日本史を学びたいとは思っても、学術書を本格的に読むのは少しハードルが高い……と思っている方、多いのではないでしょうか。そんな時は、気軽に手に取れる新書を読むのがおすすめ。この記事では、読み物としても楽しめる日本史を学べる新書を紹介していきます。
15世紀から始まった大航海時代、なぜ日本は植民地にならなかったのでしょうか。
キリスト教の布教と貿易を絡めて世界征服事業を展開した、ポルトガルとスペイン。アジアにも勢力を広げ、織田信長や豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗ら戦国大名と駆け引きをします。
- 著者
- 平川 新
- 出版日
- 2018-04-18
2018年に刊行された平川新の作品。「和辻哲郎文化賞」を受賞しています。
秀吉がおこなった「朝鮮出兵」は明の征服を目指したものだったのか、家康の「鎖国政策」は保守的思考からなのか、政宗が「慶長遣欧使節」をした本当の狙いは何だったのか……作者は当時の宣教師たちが記した膨大な量の文献を読み、彼らの政策が国際情勢をふまえた外交政策だったと記しています。
日本が軍事大国として強大な力をもてたのは、戦国大名たちの国際感覚と外交手腕があったからだそう。日本史を日本だけの視点で見るのではなく、広い視点で物事を読み取ることができる歴史書になっています。
日本の古来の合戦を、「戦術」ではなく「戦略」という概念で分析した作品です。
戦略と勝敗はどのような関係があるのか……『孫子』や『戦争論』など諸外国の戦略論も参考にしながら、日本史上の各合戦を分析していきます。
- 著者
- 海上知明
- 出版日
- 2019-04-27
2019年に刊行された海上知明の作品です。海上は日本戦略研究フォーラムの研究員で、本書のほかにも戦略という視点で歴史上の戦いを解説した著作を発表しています。
「平治の乱」は完璧な合戦、「桶狭間の戦い」は戦略不在ながら幸運のみで勝利し、後の日本軍がそれを真似て大失敗に陥る……など興味深い事例がたくさん。豊富な知識に裏打ちされた解説は説得力があります。
孫子やクラウゼヴィッツなど世界の戦略論、日本史における重要な合戦の基礎知識も学べる一冊です。
応仁の乱といえば、日本史の授業で必ず習う戦。しかし11年も続いたその長さと、多数の大名が参戦して構造が複雑化したことから、一体どんな戦いだったのかを理解している人は少ないのが現状です。
本書は、ほとんどの日本人が実は知らない大乱を検証した作品。歴史書ながら累計発行部数が47万部を超える大ベストセラーとなっています。
- 著者
- 呉座 勇一
- 出版日
- 2016-10-19
2016年に刊行された、歴史学者の呉座勇一の作品です。
奈良の興福寺の僧侶である経覚と尋尊の日記を読み解き、2人の視点で話が進んでいきます。当時の幕府は、公家、武家、寺社という3つの勢力が争いながらも相補的な関係をもっていたため、奈良にいる僧侶たちも政治に深く関わっていたのです。
登場人物が膨大で、なおかつ長く戦が続いたために政権の移動も複雑。しかしそれを同時代を生きる人の目で読み解くという構成のうまさゆえ、最後まで飽きずに読ませてくれるでしょう。当時の貴族や武士、民衆が何を考え、どのように生きていたのかも理解することができます。
明治維新から、ポスト平成という未来に向けた歴史観の問題まで、第一線で活躍する14人の研究者たちの講義をまとめた日本近代史の入門書です。
日本史学と政治学を中心に、令和となった現代の視点で語っているのが特徴。特定のイデオロギーに偏らないバランスの取れた仕上がりになっています。
- 著者
- ["山内昌之", "細谷雄一"]
- 出版日
- 2019-08-20
2015年からおよそ3年間、自民党内「歴史を学び未来を考える本部」でおこなわれた講義をもとに、歴史学者の山内昌之と国際政治学者の細谷雄一が編集した作品です。
世界史的に見た大日本帝国憲法の制定、東アジア史の分水嶺となった日清戦争、日本の軍事行動がヨーロッパの外交に多大な影響をもたらした日露戦争など、日本史と世界史を融合した視点が魅力的。
それぞれのトピックはコンパクトにまとめられているので、興味のある分野から読んでもよいでしょう。歴史を知ること、知識をつけることは、未来を考えるきっかけにもなるはずです。
アメリカの名門ハーバード大学では、世界を牽引するリーダーを育てるために、日本史の授業があります。
教授たちはどのように日本史を教え、生徒たちは何を学びとっているのでしょうか。
- 著者
- ["佐藤 智恵", "アンドルー・ゴードン", "デビッド・ハウエル", "アルバート・クレイグ", "イアン・ジャレッド・ミラー", "エズラ・ヴォーゲル", "ジェフリー・ジョーンズ", "サンドラ・サッチャー", "テオドル・ベスター", "ジョセフ・ナイ", "アマルティア・セン"]
- 出版日
- 2017-10-05
2017年に刊行された、佐藤智恵の作品。ハーバード大学の教授10人にインタビューをしています。
ほぼ単一民族で2000年以上の歴史をもち、敗戦から奇跡の経済発展を遂げた日本。世界に与えた歴史的影響にはじまり、聖徳太子の十七条憲法、昭和天皇のリーダーシップ、武士道や和食の奥深さなど、日本人が気付いていない魅力を教えてくれるユニークな内容です。アメリカからの評価を知ることで、日本の強みも弱みも再発見できるでしょう。
平易な文章で読みやすく、学生にも社会人にもおすすめの一冊です。
「歴史認識」という言葉が一般的に使われるようになったのは、日韓関係や日中関係の問題が報道されるようになってから。
本書は、なぜ歴史認識に違いが生じてしまうのか、一致させることはできないのかを解説した作品です。
- 著者
- 大沼 保昭
- 出版日
- 2015-07-24
2015年に刊行された、国際法学者の大沼保昭と、ジャーナリストの江川紹子の対談本です。「アジア女性基金」の理事を務めるなど実践的に歴史認識問題に取り組んできた大沼に、江川が鋭い切り口で意見をぶつけていきます。
東京裁判、サンフランシスコ平和条約、靖国問題、従軍慰安婦問題などの歴史的「事実」が、歴史「認識」に転換していく過程は興味深いもの。冷静な分析で読みやすく、わかりやすくまとまっているので、日本近代史を学びたい方におすすめです。