千葉雅也のおすすめ本5選!芥川賞候補の小説『デッドライン』も紹介!

更新:2021.11.21

2019年下半期に発表された「芥川賞」候補作のなかでも、千葉雅也の『デッドライン』は、哲学者が執筆した小説として注目を集めました。この記事では、彼がこれまでに発表した作品のなかから特におすすめの本を紹介していきます。

ブックカルテ リンク

千葉雅也とは

 

1978年生まれ、栃木県出身の千葉雅也。東京大学に進学し、大陸哲学、フランス現代哲学を専門に研究しました。学生時代は、哲学者の中島隆博や小林康夫に師事。東浩紀や浅田彰からも大きな影響を受けたそうです。

2013年、博士論文「ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学」を『動きすぎてはいけない』として刊行。以降、数多くの哲学に関する作品を発表してきました。

2019年、これまでとはうってかわって、小説『デッドライン』を発表。同作は「芥川賞」の候補作にノミネートされ、話題になっています。

千葉雅也のデビュー作!『動きすぎてはいけない』

 

もっと動けばもっと良くなる?もっと繋がりたい?

本書では、現代人の人や方面と繋がっていく性質について考えていきます。テーマは「動きすぎてはいけない」。「動け」でもなく「動くな」でもなく、「動きすぎてはいけない」という言葉に込められたその意味とは何なのでしょうか。

著者
千葉 雅也
出版日
2017-09-06

 

2013年に刊行された千葉雅也のデビュー作。フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの考えからさらに思考を広げていく哲学書です。もともとは千葉が東京大学で博士論文として執筆したものですが、その内容の深さや読みごたえから著作として発表することになりました。

現代はさまざまな情報や人と繋がることができるようになりましたが、繋がることで生じた現象はよいことばかりではありません。「繋がりすぎ」、すなわち「動きすぎ」は身動きのとれない状況をも生み出してしまったと主張しています。

ジル・ドゥルーズにはじまりニーチェまで、哲学的思考を多方面に応用し、接続と切断を考えていく作品。ドゥルーズの入門書としてもおすすめです。

千葉雅也が語る新視点の勉強論『勉強の哲学 来たるべきバカのために』

 

勉強とは何か、なぜ人は勉強するのか、勉強嫌いはどうやって勉強するのか……数々の自己啓発本が取り組んできたこの問題を、気鋭の哲学者が語ります。

千葉雅也いわく、「勉強は変身」らしいのです。勉強が我々に何を与えるのか、本書で語られる「勉強論」を知れば、勉強嫌いの人もやる気が出てくるかもしれません。

著者
千葉 雅也
出版日
2017-04-11

 

2017年に刊行された千葉雅也の作品。彼は本書で、哲学者として一躍有名になりました。

勉強法やモチベーションの持続方法が記された本は多く出版されていますが、本書はそのような自己啓発本とは一線を画しているといえるでしょう。勉強とは、今までの自分を捨てることであり、今までの環境から自由になることだと主張。勉強は変身であると語るこの考え方は、学ぶことへの向き合い方を考えさせられます。

副題になっている「来たるべきバカ」とは、勉強をした先に一周回って見えてくるものだそう。ハッとするような気付きがたくさん詰まっている一冊です。

「頭を空っぽにして行動する」とは何か?身体と行為の哲学

 

身体と行為にまつわる哲学に始まり、書評やファッション批評、美術批評、さらにはエッセイなどがまとめられている作品です。

タイトルにもなっている「意味がない無意味」、そして「意味がある無意味」があるとしたら、それは何なのでしょうか。

著者
千葉雅也
出版日
2018-10-26

 

2018年に刊行された千葉雅也の作品。批評や哲学論文など多岐にわたる文章が「身体」「儀礼」「他者」「言語」「分身」「性」のジャンルごとにまとめられていて、千葉の哲学的思考が多方面にわたっていることを実感できる一冊です。

実は千葉雅也自身がギャル男ファッションをしていることもあり、「儀礼」のカテゴリーに収められているファッション批評が大変興味深いと読者の間でも話題に。とっつきやすく、それでいて文章は理路整然としているので、哲学初心者の方にもおすすめできます。

千葉雅也がアメリカ滞在で出会った物事を哲学する一冊

 

学外研究で訪れたアメリカ。千葉雅也がそこで気付いたのは、言葉の感覚の違いや、アメリカに住む人々の気質などです。

日本ではない国で、彼は何を見聞きし、考えたのでしょうか。

著者
千葉 雅也
出版日
2019-05-29

 

2019年に刊行された作品。『勉強の哲学』が出版されてすぐアメリカに渡った千葉雅也が、4ヶ月間の滞在中に考えたことをまとめたものです。エッセイと哲学的思考が混ざった文章で、広い視野で哲学的思考を用いて物事を見る千葉の慧眼が光っています。

聖なるもの、信頼、二人称などその視点は独特。ところどころに写真も挿入されていて、気軽に読むことができるでしょう。千葉雅也の思考の足跡を追うことができるはずです。

「芥川賞」候補作!千葉雅也初めての小説

 

「僕」は大学院で、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズの哲学を研究しています。進まない博士論文を抱えながら、ハッテン場に入り浸り、親友とドライブをし、家族とのわだかまりを抱えていました。ゲイであることと生きることに悩んでいます。

博士論文の締切(=デッドライン)が迫るなか、境界線上に生きる「僕」は……。

著者
千葉 雅也
出版日
2019-11-27

 

2019年に刊行された、千葉雅也の小説です。「芥川賞」にノミネートされ、話題になりました。新進気鋭の哲学者が執筆した初めての小説とあり、文学界でも大きな注目を集めています。

学生生活を送る青年の様子が短い文章で綴られ、断片的なそれがいくつも連なっている構成。起承転結のあるストーリーが描かれているわけではないのですが、それがよりいっそうリアルに彼の生活を読者に想像させます。

性の境界線上で行ったり来たりし、「決定」をできないでいる主人公の姿に、読者も何か感じるものがあるはず。哲学を学ぶ「僕」と千葉自身の姿が重なり、物語にさらなる深みをもたせています。博士論文の締切も迫り、さまざまなことにケリをつけなければならない「僕」はどのような道を生きるのでしょうか。

哲学者・千葉雅也の活躍を知ることができる作品を紹介いたしました。哲学書、エッセイ、小説、どれも彼の学ぶ「哲学」の思考が関わっていて、深い魅力があります。ぜひお手にとってみてくださいね。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena
もっと見る もっと見る