『アリバイ崩し承ります』は原作を読むべき!エンタメ性とお手本のような謎解き展開

更新:2020.1.15

商店街のとある時計屋には、一風変わった貼り紙があります。そこには「アリバイ崩し承ります」と書かれています。 そんな特徴的な設定からどんどん物語に引き込まれていく、『アリバイ崩し承ります』。捜査一課の新米刑事が持ち込む難事件のアリバイを、時計店の女性店主が次々と崩していきます。ただのミステリー小説ではなく、アリバイ崩しに特化した短編集です。 この記事では2020年2月にドラマ化がされることで話題となっている『アリバイ崩し承ります』の、あらすじと魅力を紹介していきます。

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『アリバイ崩し承ります』が面白い!ユニークな設定と王道の探偵ものにハマる

 

「2019年本格ミステリ・ベスト10」で第1位を獲得した大山誠一郎の『アリバイ崩し承ります』は、時計店の女性店主が容疑者のアリバイを崩していくミステリー小説。

ミステリーに馴染みのない方でもスラスラと読める、 7つの事件で構成された短編集です。

本作の魅力は、アリバイ崩しの見事さ。時計店を営む女性店主・美谷時乃が、捜査一課の新米刑事「僕」が持ち込む難事件のアリバイを、パズルがハマるような気持ちよさとともに崩していきます。

なぜ時計店の店主がアリバイ崩しを請け負うのか?その理由がかなりぶっ飛んでいるのですが、それは後ほどご紹介します。 

そして、もう一つの魅力はミステリー初心者にもおすすめできる、分かりやすさ。各話で解かれる解説は、丁寧で論理だっており、読んでいて思わず「なるほど!」と声に出てしまいそうになります。

これ以降、そんな魅力を詳しくご説明していきましょう!

 

まずはあらすじを紹介

まずはストーリーを簡単にご紹介しますが、魅力から知りたい方は読み飛ばしてしまっても問題ありません。

舞台は鯉川商店街にある「美谷時計店」。捜査一課の新米刑事「僕」は偶然見つけた時計店で、電池交換をしてもらうところから物語は始まります。 

入ってみると、その時計店には不思議な貼り紙がありました。

「アリバイ崩し承ります」
「アリバイ探し承ります」

(『アリバイ崩し承ります』より引用)

一体どういうことなのか……。店主の美谷時乃によれば、この時計店では先代の店主の方針で、時計にまつわる依頼を何でも受けている、というのです。

報酬は、アリバイ崩しに成功したら1回5千円。 悩んだ末に「僕」は、今抱えている、ある殺人事件のアリバイ崩しを依頼し……。

作品の魅力:エンタメ性バツグン!ユニークな設定とキャラミスとしての面白さ

本作の魅力のひとつは、キャラクターミステリーとしての面白さ。キャラクターミステリーとはさまざまな事件を、個性豊かな登場人物たちが解決していく、キャラがたった小説のことで、ライトノベルなどで増えているジャンルです。

本作では、アリバイ崩しを承る美谷時計店の店主・美谷時乃が一読するとなかなか忘れられないキャラです。

彼女は先代の店主である祖父から引き継いで、時計店を営んでいました。美谷時計店では時計の修理だけでなく、時計にまつわる依頼、つまり「アリバイ崩し」や「アリバイ探し」も受けていたのです。

なぜ時計店がアリバイ崩し? とだれもが疑問に思うところ。その根拠について時乃は

「アリバイがあると主張する人は、何時何分、自分はどこそこにいたと言います。
つまり、時計がその主張の根拠となっているのです 

ならば時計店こそが、アリバイの問題をもっともよく扱える人間ではないでしょうか」 

(『アリバイ崩し承ります』より引用)

アリバイには時計が関連しており、時計を扱う時計店こそがアリバイ崩しに適している、と主張するのです。正直納得できないところもある理屈ですが、これが先代の店主の考えだと、真面目に答えている様子は、なぜか反論できない力強さに満ちています。

そんなちょっと不思議ちゃんな時乃。しかしアリバイ崩しの能力は高く、刑事の「僕」が持ち込む難事件を次々と解いていくのです。

天然なところがありながらも、びしっと決めるところは決めてくれる時乃。そのギャップからか、何だか憎めない性格からか、なぜか惹かれてしまいます。

著者
大山誠一郎
出版日
2019-11-25

作品の魅力:お手本のような謎解き要素!

