肉事情、深刻化【小塚舞子】

肉と私の遍歴

肉たちは立派に私の一部として定着している。衣装さんは「全然体型変わらないね!」と言ってくれるが、服を脱いだ瞬間にお腹を引っ込めるズルをしているのだ。用意してもらう衣装はきついこともしばしば。と言うか、ほとんど。以前はウエストが大きすぎたりしてその場で縫ってもらうことだってあったのに、そんな手間は無用になった。

引っ込めたお腹のまま服を着るので、通常モードに戻るとウエスト部分がお腹に食い込む。苦しい。一日耐えられるか心配になる。まぁいけるか・・・と鏡を見ると、うつろな目をした知らない女がいた。太った私だ。くびれないやん。

元々私はどちらかと言えば痩せ型だった。小さい頃は食に興味がなく、と言うか食べるのが嫌いで食事の度に泣きじゃくり逃げ回っていた。心配した母は何とかごはんを食べさせるべく、何でもいいから好きな物を食べに行こうと誘うと、幼稚園児の私は「漬物」と答えた。中学生になり部活を始めた頃には人並みに食べられるようになってはいたが、太りにくい体質だったので、思春期になってもやっぱり痩せていた。

働き出してからは食べるのが大好きになった。漬物好きの子どもはスクスクとのんべえに成長し、美味しいものを食べながらキンキンに冷えたビールを呑む幸福を覚えた。日本酒にハマった時はさすがに丸くなったものの、相変わらず太りにくくはあった。食べすぎた次の日は節制するということを心掛けていると、それほど酷い事態に陥ることもなく、基本的には好きなものを好きなだけ食べてはちょっとだけ我慢する、といった生活を繰り返していた。

そして妊娠出産を経験。食べ悪阻の妊娠中、増えに増えた体重は子を産み落とした直後もほとんど変わらず驚いたが、何か月もかけてゆっくり元に戻るものだと聞いていたし、授乳していれば勝手にどんどん痩せていくという話ももれなく当てはまると信じていた。なので、産後も気にせず食べまくった。多少の罪悪感も生むくらい食べていたが、可愛いわが子に栄養を届けるため!と、むしろいいことをしている気分でもあった。

しかしあまり仕事もせず、娘と一緒にバブバブ言っているだけの毎日だと動くことがほとんどない。スーパーは家から徒歩1分。一日の運動量はその往復2分とスーパー内をちょろちょろ歩くくらいで、あとは食べたいだけ食べてバブバブ。太って当然だ。

運動をしない言い訳を聞いてほしい

元々、運動は得意ではない。番組の企画でフルマラソンを走ったときは、ビビってかなり練習したが、本番が終わってからは全くと言っていいほど走っていない。ゴルフにハマった時期もあった。しかし車の免許がなくては練習に行くのもラウンドに行くのも大変だという言い訳を武器に、もうずいぶん行っていない。

あとは恥ずかしながらヨガにも通っていた。友人に勧められるまま入会して、何となくやめどきがなくて6年ほど続けてしまった。と言うのは照れ隠しで実はわりと楽しんで通っていたのだが、バランス系のポーズはヨロヨロしているし、柔軟性が必要なポーズはカチカチ。難しいものに至ってはマットの上で休んでいるという有様で、きっとインストラクターの先生にも「この人全然うまくならへんな」と思われていたに違いない。ヨガスタジオの中では相当の古株だったのに、初心者感ぷんぷんでまるで上達もせず、妊娠をきっかけに休会してそのままになっている。

運動は得意ではないが、すべてを避けてきたわけでもなく、決して嫌いというわけではない。しかし、どうやら私は一度サボると絶対に戻れないという性質を持っているらしい。

何か始めなくては、と毎日のように思う。その度に「ダ~イエットはあしたから♪」というCMが頭の中に流れる。(若い人しらないよね?)同時に「あしたやろうはバカやろう」のフレーズも浮かぶのだが、重い腰は重くなる一方だ。実際、妊娠中の運動不足からだいぶ体力が落ちているらしく、ちょっとした階段でハァハァ言っている。

産後整体の先生にも圧倒的な筋力不足を指摘されたが、「ですよねぇ~ウフフ~」とかわしてしまう。見かねた先生が、料理や子育てをしながらできる『ながら運動』を教えてくれたのだが、単純思考の私は○○しながら○○というのが苦手だ。せいぜいラジオを聴きながら料理をするくらいが精一杯で、料理中に足を動かすと手が止まってしまい、ただキッチンで包丁を握ったままちょっとした運動をしている人になってしまう。運動よりは料理の方が大事なので、ながら運動は中止にしてごはんを作り熱いうちに食べると、すっかり満足して運動のことなどは忘れ、カロリーを摂取するだけの穏やかでふくよかな日常が続いていく。

何かこう強制的に運動が始められないものだろうか。そう考えながらこのコラムを書いているのだが、特に何も思いつかなかった。思いつくのは言い訳ばかり。外は暑くて走ったり歩いたりできないし。ヨガに行くにも、あんなピタピタのウエアを着て人前に出られない。水着なんてもってのほか。腹筋はそもそもできないし、スクワットは自分が重すぎて膝壊しそう。

いや、待てよ。・・・水着?すっかり忘れていた。私には娘が産まれたのだ。娘はきっといずれプールに行きたがるだろう。そのときに「お母さん水着着たくないからプールにはいかない!」なんて言い訳は通用しない。娘と海やプールに出かけるまでには、水着の似合う体型になっておきたい。タイムリミットはいつだろう?自分で行きたいと思う前に水には慣れさせてあげたい。ならばせいぜい来年の夏といったところか。だったらまぁ、年明けくらいから始めたらいいか。ダイエット。

ダイエットや美を考える本

著者
明野 照葉
出版日
2007-06-01

誰もが憧れる美貌を持つ女社長の陶子と、陶子の身の回りの世話をしながら彼女の陰にいる妹。この二人の関係が暴かれていくミステリー小説です。

女って怖い!という印象が最初にくるのですが、陶子が美しくなっていく様子が何だか羨ましくて、読んだ当時はジムにでも通おうかと思いました。読んだら気合い入るかもしれない一冊。

著者
安野 モヨコ
出版日
2002-07-08

こちらは極端なダイエットの話で、どちらかと言えばダイエットなんてやめやめ!と思ってしまう漫画です。食べると安心するっていう主人公、病的だけどちょっとわかるような気も・・・。食べる言い訳が欲しいのかも。

いずれにせよ、モヤモヤした気分にもなりますがとにかく健康でいたいと思えます。欲を言うなら健康的に痩せたい。

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