阿川佐和子と大石静・両氏による対談本と、岡村ちゃんこと岡村靖幸が「結婚とは何か?」をインタビューしまくった本が、やたら面白い。結婚してる人、するかもしれない人、してた人、しない人、全方位対応。“ケッコン”を切り口とした、つまりは生き方の話。
田舎に住んでいるんですけど。
一昨日、夕飯作っている最中に、お子5歳男児が「とうちゃんとムシ捕ってくるー!!」つって、裏の畑へ走ってゆきましてね。
これまでとくにムシ好きでもなかったのに、なんだろ、保育園のお友だちの影響ですかね、急にセミとかカブトムシとかクワガタとか、やいやい言うようになって。
お盆休みにうちの実家行ったときも、朝からずううっと、セミの抜け殻探しに奔走、虫かごに山ほど集め、
「これは宝物……」
つって、大事に自宅まで持ち帰って。
あれ、ひとつひとつは割とかわいくて、服にツメひっかけてブローチみたいにつけて遊んだり、造形の細かさに感心したりして、楽しめるものなんですけど、それが30、40、ぎゅうぎゅうに透明プラスチック容器に詰められてるの見ると、それなりに恐怖を覚えるというか。
コレから無事羽化した中身たちは、木につかまって鳴いたり、交尾したり、子どもに捕まったり、なんやかんやありつつそれなりに生を謳歌して、でも今頃全員しんでるんだなあ、諸行無常~、とか。
で、そのムシに目覚めたお子が、夏の夕暮れ、夫と2人でムシさがす、というのも、これはこれでとてもよい光景の1つではないか、田舎に住んですぐそこに自然がある生活の醍醐味ともいえるのではないか、こういった何気ない記憶がお子の人生にそれとなく蓄積されていくのは大変喜ばしいことではないか、などと、それなりに感慨深く、ナスを炒めていたのですが。
近所のホームセンターで、カブトムシ買って帰ってきました。
「オレの人生で、ムシ買うことがあるとは、夢にも思ってなかった」
と、夫48歳が申しておりました。わたしもまったく同意見です。
まあ、いいんですけど。お子、ものすごく喜んでるしな。お子の喜びは正義。
なんか、ツノが3つあるやつ。名前は『カブ太郎』に決まりました。
もう夏も終わりだからですかね、500円引きになっていたそうです。せつねえな。
そしたら昨日、保育園でさらに2匹、カブトムシもらって帰ってきましてね。
自分ちの持ってる林で大量に捕まえてきたお母さんが、みなさんご自由にどうぞつって、保育園に持ってきてくれたらしい。かっこええ。
女の子カブトムシと男の子カブトムシ、それぞれ「カブ姫」「カブ王子」と名付けられ、夫はまたホームセンターへ走り、餌ゼリーとか、飼育用木くずとか、カブトムシが登る木と葉っぱのセットとかそういうの買って、お子と、2つの虫かごになんやかんや細々とセッティングしてるときにふと
「……あれ、オレなんでこんなの買ってきてんだろう、オレはどこに住んでるんだ?!」
と、我に返っていました。
そう、ここは山に囲まれた南信州。木も葉っぱも木くずも、そこら中に落ちている。
ムシは人を狂わせますね。
でね、2つ並んだ虫かご見て、なんだかこっちも急に、我に返っちゃって。
もう何十年もずっと、セミの抜け殻とかカブトムシとか、まったく関係なく生きてきたのになんだこれ。子ども、とか。結婚、とか。虫かごとか。
なんだか、気づいたらアタシえらい遠いとこまで来てんですけど! ここ、どこ?!
