イケメン社長とのオフィスラブ。女性が憧れる、漫画では定番のシチュエーションですが、『この男は人生最大の過ちです』に登場する社長は一筋縄ではいきません。 まさかのドMキャラでインパクトは特大。斜め上をいく行動で笑わせてくれます。さらに無自覚にヒロインに迫っているように見えて、実はすべて計算ずくで……? 速水もこみち主演でドラマ化された話題の本作について、社長の魅力を中心に解説いたします。一部ネタバレがありますのでご注意ください。
『この男は人生最大の過ちです』は、九瀬しきの描いた漫画作品。もともと電子コミック誌で2017年から連載されていた内容が、2019年1月に書籍化。コミックシーモアが主催する「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2019」では、女性部門を受賞しています。
天城製薬の経理部で働く佐藤唯は、言いたいことをはっきりと言う勝気な性格。その日高校生の頃からずっと一緒だった愛犬を亡くし、失意の底にいました。
バーでやけ酒を飲んで愚痴をこぼしていると、隣から失礼な言葉をかけてくる男に遭遇。腹が立った唯は、ついその男に足を引っかけ、転ばせてしまいます。
翌日、自身の行いを反省していた唯は、昨日転ばせた相手が社長の天城恭一だと知ります。そして社長室に呼び出され、解雇を覚悟します……。
しかしそこで天城から言われたのは、こんな言葉でした。
「僕を 奴隷にしてください」
(『この男は人生最大の過ちです』1巻より引用)
開幕から衝撃的な展開が待っている本作は、2020年1月よりABCテレビ、テレビ朝日にてドラマ化されました。天城恭一役を演じるのは速水もこみち。唯役を松井愛莉が演じます。
ドラマ作品の詳細はドラマ公式ページでご覧ください。
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あなたの犬にしてください、と膝をつくヒーローという、恋愛ものとしては衝撃的な性癖を見せた天城。最初に唯と顔を合わせた時は、クールなイケメンといった様子で、ドM要素は微塵も感じさせませんでした。
むしろ、酔っぱらって管を巻いていた唯を蔑んでいる風ですらあったのに、なぜ突然の犬宣言になったのでしょうか。
実は天城、今までの人生では特殊な性癖を発揮してはいません。ごく普通のクールで頭の切れるイケメン社長だったのですが、唯との出会いで人生が変わったのです。
今までちやほやされることが多かった彼は、あの夜唯に足をかけられて転ばされ、謝罪もなしに立ち去られました。そしてあんなに冷ややかな態度をとられたのは初めてだ、と恋に落ちたと同時に、Mな本性が開花したのでした。
社長室に呼ばれ、突然の告白に唯は動転。極度の緊張と不安、どんどん詰め寄ってくる天城の様子に限界突破し、思わず天城を投げ飛ばしてしまいました。
跳ね飛ばされ、冷たい言葉をかけられた天城。普通なら怒ってもいい場面ですが、ますます唯にのめり込んでいくのです。覚醒したばかりなのに、才能すら感じさせるドMっぷりを見せるのでした……。
天城が唯の部署に会いにきたり、研究員に合わせたりということが続き、社内で唯は彼の恋人と噂されるようになっていました。そのせいで日常が乱され、イライラが募った唯。自分がいないとダメになるまで尽くししたいという天城の発言を聞き、ついに堪忍袋の緒が切れてしまいます。
まったく話を聞いてくれない天城に、唯はひとつの命令を出しました。今後一切自分に近づかないこと。今までの言動からどうせ守らないだろうと思っていましたが、彼はその後唯の周囲に姿を現さなくなるのでした。
その後、興味を失っただけかと思いきや、天城が唯の命令を忠実に守っていただけということが、後日判明します。
- 著者
- 九瀬しき
- 出版日
- 2019-01-25
それは12月25日。世の中はクリスマスですが、唯にとっては自身の誕生日でもありました。皆家族や恋人と一緒で、彼女にはお祝いの言葉をかけ、一緒に過ごしてくれる人がいません。
誰もいない寂しさを抱えていた唯でしたが、テレビ番組をきっかけに天城が外で自分を5時間以上も待っていたことを知ります。命令のことがあったため近づくことはためらわれたが、唯は1人ではないことを伝えたかったとのこと。
