軽いテンポと、スタイリッシュな絵、漫画家のあるあるネタにどんどん引き込まれて行く『かくしごと』。『さよなら絶望先生』で知られる久米田康治による漫画です。 軽いテンポながらも、散りばめられた伏線があり、読みごたえもバツグンな本作を、最新9巻までご紹介します。日々の疲れを癒したい人、とにかく笑いたい人におすすめです!
主人公の後藤可久士で、娘の姫にある重大な「隠し事」をしていました。それは自身が下ネタ漫画家であること。つまり「描く仕事」をしているのです。実は彼、かつては『きんたましまし』という、ちょっと下品な漫画でヒットした漫画家なのでした。
父親が下品なマンガを描いていることが周囲にバレたら、娘がいじめられるのではないか?と心配して、姫には漫画家であることを黙っている可久士。
目黒区にある自宅からスーツで出勤し、会社員を装っています。しかし途中でシャツと短パンに着替えて、渋谷区の仕事場に向かう日々を送っているのでした。
そんな可久士の日々は、スリル満点。姫が友達から「姫ちゃんのパパ お仕事何してるの?」と聞かれたり、彼の描いたマンガ絵がプリントされたTシャツを着て、編集担当者が自宅にやってきたり……?
作者の久米田康治らしい「あるあるネタ」で笑わせる作風が、描き手になじみ深い漫画家というテーマになることでよりパワーアップした作品です。
特に代表作であり、アニメ化もされた『さよなら絶望先生』で作者のことを知った人も多いでしょう。1話完結方式のエピソードが多く、途中からでも読みやすい、気軽な展開の妙は、『かくしごと』でも活かされています。
『さよなら絶望先生』では結末に大どんでん返しがありましたが、本作でもどこかのタイミングで読者を驚かせてくれる仕掛けを作ってくれるのではないでしょうか。
- 著者
- 久米田 康治
- 出版日
- 2005-09-16
神奈川県出身の漫画家です。美術の教員免許を取得した和光大学では、漫画研究会に所属しており、『ピンポン』などで知られる松本大洋とは同期だったのだとか。
卒業後は漫画編集者になろうと、編集プロダクションの入社試験を受けるものの合格できず、それがきっかけで漫画家の道を歩むこととなります。
1990年に「地上げにスマッシュ!」を投稿して努力賞をもらい、その後『行け!!南国アイスホッケー部』で、デビューを果たしました。
しばらくはスポーツコメディ漫画を描いていましたが、その後ギャグ路線のみにフォーカスし、今のような「あるあるネタ」や「社会風刺」などのウィットに富んだ笑いを確立していきます。
また、独特のスタイリッシュな作画も特徴で、各話で主要人物が登場する際に、ページ4段ブチ抜き画法で人物を描くことが多くあります。『行け!!南国アイスホッケー部』後期に、スクリーントーン処理をするためMacを導入し、現在は全工程を、パソコンを使用して作成しているというのも、このシンプルな作風に繋がっているのでしょう。
久米田康治について紹介した<久米田康治の天才ぶりに迫る4の事実!「絶望先生」ヒットはあの人のお陰!?>の記事もおすすめです。
- 著者
- 久米田 康治
- 出版日
- 2016-06-17
本作は作者の十八番である、あるあるネタを見所としてご紹介しないわけにはいきません。
可久士は、作者をモチーフに描かれています。ほぼ実話ということで、漫画家とはどんな生活をしているのかなど、あまり知らない職業について楽しみながら知ることができます。
- 著者
- 久米田 康治
- 出版日
- 2017-06-16
久米田康はかつて、単行本の著者近影に自身の全裸写真を掲載していました。しかし作風の変遷にともない、しだいにシニカルなイメージに変化。
そしてそれを参考にしてか、1巻では可久士のある秘密が明かされます。彼は家からスーツを着てきて、途中でTシャツ短パンに着替えて漫画を描くための仕事場に来ます。スーツで描けばよいのにというアシスタントのツッコミに対し、スーツじゃなくて楽な格好にならなければ描けないと返します。そしてこう続けるのです。
「昔は全裸でしか描けなかったのだ!」
(『かくしごと』1巻より引用)
娘が産まれてから血のにじむような努力をして、現在の形になったと語る可久士。久米田康も、全裸から努力して現在の皮肉屋なイメージに変えていったのかな、と思いをはせてしまいます。
また作中には実在する漫画家をモチーフにしたキャラも登場。『うしおととら』の藤田和日郎をモチーフにした不二多勝日郎、『モテキ』の久保ミツロウをモチーフにした久保先生などなど。さらに登場する予定があるとかないとか……?
