頭脳戦、アクション、先の読めない展開、そして一発逆転のギャンブルなど、様々なテイストが味わえる『嘘喰い』。ヤングジャンプでの11年にわたる連載が終わり、最終回を迎えた本作の、代表的なギャンブルの紹介と魅力をネタバレを交えつつご紹介いたします。 スマホのアプリで読むこともできるので、気になった方はそちらもどうぞ。
『嘘喰い』の魅力はズバリ、「ババ抜き」や「あっち向いてほい」などの誰でも知っている遊びにひと捻りを加えたゲームによって生まれる、ギャンブルの天才たちによる頭脳戦です。
単純なのに奥深いギャンブルに、息を吞む展開や多くの謎や伏線が散りばめられます。絶体絶命の状態から一発逆転へと繋がったときには、驚きと爽快感が得られます。
そんな本作は2018年2月19日に最終巻が発売されました。「ジョジョ」の荒木飛呂彦に「まさに奇妙なサスペンスの『最高峰』とはこのマンガのことだ」とまで言わしめた人気漫画『嘘喰い』。その魅力とはいったいどこにあるのでしょうか?
- 著者
- 迫 稔雄
- 出版日
- 2006-09-19
本作は頭脳戦ばかりの難しい漫画なのかな......と気遅れしてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、魅力は「頭脳戦」だけではありません。
頭脳戦の間にインターバル形式でアクションパートが挟まります。美麗なグラフィックで迫力のある本格的な描写に、アクション漫画としても一読の価値有りです!
警視庁密葬課に所属する箕輪勢一や賭郎(かけろう)立会人である門倉雄大、伽羅などなど……力自慢のキャラクターが多く登場し、ファンたちの間では未だに熱い強さランキング議論が繰り広げられています。
また、ひとクセもふたクセもあるキャラクターも魅力的です。日本を変えるという、ただひとつの目的に向かって手段を選ばず猛進する佐田国一輝や、警察組織の闇を隠蔽するために自分を犠牲にしてまで戦い続ける雪井出一族などが登場します。男同士の戦いに胸が熱くなります。
頭脳戦とアクションの2つのパートが交互に展開する構成の『嘘喰い』は迫力満点で、ついつい読み返してしまうような重厚なストーリーと先の読めない展開から、中毒になること間違いありません。
本作は、その人気からOVAでのアニメやVCOMICも制作。声優は森川智之、勝杏里、神原大地らが務めました。また、実写映画化の報道もされています!
この記事ではそんな本作の白熱の展開を、名言・名シーンとともに、神回を厳選して最終回までご紹介します!
本作品は『ヤンジャン!』アプリで配信されています。ポイントを貯めれば全話無料で読むこともできますので、ご活用ください。
2021年7月2日、『嘘喰い』の実写映画化決定が発表されました!
主演は話題作に数多く出演する横浜流星さん、監督はジャパニーズホラーの名手・中田秀夫さんです。
主人公の斑目貌、通称『嘘喰い』と呼ばれる正体不明の天才ギャンブラー。しかし、横浜流星さんは実生活で1度もギャンブルをしたことがないそう。天才ギャンブラーを演じることに不安を感じていましたが、キャラクターになりきるために髪を銀色に染めて撮影に臨んだようです。
また、中田秀夫監督は、『リング』シリーズや『仄暗い水の底から』で知られる、ジャパニーズホラーの代表の一人。2020年に公開された『事故物件 怖い間取り』は大きな話題となりました。ホラーの名手である中田秀夫監督が『噓喰い』の世界をどのように表現するのか気になりますね。
『噓喰い』の実写映画は2022年2月の公開予定となっています。
ギャンブル好きの青年、梶隆臣は、借金に悩みつつもパチンコを打っていました。隣の席でパチンコの演出にとまどっていた、「嘘喰い」と呼ばれる主人公・斑目貘に親切心から当たりを教えたことで、彼のギャンブラーとしての運命が動き出します。
ギャンブラーの頂点であり、賭けを取り締まる組織「賭郎」を束ねる切間創一と、彼にギャンブルで惨敗して再戦を望む貘。梶の成長と貘の衝撃の過去、そして負けることが許されないギャンブル対決が描かれています。