“だれでもみんなけっこんするもの”と何の疑いもなく刷り込まれてた子どもの頃はともかく、芝居始めた20代半ば以降、そういうのまったく考えてなかったのでね。
ハアァ~、人生、不思議なもんずら~、なんだろなあ~、これからどこへゆくのかなあ~と、頭がぼんやりしてきたので、そんなときは人生のパイセンたちの話をきこうジャマイカ。
- 著者
- ["大石 静", "阿川 佐和子"]
- 出版日
- 2018-01-29
(表紙そでより引用)
「ふたりっ子」「セカンドバージン」など数々のヒット作を手がけた〝ラブストーリーの名手〟大石静と、
長く独身を守りながら〝電撃婚〟を果たした阿川佐和子。
結婚、不倫、仕事、理想の死に方から更年期対処法まで、
還暦すぎの二人だからこそ語れる究極の女の生き方__。
脚本家の大石静と、エッセイスト/作家/タレントの阿川佐和子による対談本です。
副題が「無敵のオバサンになるための33の扉」。秀逸なタイトル。
この2人が言うなら間違いなく無敵になれると思う。というか、このひとたちこそ無敵。
それぞれ方法論は違えど、自分にはこれしかないと覚悟を決め、努力を重ねて、ときには打ちのめされ、それでもしがみついて、やり返して……と、なんやかんや積み重ねてきた末に、つかみとった評価。実績。
それらに裏打ちされた、がっつり根性入ってる、マジな無敵さです。
だから素直に「すげえな」と思えるし、「強ええな」とおののくし、「かっけーな」と憧れるし。それはもう、オバサンだろうがオジサンだろうが、関係ないところで。
で、そのようなお2人がですよ。かーなーり、あけすけに、結婚生活とか。愛とか恋とか。更年期とかブラジャーとか。あれやこれやと楽しくおしゃべり。
たとえば、結婚生活について。
阿川 爺さんになってから、どんどん好きになるということはないんですか。
大石 うちの場合はないです。
阿川 そんなきっぱり。
大石 若いころの夫の写真が出てきたときには愕然としたもの。「こんなにステキだったのに、今のあの人、もう、いらな~い!」って叫びそうになる。
阿川 ひどい……。
また、恋愛についての話。
阿川 大石さんは、恋愛のどんなときが一番好きですか。
大石 互いの思いが一番ピークのときにプチッと命も終わりたい、といつも思ったわ。彼に抱きしめられた瞬間、もうこのまま命が終わってほしい……と切に。
阿川 ぜんっぜん、思わない。
大石 とことん好きになると、交通事故とかで相手が死なないかな、と本気で思う。
阿川 なんで!
身も蓋もねえな。このひとたち、60代半ば通過してんですよ。まじか。枯れねえな。おもしれえな。
ほかにも
・「話がつまんない男はダメ」
・「長く一緒にいるためには、見た目が好きな相手じゃないと」
・「何が何だかわかんなくなるくらい溺れまくるような恋は、命を息づかせるために必要」
みたいな感じで、Tバックはありか、とか、冬だったら1週間くらいブラジャーは洗わない、とか、いやあ、ぶっちゃけますね。
とくに更年期の話は、おのれもこれから近々通る道なので、更年期のホルモン療法とか、ホットフラッシュとか、理由のわからないイライラとか鼻血とかの話、大変参考になります。
わしらの先を歩いてくれているお姉さんたちの話、もっともっと聞きたいのよ!
- 著者
- 岡村 靖幸
- 出版日
- 2015-10-20
ミュージシャン岡村靖幸が、32人の結婚経験者(あるいは独身主義者)に「結婚とは何か?」をインタビューした記録。雑誌「GINZA」での連載を加筆・訂正して単行本化。
ずっと結婚に興味を持っていた岡村ちゃん。漠然と、いずれはハマるのだろう、と思っていた。いつか、そのうち。
だがしかし、いつまでたっても結婚の時機がやってこない。
そもそも、結婚って何なんだ? なぜ、このまま愛し合ってるだけじゃダメなんだ? なぜ、人は結婚するんだ?
