『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』結末までのおすすめ話ネタバレ【無料】

更新:2021.11.19

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』は「週刊コミックバンチ」、「月刊コミックゼノン」で連載されていた原作・北尾トロ、作画・松橋犬輔の作品です。同名のエッセイを元に、法廷でくり広げられる人間模様を描いた社会派の漫画。ドラマや映画、舞台とさまざまなところで取り上げられています。 本作はスマホの無料アプリで読むことができます。気になった方はそちらからもどうぞ!

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『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』が面白い!無料で読める!【あらすじ】

この作品は、裁判でおこなわれている人間模様や駆け引きといった生々しいリアルさを描いた漫画です。

主人公は、エアコンの営業をする28歳の北尾 太郎(きたお たろう)。仕事で裁判所を訪れた際、興味深い話を耳にします。

「女子高生の傍聴(裁判を見学すること)が多くて、裁判長が張り切ってた」や、「不倫相手を恐喝した元愛人が、めそめそ泣き続ける相手の男を裁判中に襲った」……など。

厳粛なイメージとはほど遠い、裁判の内情の数々。不意に興味を引かれた北尾は傍聴に行き、目の前の裁判に、フィクションではない人間ドラマを見出し、裁判の傍聴にハマっていったのです。

著者
北尾 トロ
出版日
2007-12-08

本作は「裏モノJAPAN」で連載されていた同名実録エッセイのコミカライズ。原作者の北尾トロさんが実際に何度も傍聴し、特に印象に残った裁判を取り上げています。
 

実は、懲役三年以下の判決にしか執行猶予はつきません。刑務所に入るかどうかは天と地ほどの差があり、まさに人生の岐路といえるもの。このようなリアルさが日々裁判所で起こっているのです。

タイトルにある「懲役4年でどうすか」には、このリアルさを前にした傍聴者の興奮具合が込められているのでしょう。

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原作・北尾トロ、作画・松橋犬輔とは

原作の北尾トロ(きたおとろ)は1958年1月23日生まれ、福岡県出身のフリーライターです。本名は伊藤秀樹。法政大学社会学部を卒業した後、編集プロダクションのアルバイトを経てライターになりました。

「別冊宝島」や「裏モノの本」などに寄稿し、サブカルチャー関係や裏家業、同性愛などマイナーなジャンルの作品を多く手掛けています。 
 

代表作は『キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか』、『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』など。前者は、人があまりやりたがらないことや、日々の小さな疑問などに切り込んだ笑えるエッセイで、後者は北尾トロが実際に見聞きした東京地裁での印象的な出来事を綴った実録エッセイです。

著者
北尾 トロ
出版日
2006-06-01

作画の松橋犬輔(まつはしいぬすけ)は神奈川県出身の漫画家でイラストレーター。受賞歴以外の詳しいプロフィールは、非公開となっています。

2007年から「週刊コミックバンチ」で『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』コミカライズを担当。2011年、連載中に実の弟が逮捕されており、登場人物と事件を自分たちに置き換え、裁判の様子を描いた『裁判長!ぼくの弟懲役4年でどうすか』も話題を呼びました。

美大予備校や法廷、少年犯罪と言った、一般認知度の低いテーマの作品が多いです。松橋犬輔は緻密なリサーチに定評があり、マニアックながら説得力を持った読みごたえのある部分が魅力です。

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』おすすめエピソード:ドクロの男【1巻ネタバレ注意】

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』おすすめエピソード:ドクロの男【1巻ネタバレ注意】
出典:『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』1巻

まず最初にご紹介するのは、北尾が初めて傍聴した交通死亡事故を扱う裁判。ここに裁判傍聴の面白さがすべて詰まっていると言っても過言ではないでしょう。

被告人はどこにでもいそうな青年ですが、大きなドクロマークが入ったパーカーを着ている、裁判中は真面目に受け答えしないなど、誠意が足りていないと北尾は感じます。

しかし、北尾が部屋から退出すると、その青年が泣きじゃくる遺族に直接、頭を深く下げながら謝罪するところに遭遇するのです。

裁判中にはなかった青年の誠実さに触れ、北尾は「彼はただ不器用なだけなんだ」と思いなおすのでした。

裁判とはニュースやワイドショーで書き立てられるような、派手な事件ばかりではないのです。ほとんどの事件を起こすのは普通の人間なのでした。そんな普通の人間が個別の事情で裁かれる、そこに裁判のドラマ性があるのです。
 

