まさかの展開から始まるのが、『魔王学院の不適合者』。魔王が自らの命を犠牲にして、魔族と人間と精霊と神の共存する平和な世界をもたらしてから2,000年後に人間の少年に転生するのですが、彼は本人にも関わらず魔王候補育成の学院で、不適合者の烙印を受けてしまうのです。 しかしそこからが本作の痛快なところ。魔王の生まれ変わりは、最底辺から圧倒的な力で平和な世界に新しい秩序をつくっていくのです。TVアニメ化も予定されている本作のコミカライズ版の魅力についてご紹介しましょう。ただの「俺TUEEE」系ではありませんよ! ちなみにスマホアプリで無料で読むこともできます!
魔王が2千年後の世界に生まれ変わり、圧倒的な力で再び世界の覇者を目指すというストーリー……。
それだけ聞くと、よくある「俺TUEEE」系の物語だと思われるでしょうか?本作は一味違います。特に主人公の性格がこのタイプの物語によくある嫌味なタイプではなく、好感が持てるのです。
ちなみに俺TUEEE系をご存知ない型にご説明すると、主人公が他社の追随を許さないほどの力を持ったファンタジー系の物語のひとつの物語のテンプレートのことをさします。特にライトノベルでそのタイプはよくみられ、「異世界転生もの」(こちらは読んで字のごと、現代に生きる人物が異世界に転生するもの)と並んで「飽き飽きしている」という声も散見されるものです。
本作もライトノベルが原作でそのテンプレートを使った作品のひとつなのですが……、やっぱりよくあるだけでない面白さがあるのです。主人公の性格以外にも、なぜこの作品がおすすめできるのかをこの記事でご紹介していきたいと思います!
ちなみに本作はスマホアプリで読むことができるので、木になる方はそちらからご自身の目で魅力をご覧になってみるのもおすすめです。
魅力をご紹介する前に、簡単にあらすじをご紹介いたします。魅力から知りたい方は読み飛ばしていただいても問題ありません。
神話の時代と呼ばれた遥か昔、人間も精霊も神も区別なく滅ぼす、アノス・ヴォルディゴードという魔王がいました。「暴虐の魔王」とも呼ばれる彼の望みは、実は破壊と殺戮ではなく、生まれつき忌み嫌われる魔族を守りたかっただけだと語りました。
やがて魔王アノスは人間と精霊と神、それぞれの代表者に戦乱を終わらせる提案をします。それは、ある儀式で、魔界、人間界、精霊界、神界、4つの世界を隔てる壁であり、1,000年開かない扉を作るというもの。長い時間をかけて誰もが種族間のわだかまりを忘れた頃に交流を再開し、あらためて平穏な世界を目指すというのです。
その儀式の代償は、魔王アノスの命。彼の犠牲のもと、世界には平和が訪れました。
それから2,000年後、アノスは魔王の血を引く人間の子どもとして転生します。そして自身の魔力と知能を使い、生後1ヶ月で青年にまで成長し、この世界の情勢を把握。しかし魔王本人の記録と知識が失われた世界では、魔法は退化し、彼が行った転生すら知られていませんでした。
そんな状況に驚いていたところ、魔皇(魔王の血を濃く引くエリート)を育てる「魔王学院デルゾゲード」からの招待を受けました。転生することは知られている魔王(自分)を探すための学校ということで入学しますが、アノスは魔皇に相応しくないと「不適合者」扱いされてしまうのです!
ところが、そんな思いがけない状況にもかかわらず、アノスは神話の時代そのままの実力で、次々と難題をクリアし、頭角を現していきます。
今回ご紹介する作品はWeb小説投稿サイト「小説家になろう」で大人気となったライトノベルのコミカライズ版です。TVアニメ化も予定されていおり、ますます注目が高まっています!アニメが気になる方は公式サイトをご覧くださいね。
このあとから、コミカライズ作品の魅力について語らせていただきます!
本作の見どころは、なんといっても主人公アノス・ヴォルディゴードの比類なき強さ。蘇った平和な時代に、2,000年前の魔力の常識を持ち込んだギャップは、ほとんど無敵。心臓の鼓動に魔力を込めるだけで、相手は血を吹き出します。
もう、生きているだけで攻撃!そんな無双過ぎる強さと、最強魔王であることの絶対的な自信からくる態度が、傲慢に振る舞う独善的なキャラのように映ります。しかし、そうではないのがキモ!
