子ども向け教育番組の明るく爽やかな世界に、大人の闇をこれでもかと詰め込んだ本作。登場人物がさらけ出す生々しいブラックな一面に多くの読者が共感し、SNSで大きな話題となりました。ギャグ漫画ですが、笑えるだけでなく、なぜだか自分も頑張ろうと思える力が湧いてくるような作品です。 この記事では、2021年7月よりテレビアニメが放送決定となった本作の魅力について、キャラクター1人1人のエピソードとともにご紹介します。
教育番組「ママンとトゥギャザー」で体操のお兄さんを担当する表田裏道(おもたうらみち)は、31歳で爽やかなルックスの元体操選手。しかし情緒不安定で、時折垣間見せる「大人の闇」に、子どもたちをいつもドン引きさせています。
さらにこの番組、うらみちお兄さんだけでなく、歌のお姉さんや歌のお兄さんなど、他の出演者も何らかの闇を抱えているようで……。
そんな闇深い本作の魅力は、ブラックで、どこか人生の真理を突いているような会話。大人になったかつての「よい子」たちへ送られる、悲哀たっぷりの人生讃歌となっています。
本作は久世岳が著する漫画作品で、教育番組の爽やかさとブラックユーモアとのギャップや、主人公・うらみちお兄さんのキャラクターが大きな反響を呼びました。
原作者である久世岳は、「アニメならではの演出に加え、オリジナルエピソードも交えているので、原作を知っている方でも楽しむことができます」とコメント。
神谷浩史や宮野真守などの超豪華声優陣でのアニメ化ということで、数多くのファンが期待の声を寄せています。
詳細はアニメ公式サイト、または告知動画でご覧ください。
本作は子ども向け教育番組を舞台に、大人たちが己の闇をさらけ出しまくる、現代社会に生きる人々の悲哀がたっぷり詰まったブラックコメディ漫画です。
本作に登場する大人たちは、主人公のうらみちお兄さんをはじめ何かしらブラックな一面を抱えており、番組収録中に大人の闇をさらけ出すこともしばしば。数々の闇に満ちた発言には、生々しくて突き刺さるものがあり、読んでいて共感できる分だけ、心が痛くなります……。
しかし、そんな彼らも番組収録中は、体操のお兄さんや歌のお兄さん、お姉さんとして子どもたちに笑顔を振りまき、番組の明るく爽やかな雰囲気を精一杯作っています。
制作スタッフの無茶振りにも耐え、メンタルの不調にも負けず、「裏の顔」を子どもたちに隠しつつ頑張る彼ら。その姿に同じように「社会人」として生き抜いている読者も自然と励まされるでしょう。
現代社会に生きる人々に送る応援メッセージがたくさん込められた本作。大人として頑張ることに少し疲れた人にぜひ読んでほしい作品です。
本作の主人公・表田裏道は、教育番組「ママンとトゥギャザー」で体操のお兄さんを担当する31歳の男性。アニメでは神谷浩史が声優を務めます。
もともと体操選手で、怪我で引退したのをきっかけにテレビの世界に入りました。本来は純粋で前向きな性格でした。しかし先の見えない仕事への焦燥感や、うだつの上がらない日常生活で疲れ果てた結果、裏表の激しい情緒不安定な性格に。
見た目は爽やかな青年ですが、笑顔がうさん臭く、どこか恐ろしさを感じさせます……。
- 著者
- 久世 岳
- 出版日
- 2017-09-27
壊れて?しまった彼は、一旦裏の顔が入ると、子どもたちの前でもおかまいなし。素の部分をさらけ出し、大人のブラックな事情を語っては子どもたちをドン引きさせています。
ただ、プロデューサーの指示で1人だけ雑な扱いを受けることも多いのでかわいそうにも思える人物。そのたびにぶつけようのないやるせなさを感じているようです。
しかしここまでなってしまった理由は、真面目ゆえだと思わせる部分もあります。辛くとも子どもたちの前で笑顔を崩さないよう踏ん張ったり、仲間や後輩を気遣ったり、健気な優しさも持っているのです。素の部分を出している時でも、しっかり子どもたちのことを考えており、子どもたちに現代社会を生きる上でのアドバイスを送っています。
