大河小説とは?意味や歴史、日本と海外のおすすめ名作を紹介!

更新:2019.11.17 作成:2019.11.17

一個人の人生や団体の歴史などを通じて、社会の流れを描いた「大河小説」。日本にも海外にも、超大作がそろっています。この記事では、絶対に読んでおきたい5作をご紹介。ぜひチェックしてみてください。

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大河小説とは。意味や歴史を解説

 

一個人の人生や団体の歴史などを通じて、社会の流れを描いた小説を「大河小説」といいます。その性質から超長編になることが多く、社会性と読みごたえが最大の魅力だといえるでしょう。

大河小説の歴史は、20世紀前半のフランスで始まります。1903年から1912年にかけて発表された長編小説『ジャン・クリストフ』を、作者のロマン・ロランが「大河」にたとえたことから、名付けられました。

以降、同様の小説が執筆され、プルーストの『失われた時を求めて』、ロジェ・マルタン・デュ・ガールの『チボー家の人々』などが代表作として知られています。

ではここからは、日本と海外の読んでおきたい大河小説の名作を紹介していきます。

大河小説の先駆け『ジャン・クリストフ』【海外】

 

ドイツのライン川流域で生まれたジャン・クリストフ。父親は宮廷音楽家で、彼も音楽家になるために幼少期から厳しい練習をしていました。

その後は父親の死によって家を失ったり、極貧生活を経験したり、恋愛に悩んだりと、傷つきながらも成長していきます。

音楽家として職を得た後も、誠実ゆえに周りから反感を買い、彼の行動が多くの人に影響を与えることに。孤独のなかで真実を追い求めますが、やがてドイツを追われることになってしまいました……。

著者
ロマン・ロラン
出版日
1986-06-16

 

大河小説の由来になった、フランスの作家ロマン・ロランの作品です。1903年から1912年という長期間、雑誌上で連載されていました。

ドイツに生まれた音楽家ジャン・クリストフの生涯を中心に、彼を取り巻く環境と、当時のヨーロッパ社会を描いた大河小説です。

主人公の音楽家としての情熱や才能、そして何度も苦悩にぶつかりながらも闘い続ける姿に、胸打たれるでしょう。ひとりの人間を丁寧に追っていくことで、その波乱万丈な人生を読者も追体験できるのです。

文庫本で全4冊と長編ですが、大河小説を語る際には外すことのできない作品になっています。

大河小説の代表的作品『失われた時を求めて』【海外】

 

ある寒い日に紅茶に浸したマドレーヌを食べたことから、深い記憶の海に引きずり込まれる「私」。幼少期の時に、コンブレーという田舎町にいた叔母がいれたお茶と同じ味がしたからです。

「全コンブレーとその近郷、形態をそなえ堅牢性をもつそうしたすべてが、町も庭もともに、私の一杯の紅茶から出てきた」(『失われた時を求めて』(1)より引用)

そこから、コンブレーの自然情景や人々について語りはじめます。

著者
プルースト
出版日
2010-11-17

 

フランスの作家マルセル・プルーストの作品です。プルーストは半生をかけて本作を執筆し、1913年に第1篇が刊行され、1927年に第7篇で完結しました。

ストーリーらしいストーリーはほとんどなく、「私」の回想で物語が進んでいきます。時間と記憶、同性愛、芸術、社交界、親しい人の死、ユダヤ人など、根幹には重層的なテーマが潜んでいて、これらをとおして19世紀後半から20世紀前半の社会の様子を描いた大河小説です。

フランス語の原文で3000ページ以上、日本語訳では400字詰め原稿用紙1万枚以上という超長編小説ですが、一生のうちで1度は挑戦したい作品でしょう。

第一次世界大戦前の社会を描いた大河小説『チボー家の人々』【海外】

 

カトリック教徒で裕福なチボー家の2人の息子、アントワーヌとジャック、そしてジャックの友人でプロテスタントのダニエルは、それぞれ三者三様の思春期を過ごし、成長していきます。

アントワーヌは将来有望な医者となって堅実に生き、ジャックはブルジョアの父親に反抗して理想を追いかけ、ダニエルは自由な享楽家として大人になりました。しかし、彼らの前には第一世界大戦の存在があり……。

著者
ロジェ・マルタン・デュ・ガール
出版日

 

フランスの作家ロジェ・マルタン・デュ・ガールの作品。チボー家に関わる3人の青年の姿を通して、第一次世界大戦前のヨーロッパ社会や思想を描いた大河小説です。

3人はそれぞれ第一次世界大戦に巻き込まれていくことになり、これが物語の大きな転換点となっています。医師であるアントワーヌは歴史の流れに左右される一市民として、ジャックは反戦を掲げる革命家として、そしてダニエルも戦争によって傷つくのです。

やがて没落していく彼らの姿から、戦争の悲惨さを感じ取ることができるでしょう。

里子に出された孤独な少年が成長していく物語『次郎物語』【日本】

 

本田家の2人目の息子として生まれた次郎は、幼いころから里子に出され、実の母よりも里親であるお浜に懐いていました。

やがて実家に戻ることになるのですが、祖母から他の兄弟と比べてあからさまに差別的な扱いを受け、実家は彼にとって居心地の悪い場所でした。それでも父や祖父が見守るなか成長していくのですが、さらなる苦難が待ち受けていて……。

著者
下村 湖人
出版日
1987-06-29

 

1947年から1979年にかけて刊行された下村湖人の作品。里子に出されていた次郎が実家に戻ってきてからの姿を通して、当時の社会状況や文化を知ることができる大河小説です。続編が予定されていたものの、作者の下村が亡くなってしまったため、全5部で未完の作となっています。

第3部までは次郎の成長をストーリーの軸ですが、第4部、第5部は「五・一五事件」や「二・二六事件」など軍国主義にはしる社会の姿が軸となり、より大河小説らしさを感じられるでしょう。

現代を代表するおすすめ大河小説『みかづき』【日本】

 

時は1960年代の日本。小学校で用務員をしていた大島吾郎は、放課後の時間を使って生徒に勉強を教えていました。用務員でありながら教育の才能に恵まれていた彼を見込んで、ある生徒の母親が塾の経営を持ち掛けます。

彼女と一緒に塾を開くことに決めたことが、その後の大島家の運命を変えることになるのです。

著者
森 絵都
出版日
2018-11-20

 

2016年に刊行された森絵都の作品。「本屋大賞」2位、「中央公論文芸賞」を受賞しました。大島家の塾の経営をとおして、教育の在り方や社会の変化を感じることができる大河小説です。

本作で描かれているのは、吾郎をはじめとする大島家3世代の歴史と、塾の形の変化。現代では当たり前の存在となった塾ですが、当時は公教育、つまり学校の教育が1番で、大島の行動は疎まれていました。その後も国の方針に大きな影響を受けながら、今度は同業者との争いに巻き込まれていきます。

世代によって話し手が交代していくことで、時代の流れを感じることのできる作品です。

大河小説は、ひとりの人間の人生を追ったものや、歴史を語ったものなどさまざまなテーマがあります。社会の流れを知ることができ、教養としても役立つでしょう。