2011年の連載開始から人気を博し、2014年には『東京喰種:re』として新編をスタートさせ、2018年に完結となった『東京喰種(トーキョーグール)』。とある事故をきっかけに、人を食べる「喰種(グール)」になってしまった主人公・金木研と、彼を取り巻く人間や喰種たちの戦いを描いた物語です。 今回は、物語の重要なカギを握るグールである「エト」について、その正体を探っていきます!本作は下のボタンからダウンロードできるスマホアプリで読むこともできます!
『東京喰種』の物語の重要なカギとなるグールである「エト」。まずは彼女の基本設定を紹介していきます。
最初は全身に包帯を巻いた小柄なグールとして登場した「エト」ですが、実は身長151cmほどの小さくてかわいい女性。年齢は明らかにはなっていませんが、物語を通して描かれた「:re」61・62話でのエトの回想シーンでは、13年前時点で14歳ということでしたので、物語の中では27歳あたりであると推測できます。誕生日は明らかになっていません。
ちなみに、アニメでは緑色の髪で描かれおり、声優は坂本真綾が担当しています。
- 著者
- 石田 スイ
- 出版日
- 2018-07-19
ミステリアスな雰囲気を携えており、頭もキレる女性のため、彼女が幹部を務めるグールの集団「アオギリの樹」では他のグールたちに向かって演説をする姿も。
いずれのグールも人間を食べるための捕食器官「赫子(かぐね)」を持っていますが、エトが持つのは「羽赫(うかく)」。かぐねは「甲赫(こうかく)」「鱗赫(りんかく)」「尾赫(びかく)」、そして「羽赫」の4タイプに大きく分けられます。
肩のあたりからガス状に出現する赫子である羽赫は短期戦に向いている赫子として認知されていますが、エトは赫子を固形化させ自由に操り、長期戦や近接戦にも対応できるグールです。
戦闘能力は群を抜いて高く、その上頭脳派。謎に包まれた存在でありながら、素顔はかわいらしい小柄な女性……。このことから、エトは非常に人気の高いキャラクターとして愛されています。
当初は包帯姿で登場しますが、物語を読み進めていくと、彼女の真の姿が明らかになっていきます。次は、初登場シーンと彼女が所属する「アオギリの樹」についておさらいしていきましょう。
『東京喰種:re』のストーリーについておさらいしたい方は<漫画『東京喰種:re』最終回までのネタバレ考察!16巻でついに完結!>の記事もご覧ください。
彼女が「エト」として初登場するのは、『東京喰種』の6巻、54話でのことです。彼女が幹部を務める「アオギリの樹」の集会に、主人公のカネキが訪れたシーンで初登場となりました。この時は全身が包帯に包まれ、素顔はまったく分かりません。
彼女の横には、同じく幹部のグール「タタラ」と「ノロ」がいました。タタラは、尾赫と羽赫の赫子をもつ「赫者(かくじゃ)」。グールの強さを示す「レート」は、SS以上とされています。
- 著者
- 石田 スイ
- 出版日
- 2013-01-18
「赫者」とは、グール同士の共食いを繰り返した末に生まれるグールの種類のことで、戦闘時には赫子を体から出して戦うだけでなく、赫子を体に纏わせて鎧のように展開させます。非常に高い戦闘能力を誇り、そのためグール討伐をおこなう人間の組織「CCG(喰種対策局)」からも恐れられている存在。作中で多くのグールが登場します。
長身でいつも寡黙なグールであるノロは、実は「ノロイ」というグール。エトの育ての親でもあります。黒のロングコートを纏い、鼻と巨大な口のみ描かれたマスクを常につけているため、その素顔は分からないままです。尾赫の赫者で、SS以上のレートとされています。
ここからは、エトの真相に迫っていきましょう。
『東京喰種』の主人公・カネキと最初のキーパーソンとなるグール「リゼ」の出会いのきっかけとなったのが、ふたりの共通の趣味であった読書でした。ふたりが好んで読んでいた作家の名は、「高槻泉」。この小説家の正体が、エトです。
若くしてデビューした彼女の処女作『拝啓カフカ』は50万部を超えるベストセラーにもなるなど、類稀なる文才を発揮。ここからもエトがいかに頭のキレる人物であるかがうかがえますね。
- 著者
- 石田 スイ
- 出版日
