個性的な怪物(けもの)たちが隠れ住む現代日本で、主人公の出生の秘密を追うファンタジー&サスペンス、『怪物事変』。作中に散らばる謎とキャラクターの魅力に引き込まれ、どんどん夢中になってしまう作品です。 この記事では、2021年1月からアニメ放送が開始され、注目を集めている本作の魅力について、名言なども紹介しながらお伝えしていきます。
本作の核となるのは、主人公・夏羽(かばね)の出生に隠された秘密。その手がかりは「命結石」と呼ばれるもので、それをめぐって時には激しいバトルがくり広げられることも。
また、夏羽の秘密が明かされていく展開も魅力ですが、個性的なキャラたちもまた、本作の魅力。それぞれの怪物ならではの技や、背負っている過去などを知ると、どんどん作品にのめりこんでしまいます。
また、キャラが魅力的なのは設定だけでなく、作中のセリフに彼らの強い想いや信念が込められているから。読者の胸に響く「名言」も数多く登場し、読み進めるほどに、感情移入してしまいます。
ここからは、そんな魅力をさらに詳しくご紹介していきましょう!
鹿の子村で暮らしていた夏羽は探偵・隠神(いぬがみ)との出会いから、自分が人間と屍鬼(クーラー)の間に生まれた半妖であることを知ります。そして隠神が東京で営む探偵事務所「怪物屋」の一員として、働きながら両親を探すことに。
手がかりとなるのは、両親が夏羽に残したという「命結石」です。しかし、強大な力が封じられているこの石を狙っているのが、化狐の飯生(いなり)。石を巡って、狐たちとの熾烈なバトルが展開されていきます。
物語最大の謎として描かれているのが、夏羽の両親に関わる部分。
夏羽は、屍鬼(クーラー)と人間の間に生まれた半妖であることが分かっています。しかし、彼の両親が具体的にどのような人物であったのか、どうして夏羽を親戚の家に預けて消息を絶ったのか、多くの謎が残されているのです。
また、隠神によると屍鬼は本来は繁殖できない種族だといいます。つまり、「屍鬼と人間の半妖」は、普通ならば生まれるはずがないのです。
夏羽がどのようにして生まれてきたのか、謎は深まるばかり。この真相が如何なるものなのかは、隠神も興味津々です。
また、夏羽は、出生の謎だけでなく、成長していく姿によって物語の魅力を生み出しています。初めは両親に捨てられたと思い、無感情に生きていた彼。しかし隠神の「お前は捨てられてないよ」という言葉に心を動かされ、両親に会いたいという気持ちが徐々に人間らしい気持ちを呼び起こすのです。
さらに隠神の事務所で働くうちに、周囲の人間と交流することで、より人間らしさが育っていきます。
夏羽は両親と会うことができるのか、そしてその時に彼がどのような人物に成長を遂げているのかが、本作の最も楽しみな部分といえるでしょう。
- 著者
- 藍本 松
- 出版日
- 2017-03-03
夏羽の出生に関わる手がかりであり、物語の重要なキーポイントとなってくるのが「命結石」。両親から残されたものとして、彼が肌身離さず持っていたものです。
命結石には、怪物の衝動を抑える効果があり、この力で夏羽は鹿の子村で人間として暮らすことが出来ていました。
しかし、この石に秘められた力はそれだけではありません。実は結石とは、かつて強大な怪物たちがその力を封じ込めた石で、命結石の他にも「零結石」「幻結石」など、さまざまな石が全国各地に存在しているのです。
そして、他の結石が各地の怪物の長によって保管されていることなどから、夏羽の両親も相応の人物ではないかと推測できます。
夏羽にとっては両親につながる大事な手がかりですが、結石の絶大な力を手に入れようとしている化狐の飯生にとっては、利用したいアイテム。夏羽の事情などおかまいなしに、あれこれ策略を巡らせて、命結石を奪い取ろうとしてきます。
そして、結石が生み出されるきっかけとなった事件こそが、本作のタイトルにもなっている「怪物事変」。1000年前に人間と怪物の間で起こった大きな争いです。
夏羽の両親は、この怪物事変と何か関わりがあるのでしょうか?真相にたどり着くためには、結石を集めていくしかありません。命結石は今後の展開を左右する重要なアイテムといえるでしょう。
本作には数多くの怪物が登場し、それぞれに個性的な魅力を持っています。
化狸の隠神、蜘蛛(アラクネ)と人間の半妖であるシキ、雪男子(ユキオノコ)の晶(あきら)など、探偵事務所の仲間は全員が怪物の能力を持つ者ばかり。
