紳士服の仕立て職人である日本人の織部悠、通称ユウがさまざまな問題を抱えたスーツの依頼人の悩みを、仕立てることで解決していく職人の技と人情が絡み合うヒューマンストーリーです。 一方で、新興のブランド・ジラソーレ社の成長物語としても描かれており、スタートアップのブランドとそれを取り巻く人々が織りなす、ライバル関係や事業の失敗と再生の姿が描かれます。 この記事ではそんな本作の見所を全編ご紹介!下のボタンのアプリから読むことができます!
まずは本作の大まかなあらすじをご紹介しましょう。
主人公の織部悠は幼少期にご近所の足袋職人であったお辰さんと触れ合ったことがきっかけで仕立てに興味を持ちます。その職人技に魅せられた彼は、やがて仕立て服の伝統で名高い本場イタリアのナポリに渡り、伝説の職人であるミケランジェロ・マリオに弟子入りすることに。
- 著者
- 大河原 遁
- 出版日
- 2004-01-05
そしてマリオに唯一認められた弟子として、海外高級ブランドの総帥や職人からも一目置かれる超一流の仕立ての腕を持つようになります。
少し皮肉屋なところもありますが、情に厚く、何だかんだ人々の悩みや問題に巻き込まれていく彼。しかし仕立てに関しては迷いがなく、依頼人が抱える問題や悩みを服によって解決していきます。
イタリアのナポリを中心にパリやロンドン、スイスに日本と世界中へとストーリーが展開し、仕立て服に関する国による文化、デザインの違いなども学べる作品です。
ここからはそれぞれの単行本の内容についてご紹介していきましょう。まずは「サルト・フィニート」から。
イタリアへと渡った織部はナポリの泥棒市に暮らしながら修業を積み、頭角を現していきます。ミケランジェロと称賛されているカリスマ職人から、唯一弟子として認められるほどの才覚を見せます。そして伝説の仕立て職人から受け継いだ匠の技とイタリアの伝統を受け継ぎ、一着のスーツへと仕立てていくのです。
依頼人が抱える悩みや問題を解決する糸口を与えるなど、スーツの仕立てを通じて人情味あふれるストーリーが紡ぎ出されます。
- 著者
- 大河原 遁
- 出版日
- 2011-11-04
本作は第1部ということで、仕立ての世界の入門的な立ち位置。
さまざまな悩みや問題を抱える依頼人やその関係者の抱える事情を、服の仕立てを通じて織部悠がどう解決し、どんなドラマが描かれるか誰でも分かりやすいように書かれています。ストーリー展開だけでなく、ナポリ仕立てのシルエットについても丁寧に描かれているので、あまり仕立てに詳しくなくとも依頼者に合わせた生地の色、素材の質感について想像を膨らませることができ、それも楽しみの一つです。
専門的な知識についても想像が膨らむものが多く、たとえば超高級素材のヴィキューナとはどんな生地なのかとリサーチしたくなることでしょう。しだいに職人の世界や服への関心が強くなっていくなど、ストーリーの世界へ引き込まれる、全32巻です。
- 著者
- 大河原 遁
- 出版日
- 2012-05-18
第2部は「~サルトリア・ナポレターナ~」。織部が紳士服の聖地であるナポリで職人として、高い評価を受けるようになり、自分の店を持てるまでになったところから始まります。
師匠であるカリスマ職人から受け継いだ伝統の技と彼の職人としてのこだわり、そのスーツをまとう人の人生をも変えていくストーリーがより色濃く描かれていきます。
ついに自分の店を持った織部の新しいストーリーです。人間関係も仕立てにについても少しずつ専門的になっていくのが面白いところ。
しかし難しいということはありません。第1部のサルト・フィニートの章と異なり、テーマがわかりやすく、ファッションやスタイリング、コーディネイトなどと明確になっているのです。たとえば時計をテーマとした服の選び方などは一般的にも汎用性のあるもので、実用的な内容です。
- 著者
- 大河原 遁
- 出版日
- 2016-04-19
また、織部悠のライバルとして登場するラウラの存在も見逃せません。
彼女は有名なペッツオーリ社の服飾教室で技術を学び、天才と呼ばれた少女です。織部の技術に衝撃を受け、自分との差を実感し、なにかと彼につきまとうようになります。無鉄砲な性格で、積極的にチャレンジをしながら成長していき、ペッツオーリ社からジラソーレ社の第2開発課へと転職してくるのです。エネルギッシュで目が離せないキャラですので、彼女の動向もお見逃しなく。
自店を持ったこと、専門的ながら分かりやすいテーマ、新しい魅力的なキャラなど、どんどん作品世界が深まる第2部、全13巻です。
- 著者
- 大河原 遁
- 出版日
- 2016-09-16
第3部は「フィオリ・ディ・ジラソーレ」。
伝統ある紳士服の聖地であり、腕利きの職人が集まることでも有名なナポリで自店を持ったあとも高い評価を受けている織部。そんな彼を頼りにしているのは一般のお客だけではありません。新興服飾ブランドのジラソーレ社もそのひとつです。
社長を筆頭に美人で個性的な女性社員たちが織部のもとに訪れては、あれやこれやと難解な依頼を持ち込んできます。次から次に入る困難な依頼にどう立ち向かうのか、依頼人の人生を一変させるプロの仕立てに魅了されます。
第3部では、新興企業から持ち込まれるちょっと変わった依頼が見所。
緑の芝で映えるおしゃれなゴルフウェアや、丸いお腹を武器にできるファッションアイテムの選び方などなど……。
- 著者
- 大河原 遁
- 出版日
- 2018-07-19
しかし根本は変わっておらず、依頼人の人生を一変させる織部ならではのアイデアと技術が披露されます。実際の商品も一つひとつが印象的で魅了されます。
また、第2部から登場した織部悠の師匠であるマリオの息子リッカルドが登場するのも見所。彼は同じ技術を受け継いだ者として、唯一弟子として認められた織部をライバル視している人物です。さまざまなシーンで対決が生まれていき、火花を散らす様子も物語のスパイスになっています。全7巻で過去のシリーズと比べると気軽に読める量なのも嬉しいですね。
- 著者
- 大河原 遁
- 出版日
- 2018-12-19
織部が若き日にお世話になったことがある日本の老舗テーラーの店主が危篤という知らせが入ります。恩義に報いたいと決意した彼は急遽イタリアから帰国し、下町・谷中で店主に代わって臨時で仕立ての依頼を受けるようになります。
- 著者
- 大河原 遁
- 出版日
- 2019-07-19
第4部は「下町テーラー」。
危篤だというので慌てて日本に帰国したものの、実は店主はピンピンしていました。そして悠に店番を任せると放浪の旅に出てしまいます。
しかもそれだけでなく、旅先で出会った服に悩む人の依頼を次々と織部悠に依頼してくるのです。漁師のジーンズ、白蝶貝のボタンなどスーツ以外の案件も満載で、どんな依頼が舞い込み、どう解決して服で表現をするのかが見所。
紳士服のウンチクも盛りだくさんなので、スーツや紳士ファッションについて学びたい方にも見所満載です。
日本が舞台だけにイメージも持ちやすく、読者の身近な話題が多いのも参考になります。あらゆる無茶ぶりを解決する織部の妙技をご覧ください。