- 2014-10-17
CCGの捜査官である「亜門 鋼太朗(あもん こうたろう)」に取材を申し込み、捜査官でも知らないようなCCGの極秘情報を対価として教えるなど、広い人脈と情報を持つ高槻泉。「彼女はグールでは?」「グールだとしたら正体は誰?」という噂や憶測は読者の間でずっとささやかれていましたが、『東京喰種』14巻で、ついにその姿が明らかになりました。
高槻泉として執筆活動を続けるエトは、意外にも顔を公表し、新作が発表されればサイン会などを開催し読者と交流を図ってきました。緑色の髪に、メガネをかけた小柄な女性。非常に気さくな性格で、サービス精神旺盛な彼女の姿は、戦闘中のエトとはかけ離れています。
アオギリの樹でエトが包帯をぐるぐる巻きにしているのは、高槻泉として顔が知られていることもあり、その姿を隠すためだったのでしょうか。
さて、次はグールとしてのエトについて、その正体を見ていきましょう。謎に包まれたグールであったエトですが、真相は『東京喰種』の最終巻、14巻で全て明らかになります。
グールの特徴として戦闘時には目が赤くなることが挙げられますが、通常は両目が赤く染まるのに対し、片目だけが赤くなる最強の「隻眼の梟」という人物が存在するとしてCCG内では警戒されていました。
そんな中、カネキ率いるグールたちの集団がCCGに攻め入ることとなり、捜査官たちとの戦闘をくり広げることに。そこで「隻眼の梟」として姿を表したのが、喫茶店「あんていく」の店長である「芳村 功善(よしむら くぜん)」でした。
SSSレートと推測されるほどの驚異的な戦闘力を見せる功善ですが、瀕死の重傷を追ってしまう結果に。とどめを刺されそうな瞬間、功善と捜査官たちの前に現れたのが、本物の「隻眼の梟」であるエトでした。
- 著者
- 石田 スイ
- 出版日
- 2014-10-17
彼女は赫者の姿で登場し、功善を飲み込み、捜査官たちを蹴散らし逃亡。その先で功善を吐き出し、作中で初めて真の姿を見せるのです。
そして「おと〜〜〜〜〜さん」と笑顔で功善に声をかけるエト。功善は、彼女の名を呼びます。その姿は高槻泉の風貌。ここで初めて、読者はエトが高槻泉であること、彼女が隻眼のグールであり、本物の「隻眼の梟」であること、そして、芳村功善の娘であることを、そこで初めて知るのです。
「隻眼の梟」は、CCGの定めるグールの最強ランクであるSSSレートのグールの一人。これまで「エト」としてはSレートのグールとして捜査官たちから位置付けられていましたが、実際はSSSレートの実力を持っていたのです。
彼女が隻眼である理由は、グールである父親の功善と、人間の母親・憂那の間に生まれた娘であるため。本名は「芳村エト」、漢字は「愛支」と書きます。ハーフである彼女は、非常に稀有な存在です。
ちなみに、アオギリの樹のリーダーは「隻眼の王」とされ、作中でもたびたびその言葉が飛び交いますが、正体は続編「:re」に入ってもずっと不明のまま。ずっと「隻眼の梟」であるエトが隻眼の王ではないかと推測されていましたが、その真実は、「:re」の終盤に判明します。ぜひチェックしてみてくださいね。
エトを語る上で忘れてはならないのが、CCG捜査官の「有馬 貴将(ありま きしょう)」の存在。彼はCCG捜査官として非常に優秀な成績を誇り、異例のスピードで特等捜査官にまで昇格した実績を持つ人物です。
「死神」としてグールたちにも恐れられる存在ですが、その正体は人間とグールの間に生まれた「半人間」。エトと同じハーフの身でありながら、赫子は持たず、隻眼でもありません。また、人間と同じ食事ができます。
「半人間」は、老いるスピードが早く、身体能力が普通の人間よりも優れているのが特徴。有馬が徐々に白髪になっていくのも、半人間であるためです。
彼とエトは、一度交戦しています。その後、彼女の「このクソッたれた世界を、滅茶苦茶に直してやりたいんだよ」という言葉に共感し、協力関係を結ぶことに。この過程を経て誕生したのが、実は「アオギリの樹」だったのです。
その強さから非情なイメージを持たれがちなエトですが、実は人情に厚い女性だということも忘れてはいけません。それを感じさせるのが、小説家・高槻泉として活動していた際の担当編集者・塩野との関係です。
