鬼畜な担当編集者と、鬼才作家【吉村卓也】

更新:2021.12.6

そもそも。そもそもですよ? 「小説を一本書いてください」 あなたがこれを言われたら、どう感じますか? 「無茶言いなさんな!」 そう思いますよね? 普通に小説を書くのでも、もう想像を絶するほど難しいんです! それなのにこの編集者さんときたら……。

2007年、アミューズ30周年全国オーディションにて6万5000人の中から『審査員特別賞』を受賞。“俳優”として映画やドラマ、更には情報番組などで活躍を続ける中、自身が脚本を手掛けることにも目覚め、2015年からはお笑いコンビ、「伊村製作所」を結成し、“お笑い芸人”としての活動もスタート。単独ライブ、お笑いライブの出演の他、キングオブコント、M-1などにも出場。相方の芸能界引退を機に2017年末に解散。 自身は2017年12月から俳優としてテレビ朝日「仮面ライダービルド」に黄羽役として出演し、テレビ朝日系「陸海空 地球征服するなんて」への出演や舞台「おおきく振りかぶって夏の大会編」への出演、一人舞台の上演や、ドラマへの出演など、幅広い活躍を見せている。
泡の子

お笑いコンビを組んでいた時、僕はネタ作り担当だった。

「学校の設定でネタ書いてよ」

「リズムネタが一本くらい欲しいよね」

なんて、よく相方から言われていました。

自分で思いついたネタは良いんですよ。

書いていて楽しいし、何より初めっから自分の中に答えがありますから。作るのも容易い。

でも、「学校の設定で」なんて、お題を決められたらもうてんやわんやです。

さらに言えば。そのお題の範囲が、狭くなれば狭くなるほど大変になります。

世界を狭められているのと同じですから。

僕が書くコントは、一本だいたい5分程度。

原稿用紙でいうと、たったの2ページもいかないくらい。

それでも相方の要望に応えるために、死ぬほど頭を悩ませてネタを作っていた事を覚えています。

じゃあそのお題が、小説で与えられたら……。

考えただけでもゾッとしますよね。

そんなゾッとする小説が、……あったんです!!

タイトルはそこにある

「次のお題はこちらです」
担当編集者が繰り出す五つの難題を前に、鬼才はいかなる作品を書き上げたのか?
前代未聞のコンセプトで書き上げられた、鬼才の初作品集。

『タイトルはそこにある』は、担当編集者さんが出題するお題に沿って書かれた5つのお話です。

そのお題というのがこちらです。

・一つ目のお題。
演劇を扱った中編で登場人物は4、5人の少数に絞る。
・二つ目のお題。
回想、場面変更、一行アキ一切なしのワンシチュエーション・ミステリ登場人物は3人。
・三つ目のお題。
登場人物は2人で会話文のみで書かれた作品。
・四つ目のお題。
3人の女性による独白リレー(できれば3人全員を主人公に)出番を終えた語り手は再び登場してはならない。
・五つ目のお題。
???(あとがきでは公開されています)
 

見てもらってわかる通り、担当編集者さんが出すお題はどれも面白いものばかりです。

ただね……、どう考えても難しすぎるんですよ!!

これをもし万が一、元相方から僕が言われてたら、間違いなく殴ってますよ(笑)。

三つ目のお題なんて、鬼畜も鬼畜ですよ。

元来小説とは、文字だけで構成されてますから。

漫画のように絵で情景を伝えるわけにもいかず、

舞台でやるお芝居のように、身振り手振りで伝える事もできません。

普通に考えたら、説明台詞が羅列されたツマラナイ小説になるのが落ちです。

ただね、鬼才はだてじゃない。

堀内公太郎先生おそるべしです……。

全てのお題に応えるだけではなく、お題を巧みに操る文章力!

どの話も面白く、最後までページを捲る手が止まりませんでした。

ちなみにあとがきには、作者の堀内公太郎さんが本書を書くにあたり

難しかったところや苦労したところを書いてくれています。

読了後の、あらすじまで楽しめる一冊ですので、皆さんぜひ読んでみてはいかがでしょうか?

 

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