荀子の唱えた「性悪説」とは。名言や「勧学篇」の内容もわかりやすく解説!

更新:2019.10.18

中国の習近平国家主席が深く傾倒し、その統治手法のもとになっているとして注目された荀子。この記事では、彼の生涯や、有名な教えである「性悪説」、名言などをわかりやすく解説していきます。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

荀子の生涯を簡単に紹介

 

中国の戦国時代末期、現在の河北省に位置する趙の国に、荀子(じゅんし)は生まれました。

彼の生涯は不明な点が多いものの、後に司馬遷が著した歴史書『史記』によると、50歳の頃に斉の国の襄王(じょうおう)に仕え、後に楚の国に移って「戦国四君」のひとりとされる春申君に仕えたとのこと。職を辞した後は隠遁生活を送り、そのまま楚で没したとされています。

思想家であり儒学者としても活躍した荀子の著作は、前漢末に『孫卿新書』として32篇12巻にまとめられました。「孫卿」は漢の時代に使われていた荀子の尊称です。残念ながら『孫卿新書』は現存していませんが、これをもとに唐の楊倞が改訂を加え、『荀子』と改題して32篇20巻にまとめ直したものが伝わっています。

荀子の思想の基本は、「礼」の重視です。後に弟子の韓非や李斯が「礼」を発展させて「法」によって社会を統制する「法家思想」を大成しました。

荀子の唱えた「性悪説」と、孟子の「性善説」を解説

 

荀子の唱えた考えのなかでもっとも有名なのが「性悪説」でしょう。これは、同じく戦国時代の儒学者である孟子の唱えた「性善説」に反対する主張です。『荀子』の「性悪篇」に記されている「人の性は悪なり、その善なるものは偽なり」という言葉に由来しています。

ここでいう「悪」とは、犯罪などの意味ではなく「弱い存在」という意味。また「偽」とは偽物などの意味ではなく、「人の行為」のことです。

つまり「性悪説」は、人間の本質は悪=弱いもので、それが善になるのは努力の結果だ、という趣旨の主張をしています。

一方で孟子が唱えた「性善説」は、人間には先天的に善の兆しが備わっていて、努力をすることで成長させることができるというもの。勉学を怠ると悪の影響を受けて、せっかくの善の兆しも曇ってしまうと説きました。

「性善説」「性悪説」と聞くと相反する考え方のように感じますが、その違いは「善」が先天的に備わっているものなのか、後天的に獲得するものなのかという点。むしろどちらも努力をすることの重要性を説いているという共通点があります。

荀子の名言・格言を紹介!

 

荀子が生きていたのは2400年ほど前ですが、長い時を経ても参考になる名言や格言がたくさんあります。いくつかご紹介しましょう。

「疑を以て疑を決すれば、決必ず当たらず」

迷いながら物事を決めると、必ず失敗する。どんなことでも何かをする場合はしっかりと決断したうえで事に当たる必要があるという意味です。

「上学は神で聴き、中学は心で聴き、下学は耳で聴く」

最上の学びとは、精神を集中すること。中等の学びとは、学んだことを心に留めること。読むだけ、見るだけ、聞くだけでは、学んだことにはならないという、「好きこそものの上手なれ」にも通じる考え方です。

「道は近しといえども、行かざれば至らず」

達成するまでの道がどんなに近くても、まずは足を踏み出さなければ着くことはない。何事も始めなければ達成しないという意味です。

「終身の楽しみありて、一日の憂いなし」

生涯をかけて叶えたい目標があるならば、日々の小さな失敗など気にならず、不平や不満を抱くこともなくなるという意味です。

「その子を知らざれば、その友を視よ」

その人の性格など人となりを知りたいのであれば、その友人たちを見ればよいという意味です。

「積土成山」

少しの土でも積み重ねれば大きな山になるように、小さな努力の積み重ねがやがて大きな成果になるということ。「塵も積もれば山となる」と同じ意味です。

荀子「勧学篇」の内容を解説

 

唐の楊倞がまとめた『荀子』は全部で32篇。その最初の1篇が「勧学篇」です。「学は以て已むべからず」という言葉から始まっていて、「生涯学習の大切さ」が説かれています。

特に学ぶべきものとして荀子が重視していたのが「礼」です。「礼は法の大分、類の綱紀なり」と記されていて、人の上に立つ君子は「礼」を身に付け、「法」に従って国を統治し、法に定められていないことは礼法の原理に基づいた判断を「類」として適用するべきだといっています。

この教えは、後に荀子の弟子である李斯によって整備され、秦の国家体制となりました。君主が礼法を学んだ官僚集団を用いて、法にもとづいた人民統治をし、秦は中国を統一。この体制は、秦が滅びた後も歴代王朝に受け継がれていきます。

知っておきたい異端といわれた儒学者の教え

著者
出版日
1961-06-25

 

孔子や孟子に比べて知名度が低く、一時は「異端の儒学者」ともいわれていた荀子。江戸時代の日本でも主流を占めていたのは朱子学や陽明学でした。

本書は、そんな彼の教えが記されている『荀子』を、『論語』『荘子』『韓非子』などの訳注書も手掛けた金谷治が翻訳したもの。書き下し文、全訳、注、語句・人名索引、解説で構成されています。

読んでみると、彼の教えは「性悪説」にとどまらない幅広いものであったこと、さらには後の朱子学や陽明学をも想起させる先見性に満ちていることに驚くでしょう。

教養としても読んでおきたい一冊です。

サラリーマン必読の荀子流ビジネス書

著者
守屋 洋
出版日
2014-02-12

 

現代の自己啓発本は、大きく「理想主義」と「現実主義」の2つに分けることができます。前者の例が孔子や孟子であり、後者の例が荀子です。

たとえば上司がとんでもない暴君だった場合。孔子は「どのような職場環境でも自分のできる努力を重ねれば必ず道は開ける」などと説きます。一方で荀子は「相手によって柔軟に仕え方を変えるべき」「それでもだめなら組織を変えるのもいい」と説くのです。

本書は、荀子の言葉を現代社会に絡めながらわかりやすく解説してくれています。文章も平易なので、古文に苦手意識がある人も問題ありません。

もっと見る もっと見る