2019年の現代で「機械と人間の融合」と聞くと、欠損した部分を補うためや、装着する機械などが想像しやすいと思います。しかし『ノー・ガンズ・ライフ』は、少し変わった世界が舞台。身体の一部を機械化することが当たり前の世界で、その用途は武装です。今回は、2019年10月にアニメ化される本作の魅力を、ネタバレしながら紹介していきます。 無料のスマホアプリでも読むことができます。下のボタンは簡単にアプリに移動することができるので、ぜひご活用ください。
物語の舞台は、拡張者と生身の人間が共存する世界。
大きな戦争が発生したことで、身体の一部を機械に改造する「身体機能拡張」という技術が発達し、身体機能を拡張した人間は、拡張者(エクステンド)と呼ばれます。
彼らは、おもに戦地で活躍しましたが、終戦を迎えた後は、存在自体が凶器ということもあり、厄介者として扱われることに……。
彼らの存在は浸透したものの、拡張者による犯罪や問題行動は後を絶ちません。
そんな状況のなか、自身も拡張者である主人公・乾十三(いぬいじゅうぞう)は、拡張者に関する問題処理をおこなう「処理屋」を生業としていました。
さまざまな事情を抱えながら、十三に仕事を依頼する人々。ある日、警備局から追われている拡張者の男から、「子どもを保護してほしい」という依頼を受けますが、その子どもの存在によって、物語は加速していきます。
- 著者
- カラスマ タスク
- 出版日
- 2015-02-19
本作の主人公・乾十三は、拡張者です。大きな特徴は、リボルバーの形をした頭ですが、じつは全身が改造されている過剰拡張者。手術前の記憶は失われており、GSU(ガンスレイブユニット)と呼ばれる、特別な武装が施されています。
頭が銃なのに、なぜカッコいいのか……?それは、十三の纏(まと)う空気感であり、ハードボイルドさにつきます。
記憶喪失なので謎が多く、戦争の産物ということもあり、存在自体が感傷的な雰囲気を醸(かも)し出します。クールな物言いは洒落ており、煙草を吸う仕草に不自然さがない、まさしくハードボイルドな男なのです。
また、自分の信念を貫き通すところも、十三の魅力のひとつ。自身で口にしたことは、覆(くつがえ)さずに実行していく、そんな力強い姿に魅了されてしまうでしょう。
ガキと湿気は嫌いと言いながら、保護を求めてきた少年・鉄朗(てつろう)を、身体を張って助け、彼自身の「本当の言葉」を口にするように促すことも。ぶっきらぼうながら、依頼者の本当の願いを叶えようとする姿勢に、胸が熱くなります。
そして、クールながら三枚目の一面もあります。
頭は銃でも、全身からダンディなオーラが醸し出されているので、モテそうですが、じつは「女性慣れしていない」というギャップも大きな魅力。依頼人の女性から頬にキスをされ、顔を赤くしている姿には、キュンとしてしまうでしょう。
機械化が進みながらも、戦後の混乱によりくたびれた街。
街中では生身の人間に交じって、機械化した人間が闊歩(かっぽ)し、どこか緊張感が漂います。戦後の寂れた印象ですが、技術ははるかに現代日本よりも発達したもの。遠い未来のようでいて、近しい過去のような、不思議な感覚を読者に呼び起こします。
本作の大きな魅力のひとつは、作品全体に流れている空気感です。サイバーパンクや、SFジャンルを彷彿(ほうふつ)とさせながらも、近未来ともいえない「独特な荒廃した空気感」がたまりません。
また、十三のように「日本人らしい名前」のキャラクターも多く登場しますが、舞台は日本ではありません。無国籍な空気と、寂れた街の様子があいまって、どこか退廃的な印象を抱かせるのです。
そんな世界で、異常なほど発達しているのが、身体機能の拡張技術です。ベリューレン社が開発した技術で、戦争特需で巨大企業となったのですが、なぜ身体機能の拡張技術を開発したのか……?
