一時期よりも若干落ち着いたとはいえ、まだまだ暑い日が続く今日この頃。今回は、そんな火照った心と体を芯からじんわり冷やす、おすすめ小説5冊を厳選してみました。
江國香織さんをはじめとする私が好んで普段から読む作家さんには、文章が美しくて読みやすいことが共通しています。それに加えて、今回選んだ5冊はラストの展開が衝撃的でわかりやすくインパクトがあるので、小説を読む習慣がない方でも読みやすい作品になっていると思います。
私は小さいころから、外遊びが苦手でおうちで友達とおままごとをしているか、一人でひたすら本を読んでいる女の子でした。読書をすることで自分の中の言葉や表現の引き出しが増える。引き出しが増えると、見える世界が変わってくる。同じ景色でも、言葉を知っている人とあまり知らない人とでは感じ方が全く違うと私は思うのです。読書はそういった意味である種の中毒性を持っています。
今まであまり本を読んでこなかったけれど、ちょっと読んでみようかなと思い始めている方、もちろん普段から本を読まれる方も、今回ご紹介する作品を読んで、暑い日本の夏を一緒に乗り越えましょう♪
戦慄の純文学的恐怖作
第149回芥川賞受賞作。【戦慄の純文学的恐怖作】というキャッチコピー通り、最近読んだ作品の中では一番ゾクゾクしました。仕事の空き時間に読み終え、暗い夜道を帰宅するのがつらかったほど。普通に横を通り過ぎる人や車のライトにもビクビクしながら帰りました。まず「わたし」が「あなた」に語りかける二人称の出だしから怖いです。
この作品については賛否両論あるようですが、私はラストの展開といい語り手の正体といいどこをとっても堪らなく好きです。若干説明不足なところも計算済みなのでしょうか、勝手に恐ろしい方へ想像が膨らんで、恐怖心をさらに掻き立てられます。
単行本には、表題のほかに「しょう子さんが忘れていること」と「ちびっこ広場」という2作の短編がくっついているのですが、正直私の頭ではどちらも100%理解は出来ず、「???」という感じです。難しい。でも堪らない。もう一度すべて忘れてしまってこのお話を読みたいです。あのゾクゾクをもう一度味わいたい~!
2段階で恐怖に落とされる
2010年に映画化もされたこの作品。ご存知の方も多いのではないでしょうか。私は小説を読んでから映画を見たのですが、どちらも面白かったです。
この作品のゾクゾクポイントは、ネタバレしないようにお伝えするのがとっても難しいのですが、2段階で恐怖に落とされるところですね。一度衝撃の事実に驚かされた後で、まだ落ち着いてないのにもう一段階さらに深い恐怖に放り投げだされます。リアルに鳥肌が立って、ドキドキおろおろします。
さらに怖いのが、解説で川上弘美さんもおっしゃっている通り読み返すたびに新しい怖さを感じる点。全部怖いです。自分の身の周りにもこんな人がいるかもしれない。読書は見える世界を変えると冒頭で書きましたが、こんな猜疑心いりません!(笑)