁと思います。前田さんに、木のまな板は洗剤で洗うとダメになるということを教えてもらいました。
前田さんは優しいです。
前田さんは猫を飼っています。私はその猫を見たことがありません。
前田さんは斜め下を見て、よく考えごとをしています。少し黙った後、すぐ面白いことが口から出てくるので、すごいなぁと思います。私も時々前田さんの真似をして、斜め下を見ながら考えごとをするのですが、脳みそが違うので面白いことが浮かびません。
前田さんは稽古中も本番中も一番楽しそうにしています。出てないときも袖から舞台を見て、笑っています。前田さんが楽しそうだと、他の人も楽しくなります。私も楽しくなります。楽しくなりすぎて、本番中笑っちゃったりすると、前田さんに「笑わないで」と言われます。反省です。
- 著者
- 前田司郎
- 出版日
- 2012-06-07
演劇に詳しくない人でも手に取りやすい一冊です。複雑な演劇用語はほとんど出てこないですし、わかりやすく、面白く読めるものになっています。夏休みの読書感想文にオススメです。
演劇部はマイナーで地味で恥ずかしい。世間的にこういうイメージだと思います。この本に出てくる人たちも、花形の高校生活を送る人たちじゃなく、普通や地味な高校生たちです。高校生たちが恋愛や才能や人間関係で悩みながら、演劇を作り、大会を目指すお話です。演出家でもある前田さんが書いているので、演劇を作るシーンは「面白い演劇とは何ぞや?」ということが、すごく細やかに描かれています。
パッチワークのように色んな登場人物の視点でお話が進むので、どの人物にも感情移入ができ、情が沸きます。
高校生の過度な自意識が可笑しくて、懐かしくて、ふふふと笑いました。私は友達が少ないのですが、この本を読むと、友達に会っている感覚になるので、楽しいです。
下巻の最後の妙子と太陽の会話には虚しいような、悲しいような、やるせなさがあって、寂しくて泣いてしまいました。この二人の関係性には色んな想像が膨らみます。
夏の夜の少し寂しくなったときに、ぴったりの本だと思います。