『白衣の王様』は、3人の研究員と1人の助手、そして変わり者の所長がくり広げる「スプラッター×ギャグコメディ」漫画です。彼らのハチャメチャな研究の日々をメインに、時には涙がありつつも、最終的にはつい笑ってしまう展開が描かれます。 本作は、スマホの漫画アプリでも無料で読めるので、気になった方はそちらからもどうぞ!
本作の主人公であり、天才的な科学者のシーヴァ・キングは、独自の研究所「キングラボ」にて、日々研究に没頭しています。
そこには、見習い研究員のアダム、研究員のシノブ、副所長のラジュル、そしてシーヴァが作ったアンドロイドの助手・トリシュカという女の子がいます。
それぞれ風変わりな研究員ですが、とくに所長のシーヴァは変わり者。彼の思いつきに振り回されているのです。
- 著者
- 綾瀬 れつ
- 出版日
- 2017-01-27
物語は、とある男性がキングラボを訪ねてくるところから始まります。その男は、実は世間を騒がす「食人鬼」。そんなことを知ってか知らずか、彼を客人として通したシーヴァは、男を「解剖の実験体」にしようと凶器を振りかざします。
どちらが犯罪者かわからない展開に、男は狼狽(うろた)えながらも、当初の目的である「脳みそを奪うこと」を実行しますが、その男よりも一枚も二枚もシーヴァの方が上手でした。
状況に耐えかねた男は、真の姿である「ねずみ男」の姿に……しかし、その程度のことでは動じない研究員たち。
なぜなら化け物の正体は、かつてシーヴァが作り、世に放ってしまった「ヒューマノイド」だったのです。こうして、自らが作ったヒューマノイドを回収しながら、さらなる研究を進める彼らの物語が始まります。
本作の魅力は、個性的な登場人物たち。
所長のシーヴァは、完璧な人間を作り出すことを目標に、日々研究に励んでいます。一に解剖、二に解剖、三四はなくて五に解剖と、常に人を解剖しようとしている危険な男。出会ったすべての人を解剖しようと試み、凶器を振りまわします。
そんな所長のもとで働く研究員・シノブも、自分の目的のためなら手段を選ばず、平気で凶器を振りまわします。何事にも動じず、ヒューマノイドをみても顔色ひとつ変えません。
副所長のラジュルは、シーヴァやシノブよりも常識人であり、見た目を除けば、一番まともな研究員です。ただし、ノコギリを常備しているという変わった一面もあります。
見習いのアダムは、ある天才科学者に憧れて、このキングラボにやってきた青年です。その天才科学者とは、じつはシーヴァのことなのですが、アダム本人は一向に気づきません。他のメンバーたちも、知っていながらその事実を教えません。盲目的な部分はありますが、変わり者の研究員に囲まれて、日々苦労が絶えないキャラでもあります。
トリシュカは、シーヴァが作ったアンドロイド。自分の意思で動き、彼らの助手のようなポジションです。可愛い女の子のような見た目をしていますが、研究員の影響で口調は「じゃけぇ」。首が取れても壊れないので、何度も首が飛びます。
この5人がメインとなる本作ですが、敵役となる某組織の人たちも個性豊かなメンバーなので、読んでいて飽きることがありません。また奇怪な事件が起きても、彼らの不可思議な感性に触れると、自然と面白くなっていきます。
なかでも、自分がまともだと思っているシノブの言動には面白い展開が多く、シーヴァの言動でつい笑ってしまうことも。そんな変わった彼ら自身が、本作の魅力のひとつでしょう。
本作は、絵柄も魅力のひとつ。人間の死体やヒューマノイドが倒される場面がよくあり、アンドロイドであるトリシュカの首もよく飛びます。しかし、そんな一見グロテスクな場面でも、絵柄のためかキモ可愛くみえるのです。
また、ヒューマノイドは人間に化けていますが、正体を現すと動物の姿になります。動物の種類はうさぎやねずみなど、可愛いと分類されるはずなのですが、その姿は化け物そのもの。
そんなヒューマノイドの頭が飛んだり、内臓がえぐり出されたりと、見るも無残な姿でシーヴァたちに倒されてしまいます。ただしスプラッターシーンでも、展開がシリアスではないことも多いため、相乗効果で笑える場面に。
シーヴァたちはよく凶器を振りまわし、彼自身は他人を解剖したがるので、一見怖いように思えますが、言動がアホそのもの。真剣みが薄れ、ギャグシーンとして笑うことができるでしょう。
このように、独特な絵柄があってこその展開があり、本作ならではの魅力を演出しているのです。
素敵な仲間愛が垣間見えるのも、本作の魅力です。キングラボのメンバーは、お互いのことを家族同然のように思っています。
たとえば、トリシュカが壊れ、再起不能になったときには、涙を流して悲しむことも。シーヴァによって人工的に作られたものとはいえ、彼らにとっては大切な家族であり、仲間なのです。普段は人を解剖しようとしていますが、人間らしさが感じられます。
ほかにも、アダムが出ていき、敵の組織と近づくことがあっても、彼のためを思って引きとめません。しかしそれでは終わりません。アダムが何もいわなくても行先を予想しており、発信機と盗聴器を付けて、相手の居場所やボスを探り、彼を救出しようと動きます。
きっとアダムは戻ってくる、そう思ったからこその行動だったのでしょう。このように、本作ではギャグ展開ばかりではなく、研究員たちの絆に心打たれるシーンも多くあります。
シーヴァたちは、ヒューマノイドを回収していくなかで、ある組織と対面することに。
表に姿を現さないその組織は、どうやらヒューマノイドと何か関係があるようです。みんな黒いマントを羽織り、「あのお方」のために行動しています。
その組織のなかには、なんと副署長・ラジュルの弟も含まれていました。そうとは知らないシーヴァたちは、ラジュルの弟が営むバーを利用するなど、彼らの手のひらで転がされてしまいます。
あの手この手で仕掛けてくる彼らに対し、知らぬ間にシーヴァたちは、その魔の手から逃れているのでした。
- 著者
- 綾瀬れつ
- 出版日
- 2018-02-27
ラジュルの気弱な弟が、シーヴァの情報を盗もうとしたエピソードは傑作です。
摩訶不思議なキングラボ内で、さまざまな恐怖体験にあってしまう……という、どちらが悪役なんだかわからない展開は、目を見張るものがあります。
シーヴァの、相手を見抜いているような言動に着目すると、より楽しめるでしょう。
黒マントと接触し、キングラボを出ることになってしまったアダム。それは、アダムが幼少期より大事にしていた「ある本」がきっかけでした。そして、黒マントの組織の一員となったアダムに、とんでもない事実が告げられます。
一方で、敵組織のトップである「あのお方」の正体に検討がついたシーヴァは、単独で行動開始……。いよいよ、組織の正体と目的がすべて明らかになり、キングラボの命運が別れる最終回です。
- 著者
- 綾瀬れつ
- 出版日
- 2018-06-27
最終回の見所は、いつもふざけているように見えたシーヴァの本心や、生い立ちについて明かされます。どうしてシーヴァが作ったヒューマノイドが世間を騒がせているのか、すべての謎のピースが揃っていきます。
ラボを出て行ってしまったアダムは、どうなってしまうのか?シーヴァたちのもとに、無事に帰ってくることはあるのか?仲間愛も試されるエピソードもあり、今までのコメディな流れとは、ひと味違う展開から目が離せません。
気になる最終回は、ぜひ本作を実際に手に取って読んでみてください。