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『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』おすすめエピソード:言いなりロボット【2巻ネタバレ注意】

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』おすすめエピソード:言いなりロボット【2巻ネタバレ注意】
出典:『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』2巻

この裁判は、北尾トロさんが特に印象に残っているとコメントを残しているほど、インパクトがあります。

主に登場するのは根暗男のトツカと、彼を食い物にするチンピラ・フジサワの2人。2人は中学時代からの友人関係と主張しますがが、実際にはフジサワがトツカを心身ともに支配した主従関係にありました。

フジサワはある時、たまたま立ち寄ったコンビニの女性店員に一目惚れし、彼女からも好意があると思い込みます。交際を迫って失敗したフジサワは、トツカをそそのかして女性店員を強姦させます。その後、警察に行くと訴えられたフジサワは、強姦事件を有耶無耶にするため、トツカを巧みに心理誘導して、女性店員を殺害させました。 
 

実行犯のトツカにも責任がありますが、主犯フジサワが一番の悪であることは明白。裁判は当初トツカを被告として進みますが、段々とフジサワが裏で糸を引いていたことが発覚していきます。

 トツカにとってフジサワは、初めてにして唯一の「友人」でした。思い悩みながらも、友達のために手を汚したトツカと、ただただ悪逆なフジサワとの対比が鮮烈です。実話をもとにしていながら、ここまでダイナミックで劇的な話があるのかと驚かされるエピソードとなっています。

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』おすすめエピソード:純恋歌【4巻ネタバレ注意】

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』おすすめエピソード:純恋歌【4巻ネタバレ注意】
出典:『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』4巻

当たり前のことですが、裁判で争われるのは罪の所在についてです。犯罪者の罪状を暴き、法律で裁くのが本分。その点で言えば4巻収録の「純恋歌」は非常に異質です。被告人の根府川省造(ねぶかわしょうぞう)は加害者でありながらも、同時に被害者でもあるのっです。、ある意味では、被害者のいない事件ともいえるでしょう。

彼の罪状は妻への自殺幇助(じさつほうじょ)。簡単に言えば自殺を支援した罪で、日本では自殺自体は罪ではありません。

昭和時代、銀座のバーのボーイとホステスとして知り合った省造と妻・雅子。決して裕福ではなかったし、子宝にも恵まれませんでしたが、愛し合う夫婦でした。しかし、ある理由から雅子は生きることに絶望し、省造と心中しようとしたのです。

本来、夫婦揃って自殺した一家心中だったのです。ところが、省造だけが生き残ってしまいました。結果、雅子に請われて自殺の段取りをした省造が、自殺幇助として起訴され……。

愛について、そして罪について考えさせられるエピソードとなっています。愛する妻のため自殺に付き合った省造の気持ち、亡くなった雅子の真意。ドラマや映画にならない裁判には、胸の悪くなるような悪党がいる一方で、このような思わぬ事情も出てくるのだと痛感させられます。

主人公の北尾が涙を止められなかったように、読んでいるだけで胸が締め付けられる気持ちとなるでしょう。

『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』結末は泣ける?笑える?【13巻ネタバレ注意】

北尾はこれまで見聞きした傍聴メモを元に、「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」というブログを始めます。これまでの経験を思い出しながら裁判所を訪れた彼は、傍聴初心者らしき女性2人を発見し、最初の自分を思い出しながらついて行きました。

2人の選んだ裁判は他愛もない窃盗事件でした。4千円にも満たない、なんのドラマ性もなさそうな賽銭泥棒ですが、これが思わぬ展開になっていくのでした。

著者
北尾 トロ
出版日
2010-10-09

被告人・出田伸幸(いずたのぶゆき)は故郷の秋田に妻子を残し、東京に出稼ぎに来た46歳の男。しかし、焼き芋の移動販売がうまくいかず借金は増える一方で……。
 

情に訴える弁護人の質問、切々と答える出田の答弁は感動的。ちっぽけな賽銭泥棒から思わぬ人情話に飛躍し、思わずもらい泣きしてしまいそうになります。

ですが、そこで終わらないのが本作。日常生活では決して覗けない、裁判の表も裏も描かれるのが魅力です。どのような決着になるかはぜひ実際にご覧ください。

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主人公はあくまでも傍観者で、終わってしまった事件の公判を見ているだけなのになぜか面白い。それは裁判に無数の人間ドラマがあるからに他なりません。これをきっかけに、実際に裁判所へ傍聴に行ってみるのもよいのではないでしょうか?

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