彼らの目的や、目指すものとはなにか、退廃的な街に謎が大きく横たわります。
十三は、頭が銃に改造されているほか、全身も武器に改造されている過剰拡張者。
頭の銃は、十三が「認めた人間」しか使用できませんが、身体に内蔵されている武器は、彼の意思で自由に操作できます。
武器の大きさや重さという制約がないので、近距離で銃弾を撃ち込むといった戦法が可能。このことからも、拡張者としての十三は、兵器としてかなり優秀であることがわかります。
戦闘シーンは、ガンアクションというよりも、武器が身体に内蔵されているので、格闘技をイメージしたほうが想像しやすいでしょう。
手に内蔵された銃のほか、背骨を中心に伸びる「複数のアーム」を展開することもできます。変幻自在で、どんな武器が内蔵されているのか、想像もつきません。
どの武器を駆使して、難局を切り抜けるのか……?手数が多いだけに、バリエーションが豊富な戦闘シーンを楽しむことができます。
ある日、処理屋として生活している十三の事務所に、拡張者である大男が訪ねてきます。その内容は、鉄朗という少年をある追手から守ってほしい、というもの。依頼を受けることにした十三でしたが、シスターのふりをした女性に、少年を奪われてしまいます。
その少年は、ベリューレン社CEOの息子でもあり、会社が秘密裏に開発している拡張体遠隔操作装置「ハルモニエ」を埋め込まれた実験体でもありました。しかし拡張体の遠隔操作は、エクステンド法に触れる違法行為のはず……。
誰も操作していなかった拡張体を使用し、なんとか逃げ出した鉄朗。依頼を引き受けた十三は、彼を匿(かくま)いますが、それは「巨大企業・ベリューレン社との敵対」を意味していました。
登場人物も増え、物語はさらに加速していきます。ベリューレン社CEOの子息なのに、人体実験の道具にされてしまった荒吐鉄朗(あらはばきてつろう)、並外れた拡張技師であるメアリー・シュタインベルグ。
そして、使用するだけで違法のGSU(ガンスレイブユニット)を兵装する、十三。
ベリューレン社との激しい戦いのなかで、なぜ拡張者が誕生したのか、十三の過去や大戦に隠された真実、メアリーの兄・ヴィクターの失踪の理由など、さまざまな謎が明かされていきます。
- 著者
- カラスマ タスク
- 出版日
- 2019-03-19
8巻までの最大の見所は、拡張者と十三の過去にからんだ「とある秘密」です。
鉄朗が保護を求めてきたことで始まった物語は、大企業とのいざこざというレベルではなく、先の大戦に関わるほど大きくなっていきます。
物語を読み進めるうちに、「なぜ?」と思う展開が増えていくでしょう。それは、十三が「大きな謎を抱える存在」になっていくからです。
また、十三と同じく「GSU」を所持しているセブンや、最初の全身拡張者と呼ばれるメガアームド斎時定といった、強力な拡張者との戦闘も大きな見所のひとつ。どこから何が飛び出すのかわからない、独特の戦闘シーンは迫力満点です。
鉄朗の兄と名乗る硫黄(いおう)との戦闘により負傷した十三。治療方法を探るため、拡張者専用の収容所である「凶器の保管庫」にやってきます。
保管庫の奥底にいたのは、かつて十三が手にかけた「GSU」を所持する同型、12番機こと、ヴィクター・シュタインベルグでした。
十三は、収容所の所長・ヴァイオレット・ヴァレンタインに、「ハルモニエ」移植者である荒吐シリーズの1人、荒吐真赭(あらはばきまそお)との対決を提案されます。
勝ったほうに、ヴィクターの身体が譲渡されることになり、激しい戦いがくり広げられるのです。
- 著者
- カラスマ タスク
- 出版日
- 2019-09-19
一方、同じく保管庫に潜入していたメアリーは、ヴィクターと名乗る男と出会い……?
9巻では、メアリーとヴィクター、2人の拡張技師兄妹の物語が最大の見所です。メアリーが技師をしている理由だった、兄のヴィクター……。彼がなぜ拡張技師となり、自身も拡張体となってしまったのか、兄妹の絆とともに理由が語られます。
1人の技師が味わった現実の、あまりの過酷さに打ちのめされるでしょう。
また満身創痍の状態でも、激闘をくり広げる十三ですが、9巻でさらにパワーアップします。世界の混乱が続くなか、「新しい武器」を使用する十三にも、ぜひ注目してください。
2019年12月まで放送していた『ノー・ガンズ・ライフ』の第2期が、早くも2020年4月から放送決定。第1期と同様に、TBSほか5局で放送予定です。
キャストは引き続き、諏訪部順一が主人公・乾十三を演じます。第1期でも、キャラクターと諏訪部の渋い声がマッチしていたとファンから好評でした。
十三が保護する少年・荒吐鉄郎を山下大輝が、十三と昔からの馴染みの少女・メアリーを沼倉愛美が演じています。
TVアニメ第2期でも、豪華声優陣の熱演が楽しみになる作品です。第1期のPVが公式から公開されているので、気になった方は下の動画をご確認ください。
その他の最新情報は、TVアニメ「ノー・ガンズ・ライフ」公式サイトでご確認いただけます。アニメの前に、原作漫画での復習もおすすめです!
ハードボイルドな空気と、変幻自在の戦闘で読者を魅了する本作。やはり気になるのは、十三をはじめとした拡張者たちのアクションシーン。映像でどのように再現されるのか、期待が高まります。