うらみちお兄さんの不器用ながらも懸命に生きる「大人の姿」に、思わずエールを送りたくなるでしょう。
兎原跳吉(うさはらとびきち)は、「ママンとトゥギャザー」でウサギのマスコット「ウサオ」の中の人を担当する28歳の男性。アニメでは杉田智和が声優を務めます。
ギャンブルとガールズバーで遊ぶのが大好きで、仕事仲間からの借金を踏み倒すようなダメ人間です。一方で自身の軽い性格や個性の薄さをコンプレックスに感じているところがあり、先輩であるうらみちお兄さんに酒の席で「面白くなってモテたい」と吐露したことも。
うらみちお兄さんからはしょっちゅう八つ当たりされていますが、日に日に擦り減っていく彼の姿を見て、何も言えない様子。兎原がうらみちお兄さんをいじることもありますが、そのたびに本気でキレられています。
作中では不憫な役回りが多い彼。自業自得なことも多いですが、うらみちお兄さんとの絡みでは、よく熊谷に裏切られて矢面に立たされています。
熊谷みつ夫(くまたにみつお)は、「ママンとトゥギャザー」でクマのマスコット「クマオ」の中の人を担当する28歳の男性。アニメでは中村悠一が声優を務めています。
相方の兎原とは対照的にクールな人物で、兎原に任せて自分だけちゃっかり逃げるずるい一面も。世渡り上手で、保身のためには平気で嘘を吐き兎原を裏切ります。
しかし、酒が飲めない同僚をプロデューサーの絡み酒から守ったり、姪へのプレゼントに悩むうらみちお兄さんにアドバイスしたり、仲間思いで優しい一面も見せています。
また、不器用な性格だというのも憎めないところ。現代社会の闇に染まりたくないという思いから、社会に対する鬱屈を抱えています。クールな態度の中に、若者らしい青さをあわせ持つ人物です。
蛇賀池照(だがいけてる)は、「ママンとトゥギャザー」で歌のお兄さんを担当する27歳の男性。アニメでは宮野真守が声優を務めています。
元ミュージカル俳優で、高い歌唱力と美声を持つイケメンです。しかし実は低いレベルの下ネタが大好きで、「チン」が入る言葉には無差別に笑ってしまいます。一度ツボるとなかなか抜け出せず、1人で笑い続けています。
それだけでなく行間も空気も読めず、さらにはアナログ時計も読めないというかなり残念な性格。なぜかというと頭の中は常におにぎりのことばかりだから。ぼーっとしており、人の話を聞いていないこともしょっちゅうなのです。
作中でもかなりエキセントリックな人物ですが、根はとても真面目で、周囲の期待に応えられないプレッシャーから酷くうろたえてしまうことも。
また、少年のような純粋な心を持っており、大人になっても神様やサンタの存在を信じています。いけてるお兄さんがサンタに感謝するエピソードには、思わず心が洗われることでしょう。
ただ、うらみちお兄さんをはじめ周囲の人たちも扱いに困るのか、いけてるお兄さんのことをしばしばスルーしています。悪い人物ではないのですが、ズレていて面倒くさい人物です。
多田野詩乃(ただのうたの)は、「ママンとトゥギャザー」で歌のお姉さんを担当する32歳の女性。アニメでは水樹奈々が声優を務めます。
元はアイドル歌手でしたが売れず、その後ものまね演歌歌手やナイトクラブのジャズシンガーを経て現在の職業に就きました。
売れないお笑い芸人の彼氏と6年同棲しており、なかなか結婚してくれない彼氏に焦燥感を抱いている様子。
結婚のことで心に深い闇を抱えているのも特徴。番組のお便りコーナーで「うらみちお兄さんといけてるお兄さんのどちらと結婚したいか」という質問が届いたときは、男選びの大切さを熱弁して泣き崩れていました。
少し情緒不安定な部分もありますが、作中では比較的、常識人。うらみちお兄さんやいけてるお兄さんが暴走した時はツッコミに回ります。面倒見のよい性格でもあり、何かと理不尽な目に遭ううらみちお兄さんのことを影で見守っています。
子供向け番組の爽やかさと、大人の世界のブラックさのアンバランスにハマるコメディ漫画。現代社会で生きることに疲れた人に読んでほしい作品です。