目立った予定はないけれど、私は毎年、クリスマスの季節をとても楽しみにしている。先週観た映画のおかげで、例年よりもやや早く、すっかりスイッチが入ってしまった。家族へのプレゼントは何がいいだろう、妹と一緒にダサ可愛いセーターでも着てみようか、気付けばそんなことを考えている。そんな中、今年はまた新たな楽しみ方を見つけたのだった!
「もうそんな季節なんだ…!」
11月に入ると、たちまち街の色が赤・白・緑に変わり始める。百貨店の入り口に早々と掲げられた「Merry Christmas ! 」の文字は、心なしかまだ少し気恥ずかしそうだ。この頃から、見慣れた街路樹はキラキラとおめかしをして、巨大なツリーがどこからともなく、ある朝突然に出現するのだ。
《クリスマスの季節がやってきた!》
なんて素敵な響きなんだろう。街のデコレーションが本格的になった頃、あるいは、晴れた朝のキーンと冷たい空気を吸い込んだ瞬間に、ふとこう思いついて高揚感を抱くのが、ちょっとした冬の楽しみでもある。
クリスマスは昔から好きだった。何か特別な約束がなくても、街がクリスマスに近づいていく、あの雰囲気が大好きだ。どんなに寒い日でも、暖かにきらめく装飾があるだけで、寒ささえ演出の一部のように思える。それに、一年のうちでこれほど寛容にありたいと思う季節はない。いずれにしても、穏やかに楽しい気持ちで過ごすのが相応しいシーズンだ。
ある年、クリスマスを前に、フィンランドのサンタさんから手紙が届いた。日本の子どもに解るよう、ちゃんと日本語で綴られていて、小学生の私は「サンタさんから正式なお手紙が届いたなんて、なんだか良い子どもとして認めてもらったみたいだ!」と思って、密かに感激していた。
我が家の習慣は、毎年イヴの夜に赤ワインとチーズを用意して、サンタさんへ宛てた手紙を添えて置いておくことだ。思えば、私が “お手伝い” としてではなく、自ら進んでこの準備を担当するようになったのは、この丁寧な手紙に感激して以降だったと思う。
- 著者
- トリシャ・ロマンス
- 出版日
- 2008-10-17
習慣といえば、最近はまた、毎年少しずつクリスマスグッズを増やし始めている。去年は小さなスノードームが2つ、今年は私が出張から帰宅すると、ヨガのポーズをとったサンタクロースの置物が仲間入りしていた。ひとつ増えるだけで、随分と気分が高まるから不思議なものだ。
クリスマスにちなんだものの収集について考えていると、絵本もいいなと思いついた。そこで最初に浮かんだのが『ウォーリーをさがせ!』だった。
赤と白のボーダー服を着て、世界中を旅するウォーリー。混沌とした世界、無数の人混みの中から彼を探し出すという、遊べる絵本だ。ウォーリーを見つけた後は、最後のページに載っている番外編に挑戦し、それも終えてしまうと、ただただページを眺めて面白い人たちやシーンを探したりした。合計すると、きっと驚くほど長い時間、このシリーズの絵本を眺めていたはずだ。
ところで、なぜ《クリスマス》で《ウォーリー》を連想したかというと、サンタクロースが大勢描かれたページを見た記憶があったからだ。久しぶりに遊んでみたいなと、書店やネット上で調べてみたのだが、残念ながら探しきれなかった。もしあなたが先に見つけたら、その時は教えて欲しい。
” ウォーリーの、クリスマスのページを、さがせ!”
- 著者
- マーティン ハンドフォード
- 出版日
- 2019-05-24
ウォーリーをきっかけに、好きだった絵本のひとつ「おさるのジョージ」シリーズの、大きな仕掛け絵本のことも思い出した。たしか、ジョージが電線をぶら下がりながら左右に渡ったりと、様々に動かすことのできる仕掛けになっていて、幼児の私は夢中になった。恐らくこれが、私が初めて触れた3Dエンターテインメントだ。
30年ほど前の本なので、今まさにこの一冊を手に入れるというのは難しいようだが、いつかまた読みたい本として、忘れずにいようと思う。そういうわけで、私の “仕掛け絵本熱” は再燃したのだった。
Curious Baby Curious about Christmas (Curious George touch-and-feel board book) (Curious Baby Curious George)
2011年09月27日
- 著者
- ["ジェシカ サウスウィック", "E.T.A. ホフマン", "エフゲニア イエリヤツカヤ"]
- 出版日
- 2018-10-22
「クリスマスのために、仕掛け絵本を集めてみようかな。」そう思って調べると、驚くほど精巧でおしゃれな絵本が存在することを知った。色遣いも、デザインも、なんて洗練されているのだろう!ページを開いて飾ることを前提にした本まであるのだから、私の思いつきも、あながち間違っていなかったようだ。
- 著者
- ロクサヌ・マリー ギャイエ
- 出版日
- 2015-10-20
- 著者
- ジェニファー・プレストン・シュシュコフ
- 出版日
- 2019-11-11
この日は他にも発見があった。それは、名作と呼ばれる文学作品の装丁に、クリスマスムードを演出してくれそうなものが多いということだ。中でもこの後に紹介する2作品は、この時期定番の舞台演目でもある。
受け取る相手が本や観劇に関心のある人ならば、チケットに原作の本を添えて贈りたい。それでなくとも、本に何か別のものを組み合わせた贈り物というのは、考える側にとっても楽しそうだ。
もしプレゼントした舞台を一緒に観に行ったなら、その一冊は、きっと永くあなたのクリスマスの記憶を彩ってくれるだろう。
- 著者
- チャールズ・ディケンズ
- 出版日
- 2015-12-04
舞台【スクルージ 〜クリスマス・キャロル〜 】
https://horipro-stage.jp/stage/scrooge2019/
- 著者
- E.T.A.ホフマン
- 出版日
- 2018-11-01
キエフ・バレエ【くるみ割り人形】
https://www.koransha.com/ballet/kiev_ballet2019/
クリスマスシーズンには素敵な装丁の本が似合う。暖かな部屋の中で静かにページをめくるのは、この季節らしい過ごし方のひとつだと思う。雪の舞う夜ならば尚良い。寒さが増すにつれ、そんな時間を、もっとじっくりと味わいたい気分になる。そのときできれば飲み物は、ココアにマシュマロを3つ浮かべて。もしくは、少し甘いホットワインを。
おやつのじかん
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