なかでもミハイは、吸血鬼という古風なイメージの怪物でありながら、情報収集やハッキングも行い、現代の技術を駆使するというギャップのあるキャラクターです。
彼は長い寿命と暇に任せて豊富な知識と技術を習得しています。頼りにもなりますが、自分にとって面白いことが最重要という価値観のため、時には仲間を困らせることも。一筋縄ではいかないところが彼の魅力でもあります。
また、隠神たちと時に協力・時に敵対する化狐たちも、一癖あるキャラクターばかり。特に紺は、作者・藍本松も描きながらその可愛さを実感するほどの魅力を秘めているのです。
紺は初めは夏羽を狙う任務についていましたが、しだいに彼と仲良くなっていきます。交流の過程で変化していく彼への感情や、任務との間で葛藤する姿など、成長も感じられるので、つい応援したくなってしまうでしょう。
特に夏羽と紺の関係は、可愛らしくももどかしさが感じられ、これからどうなっていくのか目が離せない要素の一つです。
本作には読者の心に響く、名言と呼べるセリフも数多く登場します。その中のいくつかをピックアップしてご紹介しましょう。
まずは、こちら。
「死んだよ “泥田坊”はさ」
(『怪物事変』1巻より引用)
第1話のラスト、東京に向かう車中で隠神が夏羽に向けて言った言葉です。
鹿の子村で暮らしていた頃、いつも畑仕事をしている夏羽は「泥田坊」と呼ばれて蔑まれていました。汚れ仕事を押し付けられ、心を許せる相手もいませんでした。無感情に生きていたので鈍くなっていたところもあるかもしれませんが、虚しさもあったことでしょう。
しかし、隠神との出会いによって、全てが変わります。彼の偽装によって夏羽は鹿の子村では死んだことにされ、東京での新しい生をが始めるのです。
今まで何事にも無感動に生きてきた夏羽の悲しい生活の終わり、そして両親を探すという希望に満ちた新しい人生の始まりを感じさせる象徴的なセリフです。
つづいてはこちら。
「殺しを良しとしてるんじゃない…覚悟をしてるんだ…
あんたと違ってね」
(『怪物事変』4巻より引用)
こちらは第12話で登場。このエピソードでは、怪物屋のメンバーであるシキの過去とともに、彼の叔父の許されざる行為が明らかになります。怒りから叔父を殺害しようとするシキを見て、子供が殺しをやるなんて、と非難する叔父。それに対して隠神が言い放ったセリフです。
まだ14歳の子供であるシキが人を殺すことを、大人の隠神が認めるのは、残酷であるように感じるかもしれません。しかし、それは彼らがシビアな世界で、矜持を忘れずに生きていることの証でもあるのです。
怪物たちが身を置いている環境の過酷さと、そこで生きる彼らの精神的な強さを窺い知ることができるセリフです。
最後にご紹介するのは、こちら。
「これから…楽しいことも嬉しいこともいっぱい半分こするんだよ‼︎」
(『怪物事変』6巻より引用)
第20話に登場したセリフです。生き別れの双子の兄・結(ゆい)とようやく再会できた晶。激闘の末、瀕死の状態になってしまった彼を助けたい一心で、この言葉を晶が叫びました。
結は弟を守るため、辛苦を一人で抱え込んできました。このセリフには今まで兄が自分を守ってくれていたことへの感謝と申し訳なさ、そして「兄と一緒に幸せになりたい」という願い、さまざまな感情が込められています。
兄弟がお互いを大切に思いあっていることが丁寧に描かれているからこそ、これまでの2人のすれ違いが切なくもあり、晶の想いが読者の胸を打ちます。
- 著者
- 藍本 松
- 出版日
- 2018-11-02
本作は、ジャンプフェスタ2020のステージイベントにてアニメ化が発表され、2021年1月から放送開始しています。
怪物たちがその能力を駆使してくり広げるバトルアクションは、原作でも見応え抜群に描かれており、アニメでも迫力あるシーンとなることは間違いないでしょう。
また、夏羽が人間的に成長していく表情の変化や、作中に数多くする名言シーンなども、必見ポイントです。声優など詳しい情報は、TVアニメ『怪物事変』公式サイトをチェックしてみてください。
夏羽の出生や結石にまつわる部分は、多くの謎が残されているため、原作を読み込んでおくとアニメもスムーズに理解できるかもしれませんね。
怪物の結石をめぐる戦いの行方、そして夏羽の出生の秘密、気になる要素が盛りだくさんで、続きが待ち遠しくなってしまうことでしょう。