貘の機転により悪質な借金取りの手から逃れることができた梶は、貘の目標であり賭郎のトップである切間とのギャンブルに挑むため、資金と賭郎の会員権利を手に入れる手伝いをすることになります。
そんななか、賭郎の会員でテロリストの佐田国一輝と、命と大金を賭けた大勝負をすることに。そこで行われたギャンブルが「ハングマン」です。
「ハングマン」とは、0~9までの数字が書かれたカードを2枚ずつと、ローマ数字のⅠ~Ⅴが描かれたカードの中からランダムに選ばれた1枚(ババカード)を加えた計21枚でババ抜きをするゲームです。
プレイヤーにはそれぞれ全11工程で完成する絞首刑台が用意されていて、ローマ数字のカードを最後まで持っていた人はその数字の分だけ絞首刑台の工程が組まれていきます。11工程すべてが完成してしまった方が負けで、敗者はその絞首刑台で首を吊るという残酷な内容のギャンブルです。
ルールまとめ
1:0~9までの数字のカード2枚ずつと、ローマ数字Ⅰ~Ⅴの中からランダムに選ばれた1枚(ババカード)を加えた計21枚を配る。
2:ババ抜きをする。
3:ババ抜きで負けた方の絞首刑台が、ババカードになっているローマ数字分組み立てられる。
4:絞首台が完成した方が負け。絞首刑となる。
※暴力行為は禁止
※イカサマ行為が判明した場合は敗北
ギャンブルの終了はどちらかが絞首刑になった時のみです。もちろん、ただ何となくカードを引いて面白おかしくババ抜きをしたりはしません。命がかかっているので、相手を出し抜くことにお互い全力です。ばれないようにイカサマをし、命を懸けて騙しあう心理戦と頭脳戦に引き込まれていきます。
そして、ラストに待ち受けている大どんでん返しに、驚くこと間違いなし。1番の見どころは、テロリストの佐田国の手札を見ながらカードを引く貘の姿です。
資金集めに躍起になっている梶が雪井出に挑んだギャンブルは、自分の思い出をかけることで大金が手に入る驚愕の0円ギャンブル、「迷宮(ラビリンス)」です。
しかし梶と雪井出の勝負は、梶の惨敗で幕を閉じました。その戦いを聞いた貘は、雪井出にギャンブルを申し込みますが、そこには知られざる日本の闇が潜んでいたのです......。
「ラビリンス」は、お互いの紙に記されている6×6のマスの中に、20の線を描いて壁を作ります。スタート地点とゴール地点を壁で囲うのは禁止。マスのどこにスタート地点とゴール地点があるのかだけを相手に伝え、自分のターンでどの方向のマスに進むのかを指示し、相手の迷路を攻略するギャンブルです。
壁にぶつからない限りは自分のターンが続くため、相手の壁がどこに描かれているかを探るのがこのギャンブルの醍醐味で、相手の考えを読んでいくのですが、当然イカサマが発生します。
しかしこのイカサマが、最期まで読まないと読者に分かりづらいように工夫されています。伏線がいくつもあるため、後半にかけて驚きの連続となっています。
ルールまとめ
1:6×6のマスにペンで最大20本まで線を引き壁を作る。
2:お互いにスタート地点とゴール地点の位置のみを伝える。
3:先攻と後攻を決める。
4:相手の迷路のスタート地点からゴール地点までを予想し、移動方向を伝える。壁に当たらなければ成功で、続けて移動する方向を伝えることができる。壁に当たった場合は攻守交替となる。
※壁を書く線は20本以下でも問題ない
※暴力行為は禁止
※スタート地点とゴール地点を壁で囲うのは禁止
このギャンブルの見どころは、なんといってもお互いを騙したと思い込んでいる2人の姿です。どちらが勝つのか最後まで分からないストーリー展開となってます。
ラビリンスに敗北した梶は思い出を奪われ、その日に起きた事件の冤罪をかけられてしまいます。彼は自らの罪を晴らそうと、真犯人の滑骨との戦いに挑むのです。
「ファラリスの雄牛」は、ストップウォッチで時間をぴったり当てるギャンブル。実際にやったことがある方も多いのではないでしょうか。
しかし本作では、予想した時間と実際に止めた時間の誤差の分だけ、牛の体の中に入れられて丸ごと焼かれてしまうのです。
- 著者
- 迫 稔雄
- 出版日
- 2009-12-01
ルールまとめ
1:参加者の中から最初の出題者と回答者を決める。
