私にとっての“こだわり”について考えさせてくれた本【住岡梨奈】

更新:2019.8.24 作成:2019.8.24

2015年の8月から、時に不定期になりながらも続けてきたこの連載も今回が最終回になります。4年間大変お世話になりました。とはいえいつも通り、今ご紹介したい本を選んだので、皆さんもいつも通りに読んでいただけたら嬉しいです。

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小学生の頃、夏休みや冬休みの自由研究を発表する際に[特にこだわった部分はどこですか]という項目が提出用紙にあったことを覚えています。発表するほどの“こだわり”って……と、私は何を書くべきなのか困っていました。

そもそも“こだわり”とは何でしょうか?

勉強や仕事をするときの順序、家具の選び方、食べ方など食にまつわるものまで、具体的に考えてみると切りがありません。こだわりが強すぎて相手に面倒くさいと思われてしまうこともあるでしょう……。

宣伝広告や普段の会話のなかでも褒め言葉として使われることが多い“こだわり”ですが、本来は[気にしなくてもいいことを気にすること・心が何かにとらわれて自由に考えることができなくなること]などの否定的な意味として使われる言葉なのだそうです。どちらにせよ自分以外の人に押し付けなければ、こだわるもこだわらないも個人の自由だと私は思います。

さて、今回は登場人物や作者の“こだわり”に目を向けてほしい3冊を選びました。ぜひ〈良い悪い〉の判断は特にせず「君はそうなんだ、私はこうだな」と心の中であなたの“こだわり”を見つけてほしいなと思います。私はいくつか見つけることができました!

言えないコトバ

著者
益田 ミリ
出版日
2012-06-26

〈口に出しているコトバよりも、あえて口に出していないコトバのほうが、その人物を知ることができるんじゃないだろうか?——〉という冒頭からドキッとさせられました。

日常会話の中で、同じことを言っているのに人によって異なる言い回しを使っていることがありますよね。作中では、作者自身や周りの人達がどんな言い回しをこだわって使っているかに目が向けられています。最初は意識的に使い始めた言葉でも、徐々に無意識に使うようになっている言葉と、いつの間にか使わなくなった言葉が誰でもあるはずです。「これはさすがに気にしすぎじゃ……!」と心の中でツッコミを入てしまう作者のこだわりもいくつかありましたが、世代による違いや、話し相手によって使い分けていることにあらためて気づかされました。[ズボン / パンツ][ジーパン / ジーンズ / デニム]などいろいろありますよね。デビュー当初、私がズボンと言ったらスタイリストさんに笑われたことがありました。パンツと呼ぶのがどうも苦手でした。だって、パンツはパンツでしょうが……!(当時の心の叫びです。笑)

そういえば、私が持っている益田ミリさんの著書を数えたら10冊以上ありました。今まで何冊かご紹介させていただきましたが、それはどうやらほんの一部だったようです。

“好き”もこだわりの一つです。きっと。

ムーミン谷の彗星

著者
トーベ・ヤンソン
出版日
2011-04-15

勇気と優しさを兼ね備えた主人公のムーミンは、見栄っ張りでさみしがり屋の友達スニフと一緒に彗星を調べるため旅に出ます。危険な目に合いながらも旅の途中で出会った仲間達と助け合い、目的地を目指すのです。

[あと四日で彗星が地球にやってくる]という衝撃的事実を知ったムーミンとその仲間達は、身を守るために頭と体を使って大忙し!あと数日で地球に彗星が突っ込んでくるというのに、ムーミンとスニフは小さなことで言い合いをしたり、仲間同士で時折ユニークな会話をくり広げたりします。きっちり計算しないと気が済まないスノークや、いつも話が横道に逸れてしまうスノークのお嬢さん、音楽好きで面倒見のいいスナフキンなど、それぞれがこだわりを強く持っているにも関わらず、不思議と折り合いがついて、時には黙ることで気持ちを共有している場面もあります。気分やその時の発言に踊らされることなく、仲間同士相手を思いやっているのが読み手にも伝わる愛すべき作品です。

ムーミンのお話は全九巻、『ムーミン谷の彗星』は第一巻のお話です。

ムーミンを話題にすると「カバでしょ?」「妖精じゃないの?」とよく言われますが、ムーミンはムーミントロールという生き物だそうです。なのでカバでも妖精でもありません。キャラクター設定から作者のこだわりを感じますね。

初めての海外一人旅は、作者が生まれたフィンランドの首都ヘルシンキでした。どうしたってフィンランドに憧れてしまう、この気持ちも私の強いこだわりです。 

羊をめぐる冒険(上)

著者
村上 春樹
出版日

小説の舞台は北海道だと小耳に挟み、北海道出身の私は「読まなくては!」と気持ちを駆り立てられて読み始めました。主人公の「僕」と友人「鼠」の二人が、とある一枚の写真についてやり取りをしたことをきっかけに「僕」が一頭の羊を探しに旅に出るという、タイトル通り《羊をめぐる冒険》へ導かれる物語です。

読み進めていくと「鼠…?」と登場人物の名前や物語の雰囲気に過去にも似たような本を読んだ記憶があるなと思い調べたところ、〈鼠三部作〉というワードを見つけました。どうやら「羊をめぐる冒険(上)・(下)』の前に読むべき作品があったようです。〈鼠三部作〉とされている一作目が『風の歌を聴け』、二作目が『1973年のピンボール』、三作目となるのが『羊をめぐる冒険』でした。私は幸い『風の歌を聴け』をすでに読んでいましたが、『1973年のピンボール』を飛ばしてしまったことになります…。順序を気にしなくても楽しめる作品だとは思いますが、作者の意図や時系列がとても気になるのでどうしてもこの思いは譲れません! そんなわけで私は『羊をめぐる冒険』の下巻を読み始める前に『1973年のピンボール』を読みたいと思います。

〈鼠三部作〉の続編として『ダンス・ダンス・ダンス』があることも確認済みなので、「僕」を追いかける私の旅はまだまだ続きそうです。