『信長公記』を読み解く本おすすめ5選!現代語訳版や漫画版など

更新:2021.11.21

歴史上の人物のなかでも人気を誇る織田信長。天下統一目前にして、明智光秀の裏切りで幕を閉じたその生涯から、たくさんの名言や逸話が伝わっています。それらのエピソードは、信長の部下だった太田牛一が書き残した書物『信長公記』がもとになっているのをご存知でしょうか。この記事では、多数発表されている『信長公記』の関連本のなかから、特におすすめの作品を紹介していきます。

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『信長公記』とは。太田牛一がまとめた織田信長の一代記

 

戦国時代に活躍した織田信長の一代記『信長公記(しんちょうこうき)』。信長の家臣だった太田牛一がまとめました。成立したのは江戸時代の初期だといわれています。織田信長の幼少時代から1568年の上洛までを「首巻」、それ以降「本能寺の変」までの15年間を、1年を1巻に収めた全16巻で構成されています。

織田信長に関する信頼できる史料は、他の時代と比べあまり多くありません。そんななか、史料として価値が認められているのが『信長公記』。現在に伝わっている史実や人物像はほとんどすべて、本作に書かれていることがもとになっているのです。

太田牛一は、最初から信長の一代記を書こうと筆をとったわけではありませんでした。もともとは日付けと起きた出来事をメモに残していただけで、あとから本としてまとめたようです。ごく一部、日付けなどの誤りがある点をのぞいて、メモに残された文書からわかる事実を正確に、時系列で記されていることが確認されています。

また太田は、織田信長の死後は豊臣家に仕え、『大かうさまくんきのうち』(=太閤様軍記の内)という豊臣秀吉に関する一代記も記しました。

全巻、現代語訳で読めるおすすめ本『地図と読む 現代語訳 信長公記』

 

歴史や美術に詳しい編集者の中川太古が手掛けた『信長公記』の現代語訳版です。

首巻から15巻までの全16巻分が収録されています。

著者
太田 牛一
出版日
2019-09-28

『信長公記』を全巻、現代語訳で読みたい人におすすめの作品。原文では時系列順になっていないエピソードが年月日順にそろえられ、また間違っている日付けは正しいものに補足修正されています。

タイトルに「地図と読む」とあるように、要所要所に話題となった城など位置関係がわかる地図が挿入されているのが特徴。

さらに、文中に出てきた地域や町の名前には、注釈で現在の都市名が書かれているので、戦国時代の地理区分に詳しくない人でもイメージを膨らませながら読み進めることができるでしょう。注釈は巻末ではなく、各見出しごとに記載されているので、ページを行き来しなくてすむのも嬉しいポイントです。

『信長公記』の概要を知るのにおすすめ『信長公記―戦国覇者の一級史料』

 

戦国史研究家である和田裕弘の作品。

『信長公記』のなかから興味深いエピソードを28個抜粋し、原文、現代語訳、解説を記しています。

著者
和田 裕弘
出版日
2018-08-17

 

本書で紹介されているエピソードは、織田信長の家族や生い立ち、徳川家康や武田信玄など他の武将、「長篠の戦い」と続き、「本能寺の変」で終わります。戦国時代に詳しくない人でも、聞きなれた言葉が多いのではないでしょうか。

偏りなく選ばれたエピソードなので、『信長公記』にもとづいた織田信長の生涯の全体を掴むことができます。ドラマや小説で描かれる織田信長は短気で執念深く、残忍といったイメージが強くありますが、意外な一面もあったことがわかるでしょう。

歴史上の人気者である織田信長の、脚色されていない本来の姿を知るにはもってこいの一冊。全文を読む前の導入として活用することもできます。

『信長公記』から織田信長の戦を徹底解説『信長の戦争』

 

日本軍事史を専門とする、歴史研究家の藤本正行の作品。

ドラマや映画では脚色されることが多い戦のシーンを、『信長公記』をはじめとする史実や当時の戦法にもとづいて論理的に解説しています。

著者
藤本 正行
出版日
2003-01-09

 

軍事の天才と呼び声が高く、戦に関しては多くの伝説的な活躍が伝えられている織田信長。しかし、「桶狭間の戦い」での奇襲や、鉄砲三弾撃ち戦法など、信長の偉業と伝わっている功績が、実は創作されたものである可能性が高いことはご存知でしょうか。

織田信長は、47年の生涯で80以上の戦を経験しています。本書ではそのなかから、「桶狭間の戦い」や「石山本願寺攻め」、「本能寺の変」を含めた7つをピックアップして解説。読み進めていくと、破天荒なイメージが強かった信長こそが、基本に忠実な戦法をとっていたことがわかるはずです。

文章は論理的で、裏付けもしっかりと明記されているので、納得感も抜群。読みごたえのある一冊になっています。

「天理本」を底本にした新たな解釈を楽しめる『現代語訳 信長公記天理本首巻』

 

歴史研究者であるかぎや散人の作品。

天理大学図書館に所蔵されている『信長公記』の「天理本」を底本として、原文、現代語訳、解説が記されています。

著者
太田牛一
出版日
2018-01-20

 

太田牛一が江戸時代初期に発表した『信長公記』。もちろん当時は印刷技術はなく、写本という形で世に広まりました。そのため『信長公記』には複数のバージョンが存在し、細かな点で多くの違いがあることがわかっています。

現在出版されている『信長公記』の多くは、「陽明本」または「池田本」を底本としています。しかし本書が底本にしている「天理本」には、2作には載っていないエピソードが多く収録されているのです。他の『信長公記』をもとにした作品とは、まったく異なる解釈ができる場面がいくつもあるのが魅力でしょう。

本書で紹介しているのは、全16巻のうち首巻のみ。首巻は織田信長の幼少期から上洛するまでの30年あまりが記されていて、「桶狭間の戦い」もこの期間に含まれます。若き日の信長の姿を知るのにはもってこいでしょう。

漫画で読むのもおすすめ!『新・信長公記~ノブナガくんと私~』

 

『ライアーゲーム』の作者、甲斐谷忍が手掛けたSF学園ファンタジー漫画です。

主人公は歴史オタクの女子高生、みやび。新学期、クラスメイト全員の名前が戦国武将と同姓同名であることに狂喜乱舞していました。

しかし彼らの正体は、マッドサイエンティストによって生み出された戦国武将たちのクローン。現代の不良界におけるトップの座をかけて戦うために、同じ高校に集結していたのでした。

著者
甲斐谷 忍
出版日
2019-07-05

 

歴史に興味はあるけれど、『信長公記』など歴史書を読むのはハードルが高いと感じている方は、まずは漫画から始めてみてはいかがでしょうか。

不良バトルに参戦するのは、織田信長をはじめ、武田信玄、伊達政宗、豊臣秀吉など34人の名だたる名将たちのクローン。遺跡から発掘されたDNAから製造されているので、本人たちの性格もそのまま反映されています。

派手な活躍を見せる上杉謙信や武田信玄の裏で、うつけ者と見せかけて暗躍する織田信長。バトルの展開や戦法は史実をもとにしているので、戦国時代のイメージを掴みやすいのではないでしょうか。一体誰が天下をとるのか、注目です。

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