ミツメ・川辺素が選ぶ「現実に入り込んでくる5作品」

ミツメ・川辺素が選ぶ「現実に入り込んでくる5作品」

更新:2021.12.6

初めまして。ミツメというバンドでボーカル・ギターをやっている川辺と申します。 先日開催したワンマンライブの際。普段はできない演出に挑戦することができたのですが、そもそも演出とは何かというところから悩むうちに、TAKING HEADSの『STOP MAKING SENSE』と出逢いました。そして以前から、現実と想像がごちゃごちゃになって自分も混乱してくるような作品に魅力を感じていたことを思い起こしました。 そこで今回は、今まで僕が読んだ中で近い雰囲気を感じた作品を選んでみました。

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こんにちは。初めまして。第1回ということで簡単に自己紹介からさせていただきます。ミツメというバンドでボーカル・ギターをやっている川辺と申します。

田舎で高校生活を送り、東京に来ました。バンドは大学の頃の友達4人で結成。活動を初めてもうそろそろ6年くらいです。これまでに3つのアルバムと3つのシングルを作ってリリースしています。今は次回作に向けて準備を進めています。

ミツメはこの前(2015年7月)に青山のスパイラルホールでワンマンライブを開催しました。スパイラルホールは普段、コンサート、ファッションショーや企業の説明会など挙げればきりがないですが多目的に利用されている会場です。

なので、会場には元からバンドがライブをするための設備があるわけではなく、自分たちで機材を用意する必要がありました。そのためライブハウスとは違った雰囲気を作れる、それを活かして普段はできない演出に挑戦するのが良いのではないか、という話になりました。

そうは言っても初めてのことで、そもそも演出とは何かというところから悩み、何かヒントがないか気にしながらライブを見たり、いろいろなライブ映像を見ました。いつもMVを作ってくれている関山さんにも相談すると、TAKING HEADSの『STOP MAKING SENSE』をおすすめされました。

本当にざっくり紹介すると、この映像作品はTALKING HEADSのライブ映像で、あまり飾り気のない舞台を上手く活かして、バンドを凄く魅力的に見せる演出がちりばめられている作品です。ちゃんと見たことがなかったので、DVDを購入しました。

何か参考にできたら、という少し邪な気持ちがありつつ見始めたのですが内容のすばらしさにただただ感動しました。編集によるところも大きいのですが、実際にお客さんの前でやっているのか、そもそも映画のシーンなんじゃないのか、現実なのかなんなのかわからなくなり、見ているこっちの頭がおかしくなってくるような演出に夢中になります。

この作品に感銘を受け、スパイラルホールでのワンマンライブは置いておいて、TALKING HEADSのメンバー、デイヴィッド・バーンのパーソナリティについて掘り下げました。

いろいろ見ていく中で、彼のディスコグラフィーの中で、エイモス・チュツオーラというナイジェリアの小説家の作品『My Life in the Bush of Ghosts(邦題:ブッシュ・オブ・ゴースツ)』からインスパイアされて創作した同タイトルの作品を知ることになります。その作品自体はエイモスの2作目だったので、代表作で1作目の『やし酒飲み』を読みました。

作品自体については後述させていただくとして、『STOP MAKING SENSE』からも感じたように、以前から現実と想像がごちゃごちゃになって自分も混乱してくるような作品にすごく魅力を感じていました。

そこで今回は、今まで僕が読んだ中で近い雰囲気を感じた作品をピックアップさせていただきます。
テーマは、現実に入り込んでくる5作品です。

『やし酒飲み』

アフリカ、ナイジェリア出身のエイモス・チュツオーラのデビュー作。1946年の作品。

ふらっと日常の話かと思いきや、神や化け物がそこらに存在していて超現実なことがホイホイ起きる。神話的ではありつつもスタイリッシュとは呼べない描写が多く、アフリカに根付く伝承が由来なのか興味がわいた。

アフリカ大陸から死者の国まで、本当に徒歩で行ける距離でつながっているんじゃないかと錯覚する。

著者
エイモス・チュツオーラ
出版日
2012-10-17

『百年の孤独』

コロンビアの作家、ガルシア・マルケスの1967年の作品。

実際にあるかのような架空の村で起きる100年のことについての物語。作中で起きること自体も奇妙だが、同じような名前の登場人物が何人も出てきて本当にわけが分からなくなる。

著者
ガブリエル ガルシア=マルケス
出版日

『四畳半神話大系』

森見登美彦の2005年の作品。京都が舞台。自分が関西出身ということもあり、読んでいるとリアリティを強く感じながら混乱できる部分もあるが、自分の中にある京都がちょっとずつ歪んで引き込まれた。

関西出身じゃなくても優しい文体で、パラレルワールドを感じられる良い作品。

著者
森見 登美彦
出版日
2008-03-25

『城』

フランツ・カフカの1922年の作品。どこからどうやっても城に近づけない過程が延々描写されている。

自分のように読んでいるうちにだんだん苛立つ人もいると思う。読後味わう途方もない気持ちは、普段の実生活でも味わうことに似ていると気づいて軽く絶望する。

著者
フランツ・カフカ
出版日
1971-05-04

『芝生の復讐』

リチャード・ブローティガン1971年の作品。短編集。

アメリカの作家で、アメリカンドリームの世界観ではなく、ささいなアメリカが見られる。寝ぼけて幻をみているような感覚がして好き。

著者
リチャード ブローティガン
出版日
2008-03-28

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    バンドマンやソロ・アーティスト、民族楽器奏者や音楽雑誌編集者など音楽に関連するひとびとが、本好きのコンシェルジュとして、おすすめの本を紹介します。小説に漫画、写真集にビジネス書、自然科学書やスピリチュアル本も。幅広い本と出会えます。インタビューも。

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