2:出題者がストップウォッチをスタートさせる。
3:出題者が好きなタイミングでストップウォッチをストップさせる。
4:回答者は、出題者が何秒でストップウォッチを止めたかを当てる。
5:出題者が止めた「実際のタイム」と解答者が「予想したタイム」の誤差を計算し記録する。
6:出題者と回答者を交代し、同じことをする。この時出題者は、1回目の「実際のタイム」よりも長い時間を設定しなければならない。
7:誤差が最も大きかった人を「ファラリスの雄牛」の中で焼くか、現状の誤差の時間をストックしたままもう1度ゲームをやるかを決める。決定権は、誤差が最も小さかった人が持っている。
※暴力行為は禁止
滑骨をボコボコにする展開に、すっきりすること間違いなしです。また梶のギャンブルには、貘とはまた違った戦略があることがわかり、彼が勝利する姿は輝いて見えます。他のギャンブルと比べると比較的単純なルールなので、勝負の展開に集中して読むことができるでしょう。
賭郎を狙う組織、アイデアルのトップであるビンセント・ラロVS賭郎を束ねる切間VS貘という三竦みの戦いが起こります。舞台は、ゲームの世界を再現した島、プロトポロス。その戦いに巻き込まれた梶は、貘を王にするためにビンセント・ラロの手下であるフロイド・リーに戦いを挑みます。
ここで行われるのは、「叩いてかぶってじゃんけんぽん」を本物の武器を使って行うギャンブルです。シンプルなのに奥が深く、先の先まで読めないと勝てないゲームになっています。
ルールまとめ
1:1ゲーム3回で勝敗を決める。
2:各プレイヤーは盾選択側と矛選択側に分かれ、それぞれ3種類の中から盾と矛を選ぶ。
3:このゲーム内のお金(ビオス)を提示し、より高い金額を示した方が攻撃側になる。
4:合図と同時に叩いてかぶってじゃんけんぽんをする。
※ギャンブルルール以外の暴力行為は禁止
スタンガンや日本刀など、本物の武器が登場する「叩いてかぶってじゃんけんぽん」。叩く側もかぶる側も真剣ですが、成長した梶からは、貘の面影が見えます。1回の勝負で死ぬ可能性もあり、緊張感のある戦いが1コマ1コマから伝わってきます。
アイデアルのトップであるビンセント・ラロとの戦いがついにやってきます。勝利した方が賭郎を束ねる切間と戦うことが許される、物語の展開を左右する大事な一戦です。
「エアポーカー」とは、水中で空気をかけて行うポーカーのこと。極限の精神状態が描かれています。裏の裏の裏を読みながらゲームは進み、大量の伏線が回収されて戦略の全貌が明らかになった時、もう1度はじめから読み返したくなるでしょう。
- 著者
- 迫 稔雄
- 出版日
- 2015-12-18
ルールまとめ
1:水中で足を拘束された状態で行う。
2:金属製のカード10枚の中から、ランダムに5枚ずつカードが配られる。
3:空気のチップ25枚をかけてポーカーをする。
4:勝負を5回くり返す。
5:参加料のチップは1戦ごとに1枚ずつ増えていく。
※暴力行為は禁止
極限の状態で行われるギャンブルは、お互いの運や知性だけではなく精神力も試されます。彼らの言動に目が離せません。手に汗握るストーリー展開は、ギャンブル漫画史上に残る名勝負です。
ビンセント・ラロとの戦いに勝利した貘は、因縁の決着をつけるために賭郎のトップである切間に勝負を挑みます。ついに最終決戦がはじまるのです。最強のギャンブラーを決める戦いでもあるため、賭郎の内部では最強の立会人を決めるための戦いも起こります。
そして始まる2人のギャンブル。物語のクライマックスで行われるのは、なんと「ハンカチ落とし」です。
- 著者
- 迫 稔雄
- 出版日
- 2017-11-17
ルールまとめ
1:ドロップ側とチェック側に分かれる。
2:1分間の間にドロップ側はチェック側にばれない様にハンカチを落とす。
3:チェック側はハンカチを落としたタイミングを予想し、振り向いて確認する。
4:振り向いた時点でゲームは終了。
5:ハンカチが落ちている時間を「座視の際」と呼び、その時間分チェック側のシリンダーに心臓を止める「臨死薬」が蓄積される。
