読めば、女子が女子に惚れる理由が分かる?女性同士の恋愛が「分かる!」ワケ

更新:2023.3.9

女子が女子に惚れる理由が分かる!と共感を生んでいる恋愛漫画、『付き合ってあげてもいいかな』。異性を好きになる読者からすると、百合漫画などの同性を好きになるストーリーの作品は、自分とは違うことのように思いがちではないでしょうか。しかしこの作品は、なぜか彼女たちに共感できる内容なのです。 そんな、共感できる作品に秘められた創作の工夫とは。作者のたみふる先生を、取材しました。

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『付き合ってあげてもいいかな』に共感の声が多いのは、なぜ?

本作の感想によく登場するのが、「リアル」という言葉。実際に女性同士の恋愛をした経験がなくても、読んでいると、なぜかストーリーを身近に感じて、共感できるのです。

なぜ、ここまで「分かる!」と思えるのか。作者のたみふる先生にきいてみました。 今回はインタビュー2記事目です。前回の記事は以下からご覧ください。 

ただ、エロいだけじゃない。「生々しい」恋愛漫画、読んでみませんか?

ただ、エロいだけじゃない。「生々しい」恋愛漫画、読んでみませんか?

まずは、こちらをご覧ください……!

著者
たみふる
出版日
2019-01-11

陽キャの世界を徹底的に描きたい

ーー前回に引き続き、作品の魅力を作り出している秘訣に迫りたいと思います。

女子同士の恋愛というテーマではありながら、読者から「分かる!」「リアル!」という共感の感想が多いのが『付き合ってあげてもいいかな』では特徴的ですよね。ご自身ではなぜそういう声が多いと思われますか?
 

たみふる 私自身、漫画を読む機会は多かったのですが、そのなかのキャラクターってリアルにいたらこうじゃないよなっていう違和感はたびたび感じていたんです。

当時は、漫画だからなと思って楽しんでいたんですけど、やっぱり、もっとリアルな人物や感情を描いた漫画が読んでみたいなと思って。そういう読者目線での自分を裏切らないために、妥協せず丁寧に描くことを心がけてます。

あと、私が昔から陽キャという人種が好きなのもあって(笑)。あのキラキラした世界観を徹底的に描きたいな、という意識があるから、感想でもそこを評価していただいているのかもしれませんね。

(『付き合ってあげてもいいかな』1話より引用)

ーーなるほど!

たみふる 人物の内面の描写だけでなく、服などの外見の要素もかなり気を遣ってます。陽キャのわりにダサくね?と思われないように、とかは工夫しましたね。

だから、服が可愛い、お洒落と言われると、「やったー!してやったり!」みたいに思います(笑)。

服装、家庭環境……細かい設定へのこだわり

ーー洋服の話が少し出ましたが、どういう風に決めているんですか?

たみふる 各キャラそれぞれに合うだろうなっていうファッション雑誌やブランドを決めてあります。元ネタになった服などは実はインスタの方で時々公開したりしてます。

冴子は、ストリート系の服装の、型だけ真似して柄はちょっと変えてる感じですね。こうすると絶妙なダサかわさが出せるという(笑)。

みわちゃんは、大学生より年齢高めのちょっと大人っぽい服装って決めていて。新人OLさんが買うような服をよく着せてます。たまーに年相応な服も着せてます。

(マンガワン内『付き合ってあげてもいいかな』ページの「スマホ待ち受けプレゼント!」より引用)

たみふる ちなみに、みわは田舎育ちなんですけど、冴子は下町育ちで。冴子は割とシティーガールなんですよ。
 

ーーあぁ、確かにシティーガールの方が服装を気にしないところありますよね。

たみふる そうなんですよね。市内に住んでる人は都心が近所だからお洒落しないけど、田舎から来た子は毎日旅行だから、すっごい張り切ってるんです。勝手な偏見ですけど……(笑)。

そういう服装や意識の違いは大学時代に周りの子を観察してたのを反映させてますね。大学生のストーリーを描くって決めてから頑張って思い出しています。最新のファッションを参考にしつつ、大学生だからちょっと芋っぽい感じ、みたいな。

ーー服装などの見た目から家庭環境、性格まで、たみふる先生が実際に出会ってきた人がベースになってるから、ファンタジーになりすぎていないんですね。

ちなみに人物像はルックスと性格どちらから先に作られるんですか?

