ねこ×ラグビーで『ラガーにゃん』て、ずっこくない!?【山本裕子】

ねこ×ラグビーで『ラガーにゃん』て、ずっこくない!?【山本裕子】

更新:2021.4.5

もしあなたが、ねこ好き、あるいはラグビー初心者ならば『ラガーにゃん』を、ミスターラグビー平尾誠二好き、あるいはiPS細胞好きならば『友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」』を、強くオススメするものであります。

山本裕子プロフィール画像
俳優
山本裕子
劇団・青年団所属。1974年、三重県生まれ。京都大学法学部卒。ドラマ『踊る大捜査線』にはまり、警察官僚を目指すか、このまま司法試験に向け勉強を続けるか、散々迷った末、勢い余って俳優になる。現在長野県在住。四歳の男児持ち。「トマト農家の嫁」と「俳優」二足の草鞋を履く。 【出演情報】 映画「シスターフッド」 監督:西原孝至 アップリンク吉祥寺にて特集上映 2020年1月4日(土)19:50の回 https://joji.uplink.co.jp/movie/2019/4221
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この抜群に外したタイミングで大変申し訳ないのですが、あれですね、ラグビーって、えらい面白いっすね。

スポーツ観戦、というよりむしろ、格闘技とか、重機のぶつかり合い見てるみたいで。

どどどどど! どがんっ! ぶわしっ! ずばんっ! どごおっ!

みたいなね。効果音が、全部濁音。マンガでいうなら『魁!男塾』級の暑苦しさです。

大きいひとたちがドカドカ集まって、スクラム組む様子は往年の特撮映画さながら。どこからかガシーンガシーンと聞こえてくるのはあれは空耳ですか。

そんな怪獣大戦争の中、ちっちゃいひとがくるくる動いて、的確なパス回しででかいひと翻弄するのも楽しいし、足早い人がぴゅーっとボール持って走っちゃうのも痛快。

あっちもこっちも怪獣同士はくんずほぐれつ。あんなでかいラグビーボールが、小さすぎて見えなアアアい!!

しかも、会場で生で見てるならともかく、テレビ中継でこれほど観客をのせるなんて。

肉と肉のぶつかり合いが、ヒトの原始的本能を刺激するのでしょうか。ようわからん。

ゴールライン際の攻防、モールでおしくらまんじゅうわっしょいわっしょいしてるの見ると、こっちもつい参加してる気になっちゃって。押せやァァ! どかんか、ボケェェ~~!

このように、にわかもにわか、初心者極まるわたしですが、ラグビーワールドカップ日本大会2019、大変楽しませていただきました。ありがとうございました。

大会中は、日本の快進撃もあり、テレビでも連日報道。ラグビーのルール解説や、選手たちの紹介、これまでの日本ラグビーの歴史などなど、知るとより興味がわいて、より楽しめるわけですが、そこへぜひこの1冊を投入したい。いまさらですけど!

ラガーにゃん 1 猫でもわかるラグビー入門[初級編]

著者
そにしけんじ
出版日
2019-01-17

猫でもわかる。なんて心強い。

ラグビーワールドカップを222(ニャ~ニャ~ニャ~)倍楽しむ必読まんが
猫好きラガーマン 福岡堅樹選手も太鼓判!
「モフモフな猫たちに癒されながら、
 ラグビーの基礎知識が身につく画期的な1冊。
 ワールドカップ観戦のおともにお薦めです!」
(以上、帯より抜粋)

ねこだっこしてニコニコのこのひとは……あー、めっちゃ足早い人。東京五輪で引退して、お医者になる言うてるひとやん。

どこからともなく集まってきた15匹のネコに、ラグビーのルールを1つずつ教えていくマンガ10コマと、ルールや用語の解説・説明が2つ。これで1セット。65回分を収録。

この解説担当、誰だと思いますか。元・日本代表チームキャプテンの廣瀬俊朗さんですよ。ドラマで性格悪いラガーマンの役やってたあのひとですよ。ラグビー解説でここんとこしょっちゅうテレビにも登場、ドラマとまったく違うナイスガイっぷりをにこにこ発揮してた、あのひとですよ!

福岡堅樹に廣瀬俊朗。作者のそにしけんじさんも高校でラグビーやってて、県の代表候補になったそうな。なにその布陣。なんだかマジな本ぽいでしょ。

でも、教える相手がねこなので。

そりゃまあ、なんせ、やっぱどうしたって、かわいくなりますわな。

もう、ずっこいですよ。ごついラグビーに、かわいいもふもふの毛のかたまりぶつけるミスマッチ。ぜってー、かわいいじゃん!

ラグビーボール両手で抱えたら、ボール大きいから前が見えなくて、あらぬ方向へ行っちゃったり。

ねこだけに反射神経すごいけど、スクラム組むとふわふわあったかくて、みんなスースー寝ちゃったり。

ゴールポストに登って、降りられなくなっちゃったり。

きゅーん、かわゆす。声、1オクターブ上がるわ。

トトト、と走って、ニャーニャー、とラックつくって、ちゃいっ、とボール出して、ぺらんぺらんぺらん、と前足をなめるのです。

男塾との、効果音の差をお楽しみください。

これ、週刊誌「女性自身」での連載をまとめたものです。意外や意外、女性自身。

美容院とか病院の待合室とかに絶対置いてあるアレでしょ。表紙中が見出しだらけで目がチカチカするやつ。電車の中吊り広告ですらチカチカするやつ。

ほえ~、あんなおそろしげな雑誌に、こんなほんわかしたねこたちが~。ねこ、すげえ。どこにでもするりと入り込めるそのオールマイティさよ。

連載が始まったのが2017年。ラグビーから最も遠く離れた読者層に、みんな大好きニャンコの緩衝材を挟むことで、2年かけてラグビーをじわじわ浸透させていくとは。忍者でいうところの草。なかなかの策士。