6:振り向いた時にハンカチがあればチェック側の成功となる。
7:振り向いた時にハンカチがなければドロップ側の成功となる。1分量(60秒分)の「臨死薬」がシリンダーに追加される。その後、シリンダーのすべての「臨死薬」がチェック側の静脈に注射される。
8:「臨死薬」が5分量まで溜まると、静脈に注射される。
9:死んだ方が敗者となる。
※暴力行為は禁止
貘と切間が、サシでハンカチ落としをします。濃いキャラクターをした立会人たちの解説もあるのでわかりやすいです。
46〜48巻で描かれるハンカチ落としは、蘇生しなかった方が負け、という完全なるデスゲーム。48巻では、7回裏から描かれていきます。
特に見どころとなるのが524話の9回戦裏。前回、安全策をとって60秒ちょうどでC成功をした貘のシリンダーには、すでに臨死薬が蓄積していて絶体絶命の状態です。
どんな策をとったとしても、貘が切間により多くの臨死薬を蓄積させる方法はないだろう。したがって、60秒たっても貘がハンカチを落とすことはない……と誰もが考えていました。
60秒の時報が鳴ったとき。切間が振り向くと、ハンカチはまだ落ちていませんでした。もう一度「ポーン」という音が鳴った瞬間、貘はハンカチを落とします。なんと、貘が駆使したのは閏秒の存在だったのです。
因縁の対決に全てをかける2人の姿は必見です。まだまだ勝負は続きますが、結末は本作でお楽しみください。
ハンカチ落としの勝敗が48巻でついたかと思いきや、最後に再びどんでん返し、からのどんでん返しが行われます。
絶望する貘は、今までの戦いで納めてきた勝利さえも本当にそれで勝てたと言えるのかと、心理的に追い詰められます。
何度も予想外の展開を迎えながら最終的な勝敗がつく様子は、ぜひ作品でご覧ください。
その後、貘が新たなお屋形様の座につき、新賭郎が発足されるのですが、ここからさらに本当にこれが最終巻か、という展開が続きます。
- 著者
- 迫 稔雄
- 出版日
- 2018-02-19
ハンカチ落としの勝敗を分けた創一の本当の結末、物語のキーとなる「はちの王子の物語」が2冊あるという事実、貘の過去にその「はちの王子の物語」が密接に関わっていたこと、貘の本当の目的、貘の虚弱体質の真相などが、怒涛の勢いで明かされていきます。
実は今までのギャンブルすべてが、蒼田絵子のために貘が決意した、ある大きな目的の布石。そしてそれが物語として抽象化されたのが「はちの王子の物語」という絵本だったのです。
今までの戦いすべてを巻き込んで収束していくカタルシスは、約50巻に渡り、物語を追ってきた読者ならば誰しも胸に熱いものがこみ上げてくるはずでしょう。
しかも貘の真の目的が明かされた後からは、さらに戦いのフィールドが大きくなっていきます。酒、タバコ、ギャンブル、兵器の事業に集中投資するヴァイスファンドの存在、ロシアンマフィア、ペーパーカンパニーなど、さらに社会の巨悪が登場するのです。
「はちの王子の物語」は最後、こんな言葉で締めくくられます。
「力を合わせた二人の王子達
強者達も敵いません
ここに ふたりのハチ王が生まれたのでした」
最終回としていったんは結末を迎えた本作ですが、むしろここからがスタートという形で幕を閉じました。
作者の迫稔雄は、使わなかったけど考えていたエピソードをいずれ描きたい、続編やスピンオフも「やりたいし、やるつもりです」とインタビューで力強く答えています。貘たちに再び会える日が来るのではないでしょうか。
11年間怒涛の勢いを保ったまま、圧巻の最終回を迎えました。満足感と同時に『嘘喰い』ロスを感じている人も多いでしょうが、迫稔雄の言葉を信じ、今後の展開を期待していましょう!
『嘘喰い』の世界観に魅了されている方におすすめなのが、本作の作者である迫稔雄による『バトゥーキ』。格闘技を題材にした『バトゥーキ』が気になる方は<『バトゥーキ』が面白い3つの理由。あらすじ、最新4巻までの見所もネタバレ>の記事もぜひご覧ください。。
いかがでしたでしょうか。今回ご紹介したのはほんの一部分で、他にも数多くのギャンブルが登場します。また本作はアクションシーンも必見ですので、ぜひ読んでみてください。