たみふる ルックスと大体こういう性格の子っていうのは、どちらも並行して進めていますね。ルックスと一緒に性格を決めて、今話したような生い立ちとか細かいことは全部後付け。イメージだけ固めて後は、それに合うように過去を設定していきます。

最初のバンドメンバーの5人と、うっしーとリカちゃん、完先輩までは連載始まる前に決めていました。でも、イノケンくんとか他のサブキャラはちょっとウザキャラほしいなーとか、根性悪そうなキャラほしいなーとか思った時に作りました。

そこで必要になってから、今まで会ったウザキャラってこんなパターンだったなーという過去のイメージを深掘りしていくっていう感じです。

ーーストーリー展開やキャラ設定などの案出しはいつ考えているんですか?

たみふる 常に考えてますね。寝る前とか、移動してる時とか、作画しててあんま集中力がない時とかも、ぼーっと(笑)。次の話を考えたり、このキャラってたぶんこうだな、というのは24時間考えてますね。 

 

「よくあるもの」に疑問を持って描く

ーーキャラの作り方についてお伺いしましたが、ここからはストーリーをつくるうえでの工夫についてもお伺いしたいと思います。

私が特にいいな、と思ったのが、付き合い始めの展開で、「女の子を好きになっちゃった!」という葛藤とか、「好きになっちゃってドキドキして……」みたいな片思いの時期がなく、とりあえず付き合ってみるか、というスタンスで始まったところです。大学生以上の年齢の方には特に共感できる、お付き合いの始まりかと思います。

ゆるっと始まる、お付き合い(『付き合ってあげてもいいかな』2話より引用)

たみふる ありがとうございます。同性を好きになることの葛藤とかはもはや、前時代的なのかなと思うところもあって。もう令和だしいいかな、と(笑)。

ーー新しい時代の恋愛漫画という感じですね……!素敵です。

他に、新しい時代の恋愛漫画を意識して工夫していることはありますか?

たみふる 女性の性欲についてちゃんと描くことですかね。これも、今まではなんとなくタブー視されてきたと思うので、当たり前のようにサラッと描きたいです。

ただ、みわと冴子が「性欲」というものにちゃんと向き合っていることが、同性が好き=性欲が強いって思われてしまうかも?という懸念もちょっとあって。だから異性が好きで性欲が強いキャラを出しました。

ーーリカちゃんですね。

セックス中でも普段とテンションが変わらないキャラのリカちゃん(『付き合ってあげてもいいかな』8話より引用)

たみふる はい。かつ、暗い過去とかなくって、本当に自分が愛されるのが楽しいからやっている、という設定にしました。ビッチキャラって、暗い過去がありそうって思われがちなので、「いやそうじゃない、普通に楽しんでるんだ!」という感じで描きたいという思いもあって。

逆に、そもそも恋愛自体にあんまり興味がないキャラとして、うっしーを対極的に配置していたりもします。

ーー先ほどから聞いていて、たみふる先生が漫画を描くうえで自然にチャレンジしているのが伝わってきます。「よくある展開」「よくある設定」を超えて物語を描こうとしているんですね。

性の話でいうと、20話くらいから冴子が攻めから受けに変わろうとするところがありますが、どこに注目してほしいですか?