彼の気遣いに胸がきゅんとなると同時に、実は命令をしっかり守っていたという事実が明るみになりました。 自分の気持ちを殺して命令を守る。ドMでもあり命令を守れることをさりげなくアピールしてくる健気さ、まさに犬のようです。
天城は様々なテレビ番組に出演しています。唯が飲み会で体調を崩し、強引に社長宅で療養させられることになった際、テレビ番組の話になりました。
テレビに出ている天城は、お世辞にも愛想がよいとはいえず、唯から見れば感じが悪い印象。しかし、世間ではウケが良く、好意的なコメントも見受けられます。
テレビ出演は不本意と漏らす彼。そして唯に、皆が褒めるので褒めないでほしいとお願いしてきます。
唯は天城が褒められることがあまり好きではなく、むしろ嫌がっているのではと感じました。これはチャンス、と今までの冷たい態度から一変し、彼をべた褒めし始めます。
そもそも天城は唯の冷たい態度に惹かれ、奴隷にしてほしいと志願してきました。彼女が褒めてくるのでは他の人と変わらず、気持ちが冷めるのでは、と考えてしまうでしょう。
しかし、真性のドMは違います。天城は唯が褒め始めたのを新手のプレイだと解釈し、むしろ喜んでしまうのです。褒められてうれしいではなく、嫌がることをするプレイの一環としての「褒める」。天城のドM方向へのポジティブな解釈の仕方には脱帽です……。
ドM全開で唯に迫っている天城ですが、しっかりカッコいいところも見せてくれます。自分の仕事に信念と誇りを持っており、恋心が絡んでもそこはブレません。
愛犬を病気で亡くした唯に対して、彼女のような思いをする人がいなくなるよう、薬を開発すると決意を新たにしていました。
また、唯が取引先の病院の院長、坂口から絡まれていた時は、彼に頭からワインをかけてしまいます。どうにかなったものの、唯は取引先相手に失礼な態度では、と心配します。
そんな彼女に天城は、取引がなくなって困るのは相手の方。それだけの会社にしてきた自負がある、と自身が作り上げた会社に対する自信を見せました。
顔がカッコいいのはもちろんですが、唯に対する一途なところだけでなく、仕事に対して真摯なところに大人の男らしさを感じるでしょう。普段のドMな言動も相まって、仕事の話をしているときの天城は、特にカッコよく感じられるはずです。
社長と不本意ながら距離が縮まっていくことにうんざりしていた唯。彼女にかまって接待やパーティーに顔を出さなくなったことを嘆く秘書、名取蒼から、社長と付き合うか関わらないかハッキリしてほしいと詰め寄られてしまいます。
唯はもちろん、関わらないほうを選びました。しかし天城の誕生日にお祝いも言えなかったことに、もやもやした気持ちを抱えてしまうのでした。
- 著者
- 九瀬しき
- 出版日
- 2019-01-25
2巻では、唯と名取が、社長に諦めてもらうために動いていく様子が描かれます。2人にとって大きな進展となるのは、ライバル的な存在の登場でしょうか。
秘書の名取や、天城の同期の藍田が登場したことにより、唯の周辺に男性が増えることになります。意外と策士なところがある天城が、離れようと画策する彼女をどう引き留めていくかがポイントです。
また、唯の方にも気持ちに大きな変化が。出会いの頃よりもほだされているところがあり、完全に嫌がっているという風に見えなくなってきているのです。
そこに登場する、天城のことを狙う美女、三島冴。近しい存在が登場したことで、唯の気持ちに決定的な変化が起こるのでしょうか?目が離せません。
もちろん、天城のドMっぷりと唯のSっ気のある言動の漫才のような面白さも健在。恋愛方面の動きはあると言いつつも、普段どおりのコミカルなやり取りも笑えます。
天才は少々風変りな人が多いとはいえ、急転直下のドM発言で度肝をぬいてきた天城。唯に一途なところにニヤニヤしてしまいます。
実は唯の嫌がることをしたいSなのではと思いたくなる時もありますが、やっぱりドM。実写化して大丈夫なのか、という変態度合いですが、速水もこみちによるドM忠犬姿は、ついつい気になってしまいます。原作とあわせて読めば、さらに楽しめること間違いなしです!