意外と映画化されることが多い絵本。その作品を見てみると、心に訴えかけるものが多く、読み物としても魅力的なものばかりです。この記事では、これまでに映画化された絵本のなかから特におすすめの作品を紹介していきます。
いたずらっこのマックス少年。おおかみの着ぐるみを着てふざけていると、お母さんに怒られてしまいました。夕食を抜きにされ、寝室に放り込まれます。
すると、気が付けば部屋が森や野原に大変身。マックスは船に乗って長旅に出かけ、かいじゅうたちのいるところで王様になるのです。
- 著者
- モーリス・センダック
- 出版日
- 1975-12-05
1963年に刊行されたモーリス・センダックの絵本です。日本では1966年に初版が翻訳出版。その後2010年に実写版長編映画が公開されています。
かいじゅうたちのいるところで王様になったマックスは、歌い、踊り、暴れます。見ているだけで、パワフルな好奇心が伝わってくるでしょう。大きな顔にごつごつとした体のかいじゅうたちのちょっと不気味でユニークなイラストは、見れば見るほど味が出てきます。散々遊ぶと寂しくなって、帰って来たのはやっぱりいつもの場所。温かい夕飯も用意されていました。
叱られた時に拗ねてしまう子どもの心情や、空想の世界への逃避行などは、世界共通の感覚なのでしょう。国境も時代も超えて愛されている絵本です。
岐阜県に暮らす小学生のリエちゃんに飼われていた、黒猫のルドルフ。ひょんなことからトラックに乗ってしまい、東京の江戸川まで来てしまいました。
やがて教養のある虎猫、イッパイアッテナと出会い、意気投合します。
- 著者
- 斉藤 洋
- 出版日
- 1987-05-20
1987年に刊行された作品。文を斉藤洋、イラストを杉浦範茂が担当しています。2016年にアニメ映画化されました。
いきなり野良猫になってしまったルドルフ。最初は弱気でしたが、少しずつ少しずつ生きていく術を身につけ、たくましくなっていきます。当初は自分の住んでいた町の名前もわからなかったのですが、イッパイアッテナから文字の読み書きを教わり、テレビに映った地元の映像を見て、自分が住んでいた場所が岐阜県だと知りました。この本はルドルフ自身が書いたという設定になっているのですが、それも納得できるでしょう。
ラストはルドルフとイッパイアッテナの友情にじーんとできる物語です。
ロンドンのパディントン駅に、1匹のくまがひとりぼっちで座っていました。ブラウン夫妻が声をかけると、どうやら南米のペルーからやってきたようです。
夫妻は駅名にちなんで彼を「パディントン」と名付け、自宅に連れて行くことにしました。
- 著者
- マイケル・ボンド
- 出版日
- 1967-10-01
1958年に刊行されたマイケル・ボンドの作品。日本では1967年に翻訳出版されています。2014年にイギリス・フランスの共同製作で実写映画化され、2017年には続編も公開されました。
くまのパディントンは、人間の常識なんて知りません。好奇心のおもむくままに行動し、次々と騒動を巻き起こします。ちょっぴりドジな部分もあるけれど、根は紳士的で礼儀正しく、家族思い。どんな失敗をしても憎めません。
物語にはイギリスらしい風刺も散りばめられていて、大人が読んでも楽しめるでしょう。
広い平原で、アンキロサウルスの赤ちゃんが卵から生まれました。ひとりぼっちの赤ちゃんが泣きながら歩いていると、お腹を空かせたティラノサウルスがやってきます。
「おとうさーん!」
勘違いしたをしたアンキロサウルスの赤ちゃんが、よだれをたらしたティラノサウルスにしがみつき……。
- 著者
- 宮西 達也
- 出版日
2003年に刊行された宮西達也の絵本です。2010年に映画化されました。
ゆるい雰囲気が漂うイラストが魅力的。ただ表情は秀逸で、なついてしまったアンキロサウルスの赤ちゃんに情が湧く様子や、仲間の群れのもとに戻す時の切ない様子などは心にぐっとくるものがあります。
弱肉強食の厳しい恐竜界にも、愛があることを教えてくれる、優しいお話。コミカルなシーンも多くあり、子どもと一緒に「ガオー!」と言いながら楽しめるページもあるので、読み聞かせにもおすすめです。
雪の降るクリスマスイブの日。真っ白な蒸気に包まれた汽車「北極号」は、暗い森を抜け、高い山を越え、北へ北へと進みます。
ようやく辿りついたのは、北極点。そこは、クリスマスに子どもたちへ贈られる、すべてのおもちゃが作られているところで……。
- 著者
- ["クリス・ヴァン・オールズバーグ", "Chris Van Allsburg", "村上 春樹"]
- 出版日
1985年に刊行されたクリス・ヴァン・オールズバーグの作品。日本では1987年に村上春樹の翻訳で出版されました。2004年に映画化されています。
淡い線で描いたイラストがとてもきれい。汽車の放つライトや、月夜の山肌、そりの上から見た街の景色など、息を飲むほどの景色が広がっています。
子どもたちがサンタクロースを心待ちにする様子は、世界共通のもの。主人公の少年は、小さな鈴をもらいました。どうやらその鈴の音は大人には聞こえないようなのですが、信じることの大切さを知った少年は、その後も音を聞き続けることができるのです。
クリスマスのプレゼントにもおすすめ。折に触れて読み返したくなる絵本です。
エッフェル塔よりも東京タワーよりも高い、ニューヨーク世界貿易センターのツインタワー。完成当時は、世界一の高さを誇っていました。
フランスの大道芸人、フィリップ・プティは、ツインタワーの間に太さ2センチのワイヤーを渡し、綱渡りにチャレンジ。もちろん命綱はなく、持って歩くのはバランスを取る棒だけです。
- 著者
- モーディカイ・ガースティン
- 出版日
- 2005-08-01
2005年に刊行されたモーディカイ・ガースティンの作品。フィリップを追ったドキュメンタリー映画「Man on Wire」がもとになっていて、絵本が発表された後の2015年に、「ザ・ウォーク」というタイトルで映画化されています。
本書の魅力は、何といっても綱渡りを始めるシーン。ページをめくると、見開きいっぱいに地上400メートルの世界が広がる仕組みが施されています。
はたして彼は、無事にツインタワーを渡りきることができるのでしょうか。