いつも「抱かれる」側のみわから勇気を出しての申し出!(『付き合ってあげてもいいかな』20話より引用)

たみふる 注目してほしいのは、みわと冴子の双方が抱える「心の壁」の描き方でしょうか。2人のその問題は長期的な話になるかと思いますが、「体を許せる=心を許せる」ことかなっていう考えが私の中であって。それをメタファー的に出したかったんです。

ーー表面的には性的な話題ですが、2人の心の問題を描こうとしていたんですね。もともと受けだったみわは、真面目そうに見えて、いい意味で、意外と心も体もオープンですもんね。

たみふる そうですね。みわちゃんは人を疑わずに生きてきたから、信頼できたら結構スムーズに相手を受けいれるんです。逆に冴子は非処女ではあるけどあんまり心はみんなに開けてないなーっていうイメージがあるから、体を開くのもちょっと抵抗感があるようです。

ーー前回のインタビューで伺った本作の「生々しさ」は、心理的なものと体が繋がってるっていうのを、たみふる先生が意識して、2人の絡みを描いているからかもしれないですね。

 

いつもアドリブ演技!たみふる先生もこれからの展開は分からない!?

いつもアドリブ演技!たみふる先生もこれからの展開は分からない!?

 

ーー最後にこれからの展開やキャラの動きをお伺いできればと思います。

たみふる 結末までの展開とその過程のポイント、キャラのイメージはしっかり固めてるんですけど、そこまでどういきつくか、それぞれのキャラがどう動くかは変わっていくかと思います。

最近気づいたのが、プロットとかあらすじ、脚本を作成してる時はプロデューサー・監督の目線で書いてて、その後、ネームで台詞や演技を考える時は役者としてストーリーに入ってるということ。

監督の指示を受けつつ、役者として「このキャラだったらこうするかな」と演じている感覚です。

ーーじゃあ、演技みたいにアドリブが加わっていくから、どうなるか分からないということですね。

たみふる そうですね。脳内の監督から「この会話からこうなるように繋げてね」っていうあらすじに沿った指示はあるんですけど、そこからどう繋げるかは役者の自分がうまく着地するように自由に会話するって感じです。

ーー面白いですね……!!

彼らがどう動くかは、設定にもよるかと思うのですが、語られていない裏設定などもあるんでしょうか?

たみふる ありますね。これから徐々に出していくと思います。

ただ、まだなんとなくとしか決めてないことも多いので、話を書くたびに深掘りされてく部分もあるかなと思います。

あとは、キャラ同士の絡みで違う一面が出てくるかもしれないですね。

ーーその化学反応が、たみふる先生自身でもまったく予想できないキャラはいますか?

たみふる やっぱりリカちゃんですかね(笑)。

リカちゃんは一番何するか分からないキャラなので、出す時はかなり慎重になります。ヘタに男キャラと接触させたら食っちゃうんじゃないか?など、もろもろ予想できないです。

 

ーーストーリー上で誰がメインで出演するかも、その都度変わるんでしょうか?

たみふる はい。このキャラを出したい!っていうのはコミックス単位で考えています。

前の巻でこのキャラ出てないから出そう。じゃあ、そのキャラを活かすためにはどのキャラと絡んだらいいかなって……。

ーーうわーー!どんどん変化していくこれからの連載がすごく待ち遠しいです……!

今回はたくさんのお話を聞かせていただきありがとうございました!

(インタビューはこれにて終了です。前回の内容はこちらからどうぞ)

1回目(前回)

ただ、エロいだけじゃない。「生々しい」恋愛漫画、読んでみませんか?

ただ、エロいだけじゃない。「生々しい」恋愛漫画、読んでみませんか?

まずは、こちらをご覧ください……!

『付き合ってあげてもいいかな』は単行本が発売中!カバー裏の「オーディオコメンタリー風」漫画や、見開きの絵の、手の絡みなどの色っぽさなど、ぜひご覧ください。

著者
たみふる
出版日
2019-01-11

12月12日には3巻も発売されます。19話から掲載で、冴子の過去が少しずつ明かされたり、みわの初恋の人が現れたりと、見所満載ですので、お見逃しなく。

著者
たみふる
出版日
2019-12-12

 

 

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