そこで、いろんなひとに聞いて聞いて、聞きまくることにしたのです。
「どうして結婚したんですか?」「どうして何度も結婚するんですか?」
「倦怠期はありませんでした?」「一生を添い遂げる気持ちはあります?」
「結婚っていいものですか?」「セックスは大事ですか?」
「どうして同棲じゃダメなんですか?」
そしてこの質問。
「僕に結婚はおすすめしますか?」
話きく相手がとっても素敵。このひとの結婚話、あるいは結婚観、ぜひ聞いてみたい! 知りたい! 気になる! そんなひとばかり。
このキモチ、共有したいのでここに全員名前挙げますよ。んもう。
内田春菊、ショコラ&アキト、ピュ~ぴる、糸井重里、手塚るみ子、松田美由紀、川上未映子、YOU、菊池武夫、内田也哉子、園子温、柳美里、藤井フミヤ、坂本龍一、ケラリーノ・サンドロヴィッチ、小山明子、夏木マリ、吉本ばなな、鈴木おさむ、松尾スズキ、田村淳、西村賢太、ピーター・バラカン、田原総一朗、堀江貴文、ミッツ・マングローブ、横尾忠則、Bose&ファンタジスタさくらだ、東村アキコ、鮎川誠
どうですか。もうお腹ふくれたでしょ。
いろんな立ち位置。いろんな土台。プライオリティの違いがあり、背負ってる時代の違いがあり、そのひとがいま人生のどこにいるのかも全然違っている。
その中で “結婚”という部分のみが共通のテーマなので、そりゃもう当然ながら、言うこと感じてること千差万別で。
この本、“結婚”の万華鏡やぁー。
それぞれがそれぞれに興味深いのですが、なかでも、小山明子さんの大島渚監督話と、鮎川誠さんのシーナさん話は、やはりどうしたって、ぐぐぐっと、きますね。
結婚の善し悪しとか、そういうのとはまた別の次元で、2人がいっしょに生ききった、その後に、語られる話なので。
さて、岡村ちゃんが終始ずっと気にしているのは
・クリエイティビティと結婚(=安定)は、両立できるものなのか?
・自分は結婚に高望みなんてしてない。やさしいひとでさえあればいい。
・でも、ジョン・レノンにとってのオノ・ヨーコのような、インスピレーションの源泉となるミューズと出会って結婚したい。
です。ほんと、ブレなくて、ね 。おもしろいなあ。愛おしいなあ。
ともあれ、結婚していようがいまいが、するつもりがあろうがなかろうが、結婚制度に賛成だろうが反対だろうが、全方位的に、どなたも楽しめます。
続編では、さらに38名にインタビュー。
- 著者
- 岡村靖幸
- 出版日
- 2018-11-01
桃井かおり、エリイ&手塚マキ、渡辺俊美、柄本佑、坂本美雨、今田耕司、高橋源一郎、会田誠&岡田裕子、松江哲明、壇蜜、本谷有希子、高須克弥&西原理恵子、マイク眞木、上野千鶴子、宮沢章夫、中瀬ゆかり、和田唱、Chara、奥田瑛二、浜野謙太、石田純一、蒼井優、マイク・ミルズ、内田樹、オカモトレイジ&臼田あさ美、川上弘美、オアシズ、朝吹真理子、ヤマザキマリ、俵万智、MEGUMI、加藤登紀子、KREVA
よくもまあ、ここまで。
6年にわたって合計70人。結婚クエストした結果、さらに岡村ちゃんは迷宮に入り込んでしまったのだった。大方の予想どおりだ! どうなる岡村ちゃん!
さて、脈絡なく、カブトムシの話に戻りますが。
カブ姫は、もらってきた夕方からすでにぴくりとも動かず、念のため朝まで様子を見ましたが、ひっくりかえったままうんともすんとも言わないので、庭に埋葬されました。
カブ姫よ、安らかに。
朝、保育園行って、お子が
「せんせー、おんなのこのカブトムシ、しんじゃったんだよー」
と報告したところ、
「えーそうだったんだー、残念だねー、じゃ、もう1匹持って帰るー?」
うーん、フランク。ありがたいことです。
てか、どんだけいるんだ。カブトムシ、わんこそば状態。
ではまた来月。
やまゆうのなまぬる子育て
劇団・青年団所属の俳優山本裕子さんがお気に入りの本をご紹介。