独特の世界観で読者を引きずりこむ迫稔雄が、『嘘喰い』の次に描いたのが『バトゥーキ』。カポエイラに似たマイナーな格闘技に焦点が当てられています。自由という壮大なテーマ、青春要素、伏線の張られた謎と見所が盛りだくさんです。 1、2巻同時発売で、2巻まで読まないと本当の面白さが分からないけど、そこまで読むと中毒のように夢中になると話題の本作を4巻までご紹介!スマホアプリで読むこともできるのでそちらもどうぞ。
主人公の一里は、家族と暮らしながらもどこか孤独感を感じて生活している少女。普通の家庭のはずなのに、彼女はなにひとつ、やりたいことをやらせてもらえません。
そんなある日、コンビニで強盗に出くわしてしまいます。その危機を救ったのはホームレスのような風貌をした黒人の男。そこで彼女は彼が操るバトゥーキという格闘技と出会い、その世界に傾倒していきます。
そんななか、実は一里に自由が与えられていないのにはある秘密があることが徐々に明かされて行き……?
- 著者
- 迫 稔雄
- 出版日
- 2019-01-18
バトゥーキは、ブラジルの格闘技の1つです。アフリカから連れてこられた黒人奴隷たちがバレないように戦うすべを鍛錬するために生み出されたとされています。格闘技とダンスの要素をもち合わせているのが特徴です。
近年は途絶えてしまっていますが、20世紀はじめのブラジルのバイーア地方では行われていました。
バトゥーキはカポエイラと比較されることもありますが、共通している部分が多いもののバトゥーキの方がより攻撃的。そして太鼓をたたいたり、弓矢をもったりと道具の扱い方も独特です。
本作のタイトルは、そのブラジルの格闘技であるバトゥーキが、そのままタイトルになっています。
『バトゥーキ』の作者は迫稔雄(さことしお)。前作は『嘘喰い』というギャンブル漫画を大ヒットさせ、全49巻という大作となりました。2016年時点で535万部以上という累計発行部数からもその人気がわかります。
- 著者
- 迫 稔雄
- 出版日
- 2006-09-19
『あひるの空』で有名な日向武史のアシスタントに就いて漫画を学び、2005年のヤングジャンプ月例MANGAグランプリにて『嘘喰い』が佳作を受賞し、デビューすることとなりました。
彼の最大の特徴は、独特の雰囲気。他と被らないように、誰もやっていないことをしようという意識を常に持っているのだとか。
特にキャラクターの表情にはこだわりが強く、映画やドラマで凄い表情をしているシーンを見たら一時停止して観察するそう。また、自分の絵をデジタルソフトを使用して崩してみて、キャラクターの表情を変える方法もとっているのだとか。
もともとの画力が非常に高いので、得意とするバトルシーンも臨場感いっぱい。2次元でありながらまるで目の前で3次元のように動いているように感じます。
特に今『バトゥーキ』はバトルシーンが盛りだくさんなので、迫ならではの迫力を体感するのにピッタリです。
『嘘喰い』についてはこちらで紹介しています。気になる方はぜひご覧ください。
『嘘喰い』最終回までのあらすじネタバレ!ギャンブル名勝負を厳選して解説【実写映画化】
頭脳戦、アクション、先の読めない展開、そして一発逆転のギャンブルなど、様々なテイストが味わえる『嘘喰い』。ヤングジャンプでの11年にわたる連載が終わり、最終回を迎えた本作の、代表的なギャンブルの紹介と魅力をネタバレを交えつつご紹介いたします。 スマホのアプリで読むこともできるので、気になった方はそちらもどうぞ。
ここからは本作の魅力についてご紹介します。『バトゥーキ』が面白い理由の1つとして、登場人物が魅力的という点が挙げられます。それぞれのキャラをご紹介していきましょう。
- 著者
- 迫 稔雄
- 出版日
- 2019-01-18
- 著者
- 迫 稔雄
- 出版日
- 2019-04-19
バトゥーキは戦闘シーンの迫力も見所です。
人物が目の前に来たかと思うと、ひきで全体を見せるような変化のある視点の動きがあったり、美しい体の動きには感動を覚えるようなパワーがあったりと、描写力に圧倒されます。打楽器のリズムや、風を切るような動き、ダイナミックな展開は体感的に読者をひきつける力を持っています。
特に一里やメストレなどの主要人物は分かりやすい派手さのあるシーンが多いのでぜひご確認ください。
また、バトゥーキは謎が多く、先が読めないミステリー・サスペンス要素も魅力です。
たとえば勲や弘美は、実は育ての親で、名前も偽わっています。なぜ一里の父親や母親役をすることになったかは、彼らの過去にあります。
また、彼らの過去とも関わりますが、幼少時の一里に何があったかも気になるところ。1話時点で月光に照らされた不思議なシーンが登場し、彼女もその記憶を持っています。しかしあまりにも夢のような光景で、そこから何を読み取るのかが難しく、ますます気になる展開です。
また、メストレはいったいなぜ公園にいるのか、子供を相手にレッスンをするようになったかなど、怒涛のスピードで進んでいく物語には数多くの伏線が張られています。
ダークな展開もあり、ミステリー、サスペンスが好きな方にはぜひ、まずは2巻まで読んでいただきたいです。
ここからは2019年8月現在最新刊の『バトゥーキ』4巻の見所をご紹介します。
どんどん技のレベルが高くなってきており、今回は攻撃だけでなく、守りの訓練がについて語られているところが見所。
一里がその大切さに気付いたのは、偶然みかけた稲荷という男の存在でした。彼は他人に最初は優しく近寄り、その後はその見返りとして何をしてもいいと思っている人物でした。
一里は彼と対戦するのですが……。
- 著者
- 迫 稔雄
- 出版日
- 2019-07-19
自分が強くならなければ周囲に危険が及ぶと焦る一里。読者からすればかなりのスピードで成長していますが、まだまだ足りないと感じているよう。そこから守備の訓練がはじまったのです。
4巻はそんな守備の訓練を師匠であるBJから教わる一里の様子も見所ですが、カポエイラのダンス部分だけではない魅力の紹介もおもしろいポイント。
音楽や楽器も非常に重要視される文化ということで、ビリンバウという楽器の使い方や由来についても知ることができます。
しかし4巻の最後には一里が下駄箱で何者かに襲われてしまって……。
その後、彼女はどうなってしまうのでしょうか?