お笑いコンビを組んでいた時、僕はネタ作り担当だった。

「学校の設定でネタ書いてよ」

「リズムネタが一本くらい欲しいよね」

なんて、よく相方から言われていました。

自分で思いついたネタは良いんですよ。

書いていて楽しいし、何より初めっから自分の中に答えがありますから。作るのも容易い。

でも、「学校の設定で」なんて、お題を決められたらもうてんやわんやです。

さらに言えば。そのお題の範囲が、狭くなれば狭くなるほど大変になります。

世界を狭められているのと同じですから。

僕が書くコントは、一本だいたい5分程度。

原稿用紙でいうと、たったの2ページもいかないくらい。

それでも相方の要望に応えるために、死ぬほど頭を悩ませてネタを作っていた事を覚えています。

じゃあそのお題が、小説で与えられたら……。

考えただけでもゾッとしますよね。

そんなゾッとする小説が、……あったんです!!

タイトルはそこにある

著者
堀内 公太郎
出版日
2018-05-31

「次のお題はこちらです」
担当編集者が繰り出す五つの難題を前に、鬼才はいかなる作品を書き上げたのか?
前代未聞のコンセプトで書き上げられた、鬼才の初作品集。

『タイトルはそこにある』は、担当編集者さんが出題するお題に沿って書かれた5つのお話です。

そのお題というのがこちらです。

・一つ目のお題。
演劇を扱った中編で登場人物は4、5人の少数に絞る。
・二つ目のお題。
回想、場面変更、一行アキ一切なしのワンシチュエーション・ミステリ登場人物は3人。
・三つ目のお題。
登場人物は2人で会話文のみで書かれた作品。
・四つ目のお題。
3人の女性による独白リレー(できれば3人全員を主人公に)出番を終えた語り手は再び登場してはならない。
・五つ目のお題。
???(あとがきでは公開されています)
 

見てもらってわかる通り、担当編集者さんが出すお題はどれも面白いものばかりです。

ただね……、どう考えても難しすぎるんですよ!!

これをもし万が一、元相方から僕が言われてたら、間違いなく殴ってますよ(笑)。

三つ目のお題なんて、鬼畜も鬼畜ですよ。

元来小説とは、文字だけで構成されてますから。

漫画のように絵で情景を伝えるわけにもいかず、

舞台でやるお芝居のように、身振り手振りで伝える事もできません。

普通に考えたら、説明台詞が羅列されたツマラナイ小説になるのが落ちです。

ただね、鬼才はだてじゃない。

堀内公太郎先生おそるべしです……。

全てのお題に応えるだけではなく、お題を巧みに操る文章力!

どの話も面白く、最後までページを捲る手が止まりませんでした。

ちなみにあとがきには、作者の堀内公太郎さんが本書を書くにあたり

難しかったところや苦労したところを書いてくれています。

読了後の、あらすじまで楽しめる一冊ですので、皆さんぜひ読んでみてはいかがでしょうか?

 

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