冬といえば何を思い浮かべますか?冷たい空気、クリスマス、大雪……恋愛小説ともミステリーとも相性がよさそうな季節です。この記事では、冬をテーマにしたおすすめの小説をご紹介。国内外の名作を集めたので、ぜひチェックしてみてください。
寒い日にひっそりと生まれた「雪のひとひら」。空から地上に舞い降りた彼女は、雪で楽しく遊ぶ子どもたちや、夫となる「雨のしずく」と出会います。
冬には雪として過ごし、春には溶けて川を流れる彼女の旅。そして最期を迎えた時、自分の人生の意味を見出すのです。
- 著者
- ポール ギャリコ
- 出版日
- 2008-11-27
アメリカの作家、ポール・ギャリコの代表作です。日本では1975年に翻訳出版されました。
主人公の「雪のひとひら」は、自分が生まれた理由を考え、出会った人々を愛し、試練も幸福も味わいながら旅をします。子どもたちが自分を雪だるまにしてしまった時はその息苦しさに傷つきますが、やがて町の人々が雪だるまを見て笑顔になっているのを知ると、「わたしはこのために生まれてきたのかもしれない」と思うようになるのです。
この世に生を受け、さまざまなことを経験しながら自分の生きる意味を考え、愛する人と出会い、子どもを産み、夫に先立たれ、やがて自分も死んでいく……まるでひとりの女性の人生を表しているようです。
物語自体は短いものの、なんといっても卓越した比喩表現と深みが素晴らしく、読後に深い余韻をもたらしてくれる一冊です。
7歳の少女、飛鳥は、養子先でのいじめに耐えかねて家を抜け出しました。そんな彼女に偶然声をかけたのは、2年前に迷子になった時に施設に送り届けてくれた青年、裕也です。
彼と暮らすことになり、飛鳥の孤独な心は少しずつほぐれていくのですが、そこに殺人事件が絡んできて……。
- 著者
- 佐々木 丸美
- 出版日
1975年に刊行された佐々木丸美の作品です。孤独な少女の心情と、彼女と一緒に暮らすことになった青年の葛藤を繊細な筆致で描いています。ライト文芸として有名な『ビブリア古書堂の事件手帖』の作中で本作が取り上げられたこともあり、古い作品ながら再注目されました。
主人公の飛鳥は、幼いながらもかなり頑固な性格をしていて、彼女の言動からは不器用さが垣間見えます。それが飛鳥のなかにある闇を映し出しているようにも見え、その生い立ちの切なさに胸が締め付けられるでしょう。物語の舞台が北海道で、雪の情景と彼女が纏うほの暗さが見事にマッチしています。
一方で裕也は、飛鳥への淡い想いと疑似的な親子関係との間で葛藤することになるのです。2人に幸せな未来は訪れるのでしょうか。
劇団「水許」のオーディションに合格した7人の男女が、とある高原のペンションに集められました。3泊4日をここで過ごしながら舞台稽古をするとのことですが、その設定は「大雪で孤立した山荘でおこなわれる殺人劇」とのこと。
7人は言われるがままに芝居をしていくのですが、殺される設定のメンバーが姿を消すうちに、ある疑念を抱くようになるのです。これは本当に、芝居なのでしょうか……。
- 著者
- 東野 圭吾
- 出版日
- 1996-01-11
1992年に刊行された東野圭吾の作品です。
「大雪で外部から孤立した山荘で殺人事件が起こる」というのは、いまやミステリーでは珍しくありませんが、本作は「大雪で外部から孤立した山荘で殺人事件が起こるという設定」で芝居をするというもの。現実と芝居が交錯し、独特の緊張感を保っています。
最後まで、本当に殺人が起きているのかすらわからず、それゆえに犯人も動機も予想がつかないというもの。それなのに、ラストに判明する叙述トリックですべて納得できるという、脱帽の一冊です。
雪が降る冬のある日。いつものように登校した8人の高校生は、異様な雰囲気に気付きます。自分たち以外、生徒はおろか教師も学校にいません。しかも出口がすべて施錠され、電話もつながらず、時計は5時53分で止まっています。
そして8人は、自分たちのとある共通点を見つけました。彼らはひとりの生徒が自殺をした学園祭で、準備を担当していたクラス委員だったのです。それなのに、自殺をした生徒の名前を、誰ひとり思い出すことができません。
- 著者
- 辻村 深月
- 出版日
- 2007-08-11
2004年に刊行された辻村深月のデビュー作。「メフィスト賞」を受賞しています。
8人の生徒が閉じ込められた高校では、2ヶ月前の学園祭で、最終日にある生徒が自殺をするという事件がありました。彼らは、自分たちが閉じ込められたのは誰かの精神世界で、自殺をした生徒の名前を思い出すことができれば解放されるのではと仮説を立てます。
誰の精神世界なのか、8人のなかに自殺をした本人がいるのか……謎を解いていくうちに、それぞれが抱いている心の闇が明らかになっていくのです。
練りに練った設定と、等身大の高校生の心の弱さを用いた展開が見事な大作。「自殺」という重たいテーマを扱ってはいますが、ラストには救いも感じることができる一冊です。
「スクルージ&マーレイ商会」を営む老人、スクルージは、金の亡者。金儲けのことだけを考えて、思いやりはまったくありません。7年前に共同経営をしていたマーレイが亡くなった時も、お布施を包むのを渋ったほどです。
クリスマスイブの夜、そんな彼の目の前に、マーレイの亡霊が現れます。そして、これからスクルージの生き方を変えるために3人の幽霊がやってくると告げました。
- 著者
- ディケンズ
- 出版日
- 2011-12-02
1843年に刊行されたイギリスの小説家チャールズ・ディケンズの作品。彼の代表作でもあり、冬に読みたい定番の小説として世界中で愛されています。
スクルージの前に現れたマーレイの幽霊は、鎖にまみれた姿でした。彼いわく、それは生前犯した罪によるものだそう。私利私欲にまみれた人生を送るとどれほど悲惨な運命を迎えるかということを諭されたスクルージは、3人の幽霊に連れられて、過去、現在、未来の自分の姿を見ることになるのです。
クリスマスイブの奇跡を経て変わっていく、老人の心を描いた優しい作品。プレゼントにもおすすめです。
冬の一大イベント、クリスマス。デコレーションに、パーティーに、プレゼントにと大忙しです。準備にかかる費用も馬鹿になりません。
それならば……と会計士のルーサーは決意します。妻と2人で、クリスマスの時期にカリブ海にクルーズ旅行に行くことにしたのです。
しかし、街の人々はそんなことを許しません。街で一丸となっておこなうデコレーションは?恒例のパーティーは?非難の嵐が襲いかかります。そして出発の時が近づいたクリスマスイブの朝、事件が起きてしまいました。
- 著者
- ジョン グリシャム
- 出版日
- 2005-11-05
2001年に刊行されたアメリカの小説家ジョン・グリシャムの作品。グリシャムは法廷ものの巨匠として知られていますが、本作は心あたたまるドタバタコメディになっています。
アメリカで暮らす人々にとって、クリスマスは1年のなかでもかなり重大なイベントなのでしょう。たくさんのお金と時間をかけて楽しむのですが、そんなクリスマスをボイコットしようとする夫婦に対しては、あらゆる手段で妨害をします。
ついつい笑ってしまうような怒涛の展開が続き、一気読み必至。ラストにはちょっぴり泣ける、冬におすすめの一冊です。