娯楽小説のジャンルとしてその地位を確立したライトノベルとも、一般的な文芸作品とも一味違う「ライト文芸」というジャンルがあることを知ってますか?この記事では、他のジャンルとの違いを解説したうえで、読みやすいのにストーリーも充実しているおすすめ作品を紹介していきます。
ライトノベルよりも世界観やキャラクター設定の非現実性が薄く、一般文芸よりも読みやすい文章で書かれている「ライト文芸」。読みやすくはあるもののストーリー性は高いため、ライトノベルの次に流行するであろうジャンルとして人気が高まっています。
ライトノベルは、その名のとおり一般文芸よりも手軽に読むことができるもの。ジャンルについての明確な定義はないですが、架空の舞台設定やキャラクター性の強さ、イラストレーションの挿絵が多く使用されていることなどが特徴としてあげられます。非常に読みやすいため、10代から20代の若い世代をターゲットにしている作品が多いのもポイントでしょう。
一方の一般文芸は、ストーリーと描写力が求められるジャンルです。文学性を持ったものも多いですね。年齢層はライトノベル読者と比べると高く、慣れていないと少し読みにくさを感じてしまうかもしれません。
ライト文芸というジャンルは、ライトノベルと一般文芸の良いところを組み合わせたものと考えてもいいでしょう。では一体どんな本があるのでしょうか。おすすめの作品を紹介していきます。
23歳で無職の大輔は、祖母の遺品である『漱石全集』に書かれた夏目漱石のサインが本物かを確かめるため、ビブリア古書堂を訪れます。入院しているという店主に会いに行くと、そこには美人ですが極度の人見知りの女性、篠川栞子がいました。
栞子は『漱石全集』のサインについて推理し、大輔はこの一件をきっかけにビブリア古書堂で働くことになるのですが……。
- 著者
- 三上 延
- 出版日
- 2011-03-25
ライト文芸の代表作のひとつで、漫画化やテレビドラマ化、映画化などのさまざまなメディアミックス展開をされた作品です。本作はシリーズの第1巻で、ビブリア古書堂で繰り広げられる数々の謎解きのはじめの一歩となっています。
主人公の大輔は、過去のとある経験のせいで、長時間本を読むことができません。小説を読みなれていない読者も、彼に感情移入しやすいのではないでしょうか。また作中で扱われる古書は、実際に存在するものばかり。本好きな人も苦手な人も、さらに興味が湧いてくるでしょう。
何といっても面白いのは、連作短編集になっていて、それぞれのお話に伏線が散りばめられていることです。最後に一気に回収されていくスピード感と驚きも含め、楽しめる作品になっています。
高校生の須川は、クラスメイトの酉乃初に一目惚れ。彼女は人間関係に対して消極的で大人しく見えるのですが、実はとんでもない技術を持ったマジシャンでした。放課後に「サンドリヨン」という店でマジックを披露しているほど、本格的です。
酉乃は須川たちの周りで起こる事件を、得意のマジックで次々と解決していきます。彼女のテクニックと謎解き、そして須川の恋の結末をぜひご覧ください。
- 著者
- 相沢 沙呼
- 出版日
- 2012-10-21
『午前零時のサンドリヨン』は、相沢沙呼のデビュー作。ミステリーとマジック、マジックと女子高生という意外な取り合わせが面白いですね。舞台は学校なので、青春のくすぐったさや、学生だからこそのほろ苦い事件を読むことができます。
謎解きの一方で、気になるのは主人公、須川の恋の行方です。酉乃に片想いをしているものの、彼女はマジックのこと以外は口数が少ない女の子。どうやって距離を近づけていくのでしょうか。
本作は短編集なので、普段読書に慣れていない人にとっても読みやすいでしょう。
ある日「僕」は、病院で「共病日記」と書かれた一冊の本を拾います。それは、高校のクラスメイトで膵臓の病気に侵されている山内桜良の日記でした。
桜良の病気と、彼女がもう長くは生きられないことを知ってしまった「僕」。2人はここからどのような交流をしていくのでしょうか。そしてタイトルの意味とは……。
- 著者
- 住野 よる
- 出版日
- 2017-04-27
大ベストセラーになった『君の膵臓をたべたい』は、ライト文芸における代表作といっても過言ではないでしょう。作者の住野よるは、もともとインターネット上の小説投稿サイトで活動していた人物です。そのため一般文芸よりも若年層に寄り添った小説を書いています。
病気によって余命わずかとなった桜良の言葉や、タイトルでもある「君の膵臓をたべたい」という言葉など、涙なしには読めないフレーズが満載。多くの人の心を動かしている作品です。
とある石鹸会社の経理部員、森若沙名子は、ルールに乗っ取ってきちんと仕事をこなす性格。彼女の仕事は、領収書から社内にあふれる問題の種を見つけていくことです。経理の仕事をしながら、会社の問題を解決していきます。
しかし森若、27歳という妙齢ながら、仕事に打ち込みすぎて彼氏はいません。仕事とプライベートは分けたいと考えているので、社内で仲が良いのは研究部の同期ひとりです。
ところが営業部の山田太陽は、ひそかに彼女に惹かれているようで……。
- 著者
- 青木 祐子
- 出版日
- 2016-05-20
経理部員が主人公という珍しい設定が魅力の小説。漫画化やテレビドラマ化もされています。経理と聞くと難しそうに思えますが、さくさく読むことのできるライト文芸らしい作品だといえるでしょう。
本作の魅力は、主人公である森若沙名子に親しみを覚えやすいところ。金曜日は食事を少し贅沢にしたり、休日はネイルを変えてリフレッシュしたりと、小さな幸せを見つけながら暮らしている姿にほっこりできるのです。
さまざまな問題を解決しながらも、社内で角が立たないように白黒つけない終わり方をするのも特徴。会社勤めの「あるある」も盛り込まれていて、どんどん続きを読みたくなる物語です。
後宮に住んでいる烏妃(うひ)と呼ばれる妃は、謎の多い女性でした。妃として皇帝と一夜を過ごすこともなく、ひっそりとひとりで暮らす彼女は、術を操り、どんな頼み事も引き受けてくれるらしいのです。
母を皇太后に殺された悲しい過去をもつ皇帝の高峻は、とある頼みをしたくて彼女のもとを訪れます。それは、耳飾りに憑いているらしい幽霊の正体を知ること。
しかし烏妃と皇帝の出会いは、歴史を大きく動かすことになるのでした。
- 著者
- 白川 紺子
- 出版日
- 2018-04-20
孤独な運命を生きる妃と、悲しい過去をもつ皇帝を描いた中華ファンタジーです。独特の名前や設定に躊躇してしまう方も多いかもしれませんが、読み始めればすっと物語の世界観に入っていけます。
烏妃がまとっているもの悲しい雰囲気や、一見孤独で冷たい態度をとっているように見える彼女が実は人情深いところなど、読者の心を掴む要素も満載。
彼女と高峻が出会うことで明らかになっていく謎を知っていくほど、続きが気になってしまうはずです。傷ついた2人の未来はどうなるのでしょうか。
気になる作品は見つかりましたか?ライト文芸はどれも読みやすく、ストーリーも面白いものばかりです。本が好きで新しいジャンルを探している方も、普段はなかなか読書をしない方も、ぜひ読んでみてください。