原作は「小説家になろう」発のライトノベルですが、コミカライズが2作品出ています。どう違うのか、どの順に読めばいいのか迷う方も多いはず。そこで今回は、コミカライズ2作の違いと、それぞれおすすめの点をご紹介します。 舞台は古代中国の宮中。後宮に勤める下級女官の1人、猫猫(マオマオ)は他の者とはちょっと違うスキルがありました。それは薬師としての卓越した知識。 後宮には時の皇帝の妃を巡る政争やいさかいが絶えません。猫猫は専門的な薬学の知識を見事に駆使して、後宮内の不審事件を次々と解決していきます。 コミカライズ版はそれぞれアプリで無料で読むこともできるのでぜひ!
猫猫(マオマオ)は花街の薬師として働く少女でした。彼女は薬草を採取するために出かけた際、運悪く人さらいに誘拐され、後宮(皇帝の妃候補が住む宮廷)の下級女官に売られてしまいました。
賢い猫猫は数年間勤め上げれば解放されることを承知していたので、できるだけ問題を起こさないように能力を隠し、あまり人と関わらずひっそり働いていました。
そんなある時、猫猫は上級妃(皇后にもっとも近い皇帝の妃)と皇子が衰弱しているという異変を耳にします。後宮に売られてから数ヶ月、目立たないよう雑用に徹していた彼女でしたが、つい持ち前の好奇心に負けて様子を見にいってしまいます。
そして薬師の知識と経験を動員して異変の原因を突き止め、問題を解決してしまうのでした。
猫猫は玉葉(ギョクヨウ)妃と皇子を見事救いました。バレないようこっそり助言したのですが、美形の宦官(去勢された文官)として有名な壬氏(ジンシ)が誰の仕業かを見抜きます。
かくして壬氏の推薦と、皇子の恩人に報いたいという玉葉妃の願いもあって、猫猫は上級妃付きの侍女に抜擢。異例の大出世と言えますが、この出来事から猫猫の事件だらけの後宮生活が始まるのでした。
- 著者
- 日向 夏
- 出版日
- 2014-08-29
本作は古代中国をモデルとしたミステリー風ファンタジーです。作者の日向夏が「小説家になろう」で本作を発表した後、ライトノベル版が2014年に出版されました。
今回ご紹介する漫画は、ねこクラゲ・作画、七緒一綺・構成のビッグガンガン版と、倉田三ノ路・作画、しのとうこ・キャラクター原案のサンデーGX版の2つです。ビッグガンガン版は2017年9月、サンデーGX版は2018年2月にそれぞれ1巻が発売されています。
どちらも原作ライトノベルをベースにしているので基本的には変わりありませんが、劇中で起こる事件や人物の描写、ストーリー構成などに違いがあります。どちらも原作のアレンジとして素晴らしい作品となっていますが、未読の方向けに2作品にどういった違いがあるのか、どんなところが魅力なのかを中心にご紹介していきましょう。
小学館版『薬屋のひとりごと』について紹介した<漫画『薬屋のひとりごと』は宮廷ならではの人間関係が謎を深める【相関図あり】>もおすすめです。気になる方はぜひご覧ください。
2つのコミカライズを見た時、まず一目でわかる違いは、2つの作品の絵柄の違いです。絵柄の違いはこの後にご紹介する話の構成とも少し関係するのですが、どちらも原作の特徴を引き継ぎつつ独自の魅力を出しています。
ねこクラゲ作画のビッグガンガン版は、よりアニメ的な可愛らしいキャラクターに特徴があります。描かれる女性はふっくら可愛いらしくて、柔らかい輪郭が特徴です。男性はキリッとスマートで、体格の良さが強調されています。
またシリアスな場面とコミカルな場面で、キャラクターのデフォルメ状態が変化します。場面場面で緩急のある画面構成はビッグガンガン版ならではといえるでしょう。
- 著者
- 日向夏
- 出版日
- 2017-09-25
一方のサンデーGX版は、ビッグガンガン版と比べるとややリアル調の作画です。たとえば猫猫は原作小説ではあまり特徴がないとされており、サンデーGX版ではそのイメージを優先してキャラクターが可愛くなりすぎないよう、落ち着いた作画が心がけられているようです。
- 著者
- 出版日
- 2018-02-19
次に話の構成の違いについてご紹介します。同じ原作を元にしてはいますが、構成にかなりの差異があって印象がまるで違います。
ビッグガンガン版はアニメ調の作画ともリンクするのですが、登場するキャラクターの個性にフォーカスが当たっているのが特徴です。1人1人が生き生きと描き分けられ、事件での役割や人間関係、心理状態が詳細に描写されるのです。
- 著者
- 日向夏
- 出版日
- 2017-09-25
もう1つのコミカライズであるサンデーGXは、全体的にキャラクターよりも事件や物語に軸が置かれています。話の本筋に不要な描写は省かれる一方で、原作やビッグガンガン版にはない、話を理解しやすくする補完の描写が目を引きます。
さらにいうと、サンデーGX版は物語の重要な部分をピックアップしているため、話の進行がビッグガンガン版よりもかなり速いのが特徴です。
- 著者
- 出版日
- 2018-02-19
本作シリーズは原作ライトノベル、コミカライズ2作品ともに異なる魅力の詰まった作品です。同じ話でも見る角度が変わるので、新鮮な気持ちで楽しめたり、新しい発見をすることもあります。
『薬屋のひとりごと』を隅から隅まで味わうのであれば、まず原作ライトノベルから入って、サンデーGX版でビジュアル化された物語の骨子を掴み、ビッグガンガン版であらためて奥深い世界観を楽しむという順番がよいでしょう。
あくまで個人的なおすすめの順番ですが、ご参考ください。
どの作品も素晴らしいので、可能なら全部読むことをおすすめしますが、時間なども限られているのでなかなかそうもいかないでしょう。次にどうしても1作に絞りたいという方に向けて、作品それぞれの魅力とあわせて、どんな風におすすめなのかをご紹介していきます。
- 著者
- 日向 夏
- 出版日
- 2014-08-29
まず何はなくとも原作です。原作はライトノベルなので普段小説を読まない方にはとっつきにくいかもしれませんが、物語という点ではもっとも濃いです。文字媒体による情報の提示と整理のおかげで、ミステリーとしての面白さが1番色濃く出ています。あれこれ想像しながら読むのが好きな人におすすめです。
ビッグガンガン版はキャラクターの詳細な描写が魅力なので、感情移入しながら『薬屋のひとりごと』の世界観を存分に楽しむことができます。
緩急のあるストーリー構成が非常に読みやすいので、ファンタジーが好きで難解なミステリーが苦手という方にもおすすめです。作画が可愛らしいアニメ寄りのため、本作のラブコメ要素をもっとも楽しめるというのも特徴として挙げられます。
サンデーGX版は原作を補完しつつスピーディに進むので、物語を流れで追いたいという方にぴったりです。話が早くて常に新しい事件や展開が巻き起こるので、読んでいて飽きることもありません。どうしても1作だけで済ませたいという方にも全体像がつかみやすく、おすすめです。
まとめるとミステリーを楽しみたい方は原作ライトノベルで、感情移入できる物語とラブコメが好きな方にはビッグガンガン版、とにかく飽きずにストーリーを追いたいという方にはサンデーGX版がそれぞれおすすめです。
- 著者
- 日向夏
- 出版日
- 2017-09-25
- 著者
- 出版日
- 2018-02-19
いかがでしたか? 2作の漫画版はどちらも原作の要素を違った形でコミカライズしたものです。おすすめの点を参考に、気になったほうからぜひ読んでみてください。