5分でわかるインフォームド・コンセント!歴史や目的、問題点などを簡単に解説

更新:2020.1.21

近年、医療現場で当たり前の概念として用いられる「インフォームド・コンセント」。しかし成立させるのは簡単ではありません。この記事では、歴史や目的、パターナリズムとの違い、問題点などをわかりやすく解説。また理解を深めることができる、おすすめの関連本も紹介していきます。

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インフォームド・コンセントとは。誕生の歴史と目的を解説

 

インフォームド・コンセント(Informed Consent)は、主に医療の分野で用いられる言葉です。具体的には投薬や手術などの医療行為をおこなう際、患者が医師から十分な説明を受けて治療の内容を理解したうえで、自分の意志でその方針に同意や拒否をすることを指します。

かつては、医師の権威が非常に高く、その治療方針に患者が関与する余地はありませんでした。しかし第二次世界大戦後、ナチスの医師がおこなった人体実験が犯罪として裁かれたこと、また人権への意識が高まったことなどを背景に、患者の権利に配慮する必要性が叫ばれるようになったのです。

たとえば1973年、アメリカの病院協会は、「患者の権利章典」を採択。「患者は人格を尊重したケアを受ける権利がある」としたうえで、「患者は何かの処置や治療を始める前に、インフォームド・コンセントが成立するのに必要な情報を医師から受ける権利がある」と明記されました。

その後、世界医師会も1981年に「患者の権利宣言」を採択。そのなかでも「患者は自分自身に関わる自由な決定をおこなうための自己決定権を有する」と、自分の意志で医療行為を判断する権限をもつとされています。

このような世界的な動きを背景に、日本でも1990年代からインフォームド・コンセントの考えが普及していきました。日本医師会は「説明と同意」と表現しましたが、後述するようにこの訳には批判も多く、「納得診療」という表現も提案されています。

インフォームド・コンセントとパターナリズム

 

先述したように、かつては専門家である医師の権威が重視され、患者は医療行為を医師にゆだねざるを得ない状況でした。意思決定の主導権は医師にあり、患者は医師が最善と考えた治療方針に従うことになります。医師が強者、患者が弱者という関係性です。

このように、強者が弱者のためになるとして本人の意志は問わずに行動することを「パターナリズム」といい、日本語では「父権主義」などと訳されます。

一方でインフォームド・コンセントは、患者の知る権利や、自己決定権を尊重した関係です。重視されるのは、医師と患者が十分なコミュニケーションをとり、患者が納得して治療方針に同意できる環境をつくりだすことだといえるでしょう。

その際、医師は患者が理解できるかたちで、病名をはじめ、選択可能な医療行為、それぞれの危険性や副作用、代替案の有無と内容など、患者にとって必要な情報を提供しなければいけません。また医師と患者が対話を通じてお互いの考え方や価値観をすり合わせることも必要です。

理想的なインフォームド・コンセントとは、医師と患者が信頼関係を構築し、協力して治療ができる状態だといえるでしょう。

インフォームド・コンセントの問題点

 

インフォームド・コンセントにおいて重要なのは、医師の適切な説明をもとに、患者が納得できる状況を整えたうえで、患者の意思で治療方針を決めることです。

しかし現実的には、専門家である医師とそうでない患者の関係は対等にならないことがあります。膨大な知識が必要な医療行為について、医師が一方的に説明し、患者が自分の状態を理解できずに医師の意見を無批判に受け入れている状況は、インフォームド・コンセントが成立しているとはいえないでしょう。

このような状態を懸念する立場からは、「説明と同意」という訳語は本来のインフォームド・コンセントの意義をそこない、パターナリズムを助長しかねないという批判がされています。

その一方で、仮に患者が非合理的で適切でない治療方針を選択した場合、それを尊重することは適切でないという指摘もあります。専門家である医師の見地と、患者の自己決定権の間で、どのようにバランスをとることができるか、議論が続いている状況です。

そのほかにも、患者が幼児である場合、何らかの要因で意思疎通ができない場合などは、そもそもインフォームド・コンセントが成立しないこともあります。

このように、医師と患者が良好な関係を築くためには、いくつもの障害が存在しているのです。

インフォームド・コンセント成立までのレポ

著者
郡司 道子
出版日

 

作者は、「腰部脊椎管狭窄症」にかかり、猛烈な腰痛を抱えていました。治療のために訪れた病院で、担当医師に治療法を徹底的に質問したそう。本作は、インフォームド・コンセントを成立させて手術をすることを決め、無事に成功するまでの過程をまとめた作品です。

治療方針を決める過程で、作者の気持ちがどのように変化していったのか、医師と関係を築いていくためにどんな工夫をしたのか、詳しく知ることができるでしょう。

巻末には担当した医師も文章を寄せているので、ひとつの症例を双方の立場から見れる貴重な一冊です。

医師と患者がよりよい関係を築くためには

著者
磯部 光章
出版日
2011-05-17

 

作者は、長年臨床現場に立ちあい、医療教育にも従事してきた現役の医師。医療現場で起きるトラブルの多くは、医師と患者のコミュニケーション不全が原因だと指摘しています。

本作では、具体例を提示しながら医師と患者の価値観の違いを浮き彫りに。患者は自分の症状や心配ごとをうまく伝えるにはどうすればよいか、医師は患者の意図をどうくみ取ればいいのか提言しています。

立場が異なる人同士でインフォームド・コンセントを成立させることは、簡単ではないと痛感させられる一方で、そもそも立場や思考が異なっていると認識するだけで変わることがあるということもわかります。

またパターナリズムからインフォームド・コンセントに変化していった過程や、そのほかのアプローチ方法についてもコンパクトに解説されていて、そちらも興味深く読めるでしょう。

インフォームド・コンセントを成立させる手助けに。医療用語の言い換えを提案した本

著者
国立国語研究所「病院の言葉」委員会
出版日
2009-03-12

 

本作に携わっている国立国語研究所は、日本語学や言語学などを研究し、国民の言語生活上の問題の改善を提言している組織です。

インフォームド・コンセントを阻害する要因として、医療関係の用語が日常会話の語彙と大きく異なっていることがあげられるでしょう。

そこで本作は、医療者がよく使う言葉を厳選し、伝わらない理由を解説。「伝わらない言葉」を「伝わる言葉」へ言い換える手ほどきをしてくれています。患者にとっても医療者にとっても、双方に役立つ一冊でしょう。

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