もうひとつの本作の魅力はやはり、アリバイを崩していく謎解き部分。

各事件のページ数は大体50ページ。「僕」が事件の概要を説明して、その後、時乃がアリバイを崩していくスタイルの短編が7つ収録されています。読者が安心して読める型に、一つひとつの事件に無駄なストーリーがないことから、純粋に謎解きを楽しめる内容になっています。

また、メインの見所である、時乃の説明が分かりやすいのもポイント。

「この事件ではここでこんなトリックが使われている」と、犯人たちが仕組んだ巧みなアリバイの謎を、丁寧に、時計屋だけに、時間軸も分かりやすく解説しています。

分かりやすい説明によって深く理解できるので、トリックが分かった後に読むと、当初とはまったく別の視点になって楽しめるストーリーです。まさに、謎解きミステリーのお手本。分かりやすいながらも読みごたえがないということもなく、広くおすすめできる作品なのです。

『アリバイ崩し承ります』のおすすめエピソード1:ストーカー元夫のアリバイ

これ以降は、作中からいくつかおすすめのエピソードをピックアップしてご紹介します。

まずは第1話、時乃と「僕」が出会い、初依頼となる事件です。

県立医科大学の大学教授・浜沢杏子が、自宅で遺体となって見つかります。容疑者として挙げられたのが、彼女の元夫である菊谷五郎です。

菊谷はギャンブル癖が原因で杏子と離婚。離婚後もその癖は治らず、何度も杏子にお金を無心していました。

しかし、杏子の胃の消化物から割り出された死亡推定時刻、菊谷にはアリバイがありました。

絶対に崩すことのできないアリバイに、なすすべがない警察。そんななか、時乃は話を聞いただけであっという間に菊谷のアリバイを崩してしまいます。

ヒントとなるのは、被害者の死亡推定時刻が確定される胃の内容物。

この事件には、誰もが当たり前だと思っていた常識をくつがえすトリックが隠れています。時乃の鋭い観察力が伺えるエピソード。圧巻です。

『アリバイ崩し承ります』のおすすめエピソード2:祖父と思い出のアリバイ

続いてご紹介するのは、第5話です。ここで、なぜ時乃は祖父の時計店を継いで、アリバイ崩しをしているのか、が明かされます。彼女がアリバイ崩しを習得していく様子、祖父との素敵な思い出がつづられています。

ある日、久しぶりの非番となった「僕」は、新しい壁時計を買うために美谷時計店へと向かいました。そこには謎の木箱を拭く時乃の姿。その箱は祖父が作った「時間を動かす道具」とのこと。

この箱をきっかけに「僕」は、彼女が時計店とともにアリバイ崩しも継いだ理由を知ることになります。

幼稚園のときに両親を事故で亡くした時乃は、唯一の肉親である祖父に引き取られました。そして一緒に暮らすうち、時計修理に興味を持ち始め、少しずつ教えてもらうようになります。

やがて字が読めるようになると「アリバイ崩し承ります」という店の貼り紙に気づく時乃。

祖父からその理由を聞いた彼女は、時計修理と同じように「自分もアリバイ崩しをしてみたい」と興味を持ちます。こうして時計修理だけでなく、アリバイ崩しの特訓を受けるようになるのです。

小学四年生になったある日。祖父は初めて、実戦型のアリバイ崩しを出題します。その問題に関係するのが「時間を動かす道具」でした……。

7つの短編作品の中で唯一誰も死なないアリバイ崩し。時乃を想う祖父の温かい気持ちが伝わるエピソードです。

また、当時小学四年生だった彼女の観察力は鋭いもの。幼い少女のまっすぐな様子は、何かに悩んでいる人にぜひ読んでいていただきたい内容です。

著者
大山 誠一郎
出版日
2018-09-07

『アリバイ崩し承ります』原作を踏まえたドラマ作品の見所を解説!

原作は事件の概要を刑事の「僕」が説明し、それを聞いた時乃がアリバイ崩しをしていくというスタイル。無駄のない2人のやりとりで、タイトルどおり「アリバイ崩し」をメインにしたシンプルなストーリーで描かれています。

ドラマでも2人のやりとりや関係性がどのように描かれていくのか、そのあたりが注目ポイントとなるでしょう。無駄のないやりとりだけですと尺が足りない部分もあるかと思われるので、どんなところで厚みを出していくのかに期待したいですね。
 

ちなみに原作では、ミステリー要素だけでなく、時乃と「僕」が少しずつ親交を深めていく姿が作品に厚みを出しています。原作で彼らの初々しい様子をご覧いただくのもおすすめです。

ドラマの詳細は、公式サイトなどでご覧くださいね。

土曜ナイトドラマ『アリバイ崩し承ります』|テレビ朝日

時計屋がアリバイを崩すという、ちょっと、いや、かなり変わった設定の本作。しかし奇抜なだけでなく、王道のミステリが魅力で、あっと驚かされるアリバイトリックはさすがです。ミステリーになじみのない方にもおすすめです!

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