漫画家の仕事の裏側、先生同士のからみなどが、面白い本作。「実際にこういうのありそう!」と思いながら、漫画家のあるあるネタを読んでみてはいかがでしょうか。
- 著者
- 久米田 康治
- 出版日
- 2017-02-17
1話完結型のショートギャグ漫画ではあるものの、ところどころに伏線が張り巡らされていているのではないか?と楽しみながら読めるのが本作の魅力。
代表作『さよなら絶望先生』で本領が発揮された展開の妙。本作ではどう爆発するかが楽しみな作品です。
たとえば、1巻では娘の姫は10歳で小学生ですが、1巻の表紙をめくってすぐのカラーページでは高校生の姫が描かれています。そして「隠し事は何ですか?」とセリフが……。「隠し事は描く仕事でした」と1ページごとインパクトに仕上げたカラーページが印象的です。
ここから後々バレるということが予想されますが、10歳の姫にはまだバレていません。いつまで隠し通すことができるのだろうか、バレたらどうなるのだろうかと、1巻からハラハラさせられる展開なのです。
これ以外にも、父と娘のほっこりした日常生活に見せかけての伏線が張られているのではないかという期待が高まる本作。果たしてこの日々は、本当にただの日常なのでしょうか?
- 著者
- 久米田 康治
- 出版日
- 2016-10-17
先ほどもお伝えしたように、久米田康治作品の共通項として、ショートギャグとしての読みやすさがあげられます。1話完結なので、ちょっとした時間に読みたい方やさらっと読める漫画を探している方もおすすめです。コマ振りもキレイでごちゃごちゃしておらず、気付いたら1冊が終わってしまいます。
しかしその反面1話1話しっかり作り込まれているのも特徴です。伏線が張り巡らされており、深い内容にうならされるシーンもあります。
心に残るエッセンスを残しながらも、あっさりと仕上げているので、誰にでもおすすめしやすい作品です。
9巻では漫画家バレを防ぐため、仕事場を引っ越ししようという計画が始動。姫の教育環境も考えて、熊本に在住している漫画家「貰枝年一」先生のもとに2人で尋ねることとなりました。
しかし彼は漫画家であることをオープンにして活動している人物。これまでかたくなに隠してきましたが、打ち明けてしまうのも1つ方法かと考えている可久士の様子がうかがえます。
- 著者
- 久米田 康治
- 出版日
- 2019-09-17
9巻では、漫画家をやっていることをなぜ隠そうとするのかについて、考えさせられる展開です。結婚に支障があるから?子どもの私立受験に門前払いされるから?いろいろある理由を見ていると、漫画家でなくても、自分の仕事を子供や親、周囲に何て説明すればきちんと伝わるのかと考えさせられるのではないでしょうか。
また、余談ですが、この「貰枝年一」という漫画家についても、『俺たちのフィールド』『RED』という漫画を知っている方なら思わずニヤリとしてしまうのではないでしょうか?はっきりと作品内で語られているわけではないですが、漫画家・村枝賢一がモデルのよう。作品上の登場人物のモチーフ当てをするのも、本作品の醍醐味ですね。
なんと本作がアニメ化されることが発表されました。キャストなども決定しており、後藤可久士役を神谷浩史が、姫役を高橋李依が担当します。
さらにアニメ化公表に合わせて、ティザーPVも公開されています!
原作より少し柔らかくなった印象があり、スタッフからの気合いも感じられます。アニメ放送も期待が高まります!
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