いっちょまえにおそろいの赤白しましまラガーシャツきたネコ15匹のラガーにゃんズと、彼らにラグビーを教えるレフリー、立川さん(人間)。

立川さんの指導を手伝うナイスガイたち、ラガーマンズ(人間)。

ラガーにゃんズのともだちの黒ネコ15匹、黒猫ラガーにゃんズ。

コレ読むと、屈強きわまりないニュージーランドのオールブラックスも、にゃんこに見えてくるってなもんです。

この続編、上記2チームの他、スコティッシュフォールズ、ペルシャーズ、ロシアンブルーズ、バーマンズ、など個性豊かな猫チームが登場する

『ラガーにゃん 2 猫ラグビーワールドカップ編』もあわせてどうぞ。

友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」

著者
山中 伸弥
出版日
2017-10-04

2016年に53才で亡くなった、伝説のラグビー選手平尾誠二と、iPS細胞でおなじみ、ノーベル生理学・医学賞受賞者山中伸弥との、交流をふりかえった本。

ガンが見つかってからの闘病の1年を、第1章で山中教授が、第2章で平尾さんの奥さんの惠子さんがそれぞれの視点から語り、第3章では山中さんと平尾さんの出会いのきっかけである2010年「週刊現代」の対談を、未公開部分含めて掲載しています。

畑違いの第一人者同士の交流バナシってね、だいたい面白いじゃないですか。それぞれが、それぞれの経験から、独特のモノの見方で話してるんだけど、その抱えている問題には共通性があったりして。

この本も、その流れで、じつはかなり軽いキモチで読んだのですが、いや、大変面白かったです。

最後の一年、でわかるように、闘病記録でもあるので、決してへらへら笑って読めるものではないんですけど。

ガンとわかってすぐ入院することになり、「平尾さん、今の心境はいかがですか」と聞いたお医者への返答が。

「うーん、しゃああらへんわね。なってしまったんだから」

いやちょっと。どんだけ、かっこいいのか。

しかもそれが、かっこつける、とか、虚勢を張る、とか、諦め、とかじゃないところが。

それまでも平尾さんはよく、人生をラグビーに例えていたそうで。

ラグビーボールがどこに転がるかわからないように、人生でも予測不可能で理不尽なことがまま起こるけど、それをただ嘆くのではなく現実として受け入れて、むしろその中に面白みや希望を見出して、困難な状況を克服する、と。

ガン告知、しかもかなり末期というある意味極限の状況でも、やはり同じ見方をできるところが、もうほんとに。かっこよすぎて。泣くしか。

これで彫りの深い男前で、くしゃっと笑って愛嬌あって、実は細かく気配りできて、って、もう、どんだけ素敵やねんな。マンガやマンガ。架空の人物や。

そして、医療の最先端にいる山中教授の、治療方法を模索する必死さが。

読んで、どーんと落ち込む「悲しい」本ではなく、タイトルどおり大人2人の「友情」の話。あんたら、かっこええなあ!という本です。

ところで、本に直球ど真ん中「友情」と名付けてしまえるこの気恥ずかしさは……うーん、どうなんや?……あ、でもラグビーか……なるほど、そっか……うん、よし、オッケー。

このニュアンス、伝わりますか。ひどい言いぐさですか。でも、ラグビーの、ボールに向かうなりふり構わない感、かっこつけない感、に通じる気がして。

もちろん、わかってるんですよ。ラグビーが、ものっすごい頭使ってプレーしてる頭脳戦ってことは。スマート、を踏まえての、それでもなりふり構わない感に、ひとは感動する。

そしてそのスマートさは

どどどどど! どがんっ! ぶわしっ! ずばんっ! どごおっ!

で、うまいこと煙幕張られてる。いい意味で、泥臭い。そこがよい。

もっと言ってしまうと、あのー、ラグビー好きのひとに殴られること覚悟の上で、小さい声で言いますが。

ラグビーって時々「きれいごと臭」が漂うこと、ないですか。

あ、殴らないで。

試合が終われば、敵も味方もない! ノーサイド! とか。

ひとりはみんなのために!みんなはひ(以下略)! とか。

人々がみんな立ち去っても私、こーこにいるーわ~~ とか。

忍耐! 根性! 信頼! 友情!

汗! 泥! 涙! 絆!

もう、うっせーうっせー。週刊少年ジャンプ的神話の世界か。

そりゃアね、アタイだって、おとぎ話を信じたいわよ?でもサァ、世の中そんな善人ばっかじゃないじゃン?

歯を食いしばれ、だァ? イソップ、だァ? くいしん坊、ばんざい、だァ!?

善、を前面に出されると、うーん、なぜでしょう、こっちは必要以上にやさぐれるしか。五社英雄監督『肉体の門』の西川峰子(現・仁支川峰子)くらいのやさぐれです。

まったくラグビーに縁のなかった外側から見てるとですね、そのラガー世界のナイスガイ感とか、連帯感とか、信頼感とか、おおキミはラグビーをやっていたのかね、実はわたしも若い頃云々、よし気に入った、採用だ!的なね、理屈抜きの信頼、ラガーメンみな兄弟、みたいなさ、そういうの一切合切、うさんくさく感じちゃって。卑屈ですいませんね。

でもそんな言いがかりは、

どどどどど! どがんっ! ぶわしっ! ずばんっ! どごおっ!

で、怪獣たちにあっけなく踏みつぶされるのでした。男塾、ばんざい。

ではまた来月。

男塾も、少年ジャンプでしたね。

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