気弱な性格の塩野ですが、高槻泉を支える担当編集者として奔走してきました。実は、高槻の住まいにある冷蔵庫で人肉を発見していたこともあり、彼女がグールであることに気づいていた人物でもあります。本人はその様子に気づいていながらも塩野を問い詰めることはなく、また塩野自身も口外することもなく、ずっと秘密を守り続けてきました。
- 著者
- 石田スイ
- 出版日
- 2016-06-17
ですが、CCGが「高槻泉がグールではないか」と感づいたことで塩野は捕まり、過酷な事情聴取を受け、ついにその事実を打ち明けてしまいます。こうして高槻は捕まってしまいますが、もちろん塩野を責めることはありません。厚い信頼を寄せていたからこそ、彼が正体をバラしたことについても言及しなかったのでしょう。
しかし塩野は「:re」で狂気的な敵「旧多(ふるた)」の手により殺されてしまいます。
エトと塩野は仕事上だけのパートナーではあったものの、その関係は強固なもの。「:re」7巻・75話で、拘束されていたエトは、フルタから食事として塩野の肉を使ったパテを差し出されます。泣くこともなく、全て食べ尽くして力を得て、彼女は脱獄。そして「塩野は無駄にしねえ」と、フルタを追い詰めていきます。
グールと人間といういわば対立関係にあったふたりですが、エトのために最後まで尽くした塩野と、塩野に対するエトの愛情が感じられます。
「隻眼の梟」として類稀なる高い戦闘力を見せつけてきたエトでしたが、最後はかなり切ないもの。塩野のパテを食べ力を得たエトはフルタを追い詰めるものの、リゼの赫子を移植していた彼に惨敗してしまいます。その後なんとか生きており、カネキに助けられますが、最終的にはそのまま息を引き取る姿が描かれています。
と思ったのもつかの間。「:re」に描かれた最後の戦いで、「隻眼の梟」が再度登場します。どうやら、SSレートのグール「ドナート」率いる集団「ピエロ」に操られ復活したよう。しかし体だけで頭には十字架が刺さっているという切ない姿となっていました。
最終回では、ピエロが倒された後にその操りも解けたのか、ラストに一瞬本来のエトが登場します。ただ、実際に死亡したという描写はされておらず、その後のエトの生死は謎のまま。隻眼のグールであり赫者でもあるエトは再生能力が抜群に高いため、もしかしたら生きてるのかもしれませんね。
最後は、非常に特異な存在であり、稀有な人生を辿ってきたエトだからこその名言を紹介します。人間とグールの間に生まれた隻眼のグールとして、アオギリの樹を作り上げた幹部として、小説家・高槻泉として、さまざまな面を持つエトの言葉は、人の心理を突く重みのあるものばかりです。
「私、あなたのことが好きになったわ!
わたしたちとても似ているもの!」
(『東京喰種:re』6巻より引用)
ハイセ(カネキ)との戦闘の際に放った一言。生まれも育ちも全然違うハイセとエトですが、隻眼のグールであることなど、ところどころ境遇に共通点が見られるふたり。笑顔でハイセに告げます。
「なんで神様は「エデンの園」に知恵の樹を置いてたんだろう
ねえ すごく悪意を感じない?」
(『東京喰種:re』5巻より引用)
月山家の使用人「叶(カナエ)」との戦闘で発した言葉。相手を説き伏せるように諭していく教唆術にも長けていたエト。聖書のエデンの園の話を引用しながら、世の中の不条理さを説き、ハイセを憎むカナエの深層心理を突きとめていきます。
「人に愛されるもっとも効果的な方法は、
『その人のキズを見抜いて』、『そっと寄り添う事』。
本当はあなたの弱さにつけこんでいるだけなのに、
過去の痛みをほじくり返して、
痛みであなた達を支配している」
(『東京喰種』10巻より引用)
エトが元人間からグールになった双子・シロとクロに話した言葉です。2人は両親をグールに殺された後、CCGの保護下の施設で育った双子。過酷な人生を送ってきたふたりに、彼女は自分の境遇から学んだ人々の心理を話します。
いかがでしたか?かわいらしい見た目に反して、狂気的な一面も持つ「隻眼の梟」であるエト。文才にも長けた頭脳派な彼女は、『東京喰種』を語る上で外せない人物です。作品を通して彼女の魅力に触れてみてくださいね。