5分でわかる南北問題!背景、南南問題、解決策などをわかりやすく解説!

更新:2019.11.8

1960年代以降、先進国と発展途上国の格差をめぐって「南北問題」が国際的に注目されてきました。その後は「南南問題」という新た問題も生じています。この記事では、問題の背景、資源ナショナリズム、解決に向けて日本が果たすべき役割などをわかりやすく解説していきます。

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南北問題とは。意味や概要を簡単に解説

 

先進国と発展途上国の経済格差をめぐる問題を「南北問題」といいます。先進国の多くが北半球に、発展途上国の多くが南半球に存在していたことから、こう呼ばれるようになりました。

発展途上国とは、開発の水準が相対的に低く、経済的成長の途上にある国のこと。146の国と地域が該当するといわれています。

ただこのなかには、非常の貧しい国がある一方で、中国やロシアなど国際的に大きな影響力をもつ国、メキシコ、トルコ、韓国などG20やOECDに加盟している国、ブルネイ、クウェート、カタール、シンガポール、アラブ首長国連邦など一人当たりの国内総生産で世界トップ10に入る裕福な国なども含まれており、その定義については議論がされています。

「南北問題」という言葉自体は、1959年にイギリスのロイズ銀行会長だったオリヴァー・フランクスが講演をした際に用いられました。アメリカを中心とする西側世界と、ソ連を中心とする東側世界とのイデオロギー対立を指す「東西問題」と並ぶ国際的な課題として、南北の経済格差に触れたのです。

1960年代以降は、発展途上国の経済開発促進と、南北間の経済格差解消を目的とする取り組みが、国連を主な舞台にしておこなわれてきました。発展途上国自身も「G77(77ヶ国グループ)」と呼ばれるグループを形成し、国際社会における存在感を高めつつあります。

 

南北問題の背景は?

 

1960年代に広く用いられるようになった「南北問題」ですが、南北の経済格差自体はもっと昔から存在しています。その大きな背景となったのが、「国際分業」というものです。

1700年代後半からイギリスで起こった「産業革命」をきっかけに、ヨーロッパの経済は躍進。1800年代になると東アジアの日本や中国、朝鮮などを市場に取り込み、世界を統一的な視点で見る「世界経済」へと発展しました。

そのなかで、それぞれの国で安く生産できるものを多く生産し、輸出をしあう「国際分業」が拡大していきます。農業国、工業国などの分化が起こりました。その一環として、ヨーロッパの植民地となっていた地域では、単一の農作物を集中的に生産する「モノカルチャー経済」になかば強制的に転換されます。

当時は、生産性が労働力に左右されるような状況だったので、モノカルチャー経済でも十分な所得水準を確保できる場合もありました。2度の世界大戦の影響でヨーロッパが荒廃すると、戦場にならなかったアフリカや南米諸国のなかには、ヨーロッパよりも経済的に裕福な国もあったほどです。

しかし第二次世界大戦後に技術革新が起こり、工業国の生産性が飛躍的に高まると、その需要は激減します。

ドイツや日本などの工業国が工業品の輸出で発展。またアメリカやフランスなどの農業大国も高い生産性を背景に安い農作物を大量に輸出して発展。モノカルチャー経済に依存する旧植民地は、経済的に大きく出遅れるのです。

さらに単一の農作物を集中的に生産することのみに特化し、社会構造もそれに順応するよう構成されていたため、構造転換を容易に進めることができず、格差が固定化する原因になりました。

 

南北問題に付随する南南問題とは?資源ナショナリズムも解説!

 

発展途上国といっても、その度合いは国によってさまざま。そのなかから経済的に発展する国も出てくるようになります。その一方で経済発展できず「後発開発途上国」と呼ばれる貧しい状態のままの国も多くあります。

このように、発展途上国の間でも経済格差が生まれている状況を、1980年代以降から「南南問題」というようになりました。

背景にあるのは、1950年代から1960年代にかけて国際情勢を大きく変化させた「資源ナショナリズム」だといわれています。

これは、南北問題への対策として進められたもので、自国の資源を自国で管理しようという考え方です。1960年にはイラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラなどの産油国が「OPEC(石油輸出国機構)」を設立し、1962年には国連でも「天然資源に対する恒久主権の権利」が宣言されるなど、資源国の権利を保護するための組織や取り決めが相次いで実現します。

対象は石油だけに留まらず、銅、ボーキサイト、鉄、天然ゴムなどでも同様の仕組みが整えられ、資源国が経済発展するための基盤が整えられました。

しかし「資源ナショナリズム」は、資源をもつ国は経済発展できる一方で、資源をもたない国や、資源があったとしても海底などに限られていて採掘コストがかかってしまう国などでは開発が進まず、経済を発展させることができません。このようにして、発展途上国のなかの資源国と非資源国との間で経済格差が広がり、「南南問題」といわれるようになったのです。

1980年代以降は、資源の有無に関わらず、メキシコ、ブラジル、インド、中国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、トルコなどの国が外資の受け入れや人件費の安さを起爆剤として経済発展を遂げ、「NIEs(新興工業国)」と呼ばれるまでに成長する例が相次ぎます。

なかでもブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5ヶ国は2000年代以降世界経済全体をも牽引する大幅な経済発展を遂げていて、頭文字をとって「BRICS」と呼ばれ、存在感を高めています。

その一方で、政情不安などが原因で外資の導入が進まず、ミャンマーやパキスタン、バングラデシュ、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国は経済発展を遂げられずにいるのが現状です。

 

南北問題の解決に向けた日本の役割とは

 

1963年、南北問題を解決するために、「UNCTAD(国際連合貿易開発会議)」が設立されました。1960年代を「国連開発の十年」として、発展途上国の経済成長率を向上させることを目標とする戦略が練られます。

またアメリカの「アメリカ合衆国国際開発庁」、フランスの「経済協力中央金庫」、イギリスの「海外開発省」、日本の「海外経済協力基金」など、先進国の間でも国際援助を目的とする組織が相次いで設立されました。

さらに「OECD(経済協力開発機構)」「UNDP(国際連合開発計画)」「UNIDO(国際連合工業開発機関)」などの国際機関も設立。これらは資金の貸し付けを通じて発展途上国の工業化に尽力し、韓国、台湾、マレーシア、メキシコ、ブラジルなどが工業国として発展するきっかけになっています。

1970年の国連総会では、「ODA」と呼ばれる先進国による発展途上国への支援が、GNPの0.7%とすることが定められました。国際援助に対する具体的な数値目標が定められたことは、画期的な出来事でした。

しかしこれらのたび重なる援助の結果、1980年代になると発展途上国は重債務に陥り、元利返済に苦しむようになります。アフリカや中南米の国々ではハイパーインフレが頻発し、国民の生活に混乱をきたすようになりました。

もともと先進国による発展途上国への援助は、善意のみで成り立っていたわけではありません。東西冷戦下という国際状況で、多くの票数をもつ発展途上国に自陣営を支持してもらう見返りの意味合いも強かったのです。1990年代に入って東西冷戦が終結すると、先進国からのODAは激減していきました。

そんななかで、アメリカやヨーロッパ諸国に代わる「世界最大の援助国」となったのが日本です。1990年代の10年間で90億ドルの援助をしました。

1993年には、国連、国連開発計画、アフリカ連合委員会、世界銀行と共同で「TICAD(アフリカ開発会議)」を立ち上げ、アフリカの開発をテーマとする国際会議を開いています。

その後は、2001年9月11日の「アメリカ同時多発テロ」をきっかけに貧困がテロの原因になっているという考えが広がり、各国もODA予算を拡大。一方で経済の低迷が続く日本の予算は徐々に縮小し、2018年の実績は世界第4位です。

欧米先進国による援助は「魚を与える」とたとえられるように、即物的ですぐに高い効果を発揮するものの、援助が断たれれば苦しい生活に戻ってしまうものが大半。これは発展途上国を援助国に依存させ、国連などの場で援助国を支持させるための方法で、新植民地主義の一種だと批判されています。

一方で日本の援助は、「魚のとり方を教える」とたとえられ、派手さはないものの、1度現地に根付けば継続的に効果を発揮し続けるもの。仮に援助が途絶えたとしても、発展途上国自身で自立できるのが特徴です。南北問題や南南問題を解決するために日本が果たしている役割は、発展途上国からも高い評価を受けています。

 

入門書としておすすめの一冊

著者
室井 義雄
出版日
1997-07-01

 

アフリカの地図を見てみると、国境線の多くが直線で構成されているのがわかります。ヨーロッパ列強の植民地として、民族とは関わりなく国境線を定められたためです。その後グローバル化が進むなかで、国際分業の名のもとに単一産品に依存するモノカルチャー経済を強いられたことが、南北問題の大きな原因になりました。

本書は、なぜ貧しい暮らしを強いられる状況になったのか、そして今後どうすればその状況から脱することができるのかを考えるための作品です。ODAなど先進国による支援も含め、多くの事例をあげながら南北問題、南南問題を解説してくれています。

80ページほどのボリュームで読みやすく、入門として最適の一冊です。

 

複雑化する「新・南北問題」を読み解く一冊

著者
猪俣 哲史
出版日
2019-07-02

 

産業革命によって始まった国際分業は、現在さらに深化し「グローバル・バリューチェーン」を形成しています。これは、業務の流れをタスク単位で細分化し、効率化を目指すもの。たとえば完成品がアメリカ企業の製品だとしても、日本製の材料をもとに韓国で部品を作り、台湾で組み立てる……などの国際分業が当たり前になっているのです。

これに付随して、完成品の価値がどの段階で生み出されたものなのかを膨大なデータを用いて調べる「グローバル・バリューチェーン分析」という手法が生み出されました。本書は、この手法をもとにして、「米中貿易戦争」や「第4次産業革命」など世界規模で起こっている出来事を解き明かそうと試みようとしているのです。

そこで浮かび上がってきたのが、南北問題、南南問題に続く「新・南北問題」でした。発展途上国に最新鋭の工場が作られても現地にお金は落ちず、さらには先進国で失業者も増えるというものです。

数式はほとんど使わず図説を多用して、ビジュアルで理解しやすいのが魅力的。複雑化する国際経済を読み解くための、助けになる一冊です。

 

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