アノスは強力な能力相応に、尊大ではありますが、鋭い知性と高い理性の持ち主。その一方で、魔王特有の一般常識のなさは、いわば天然ボケ。若干ズレた認識で平和な時代に馴染もうとする姿は、可愛らしいとすら思えます。
最強の主人公が自信過剰で無双するというのが、俺TUEEE系でよくみられる展開ですが、そこに配慮されているのが本作の魅力。困難を圧倒的な力ででねじ伏せつつも、たまにボケ(のように見える天然さ)をかましてしまうところが、かっこいいと思わされつつも、憎めない主人公なのです。
- 著者
- 秋
- 出版日
- 2018-11-10
本作を語る上ではヒロインのミーシャ、サーシャ・ネクロン姉妹も外せません。原作ラノベでイラストを担当しているイラストレーター、しずまよしのりによるミーシャとサーシャのデザインがとても魅力的です。
しずまよしのりと言えば、大ブームとなったブラウザゲーム『艦隊これくしょん』通称「艦これ」の島風や長門、大和という人気キャラクターでブレイクしたイラストレーター。アニメ化もされたラノベ『ゼロから始める魔法の書』のイラストでも有名です。
ミーシャは控えめで大人しいショートカットが似合う美少女。魔王学院で孤立するアノスの最初の友達でもあります。
サーシャはミーシャとは正反対の姉。妹を「出来損ない」呼ばわりする、ツインテールの高飛車な美少女です。アノスが少し驚くほど、現代ではまれに見る強大な魔力の持ち主。
タイプの違うこの2人のヒロインが、ともすれば超然としがちなアノスの人間的魅力を引き出してくれます。
また、可愛いだけでなく、ラブコメ的展開も見所。アノスを前にしたそれぞれの照れた表情や、影で彼を思う様子など、より彼女たちを魅力的に見せる展開もたくさんあります。
バトル一辺倒でなく、ラブコメ展開もあるのが本作のいいところ。そのパートを彩るヒロインの可愛さにも注目です!
原作ではしずまよしのりがデザインのイラストが、挿絵として挿入されていました。美麗なイラストは素晴らしいものでしたが、コミカライズ版では、加えて躍動感と迫力が見所です。
原作ラノベでも表現に限界のあるアクションが、とにかくカッコいいい!
活字は想像で補う部分があり、それを実際の絵で上回るのは難しい部分もありますが、本作はうまくイラストで原作の魅力が表現されています。巨大な魔法陣や、凄まじい威力の破壊魔法など、きっちり計算されたコマ割りで繊細に描かれているのです。
しずまよしのりのイラストに匹敵する美麗なキャラ、人物の細やかな感情表現や迫力あるバトルなど「静と動」の作画は必見!初見の読者はもちろん、原作ファンは二度おいしいはず!
シリアスな展開の一方、アノスの両親が癒しキャラとして際立っています。
父親グスタと母親イザベラ。2人ともただの人間なのですが、天然キャラ(現在のアノスの天然はここから遺伝したのかも?)で何事にも動じません。
どれくらい動じないかというと、生まれてすぐ自らの魔法で小学生ほどに成長したアノスを「天才で賢い」と大喜びするくらいに、図太いのです。怖がる、不審がる、なんて普通の反応は、皆無。
その後、魔王学院で、強大な魔力を誰もがアノスを恐れるようになっても、まだまだ幼い子どものように接します。彼らにとって、実時間でアノスは生後1ヶ月あまり。赤ん坊扱いなのは仕方ないのかも……?
それに対してアノスもまんざらではなさそうなのが、微笑ましいところ。肉親の情なのか、「悪くない」と、一目置いているのが面白いです。ちなみにイザベラの作るキノコグラタンはアノスの大好物です。
魔王学院入学後、アノスは純血魔族ではないため劣等生扱いされていました。特に目の敵にしてきたのが、同じクラスの優等生だったサーシャ。学院内ではその実力に一目置かれていた彼女でしたが、クラスの班別対抗戦で真っ向勝負した際に、アノスは苦もなく彼女を倒してしまいます。しかし、その力を認めている部分もあり、同じ班に引き入れました。
その後、アノスの班の交流で、不穏な仲だったミーシャとサーシャは仲直りするのですが、その平穏も束の間。学院のダンジョン探索でサーシャは裏切り、ミーシャを瀕死にさせてしまいます。しかし、それにはある理由がありました。
実は、2人は、アイヴィス・ネクロンが1,000年間にわたる融合魔法研究の末、「暴虐の魔王」を蘇らせるための器。ミーシャは数時間後に迫った誕生日、サーシャと融合して消滅する運命だったのです。サーシャはミーシャに嫌われても、自分が死ぬことでそれを食い止めようとしていました。
3巻ではこうしてネクロン姉妹の秘密が明かされます。彼女たちの危機に、アノスがどう動くかが見所。最強主人公らしい、イケメンさを発揮してくれます。ここの部分は本作ならではの安心感がありますが、迫力のある戦闘シーンが物語をマンネリ化させません。
ただし、悲願達成を狙うアイヴィス・ネクロンや、時の神まで介入してくるので簡単にはいきません。ハラハラする展開の結末はぜひ実際にご覧ください。
- 著者
- 秋
- 出版日
- 2019-10-10
いかがでしたか? 主人公がただただ強いだけでなく、2,000年のギャップによって天然っぽく映ってしまうが、親しみの持てるところ。原作ではこの先あっと驚く展開が待ち受けているので、今後のコミカライズ作品も楽しみです。