石鹸などのバス用品メーカーに勤める地味なOLと、商品開発部に所属するイケメンエリートに共通するのは「においフェチ」。『あせとせっけん』はそんな2人が出会い、社内恋愛をくり広げていくラブコメディです。 彼女らと同じように、悩みながらも恋愛を楽しんでいる大人におすすめの恋愛漫画です。「このマンガがすごい!2020」でもトップ20に選ばれ、注目が集まっています。
「君のにおいを嗅ぎに来ます!」
(『あせとせっけん』1巻より引用)
そんな驚きの出会いから始まる本作。
「少し動いただけでも汗をかいちゃう……」なんて悩む女子もいるでしょう。本作の主人公は、そんな身近な悩み「汗かき体質」がコンプレックスのOLです。化粧品&バス用品メーカー・リリアドロップの経理部に務めています。
そんな彼女の「におい」を嗅ぎにくるのが、同じ会社のエリートプランナー。においフェチの彼に、背後から、正面から……壁に追いやられるようににおいを嗅がれます。彼女のにおいを嗅ぐその姿が、なんともエロい作品です。
主人公・八重島麻子(やえしまあさこ)は、出社してすぐ、トイレで汗のにおい対策をするのが毎日の日課になっていました。汗をかかぬようなるべく動かず、そして人様に汗っかきなことが気づかれないよう地味に過ごしていた麻子。
そんな彼女は、大好きな自社の新商品を見つけ、展示物に見とれていました。そんな時、見知らぬ男性に声をかけられます。鬼気迫る男性から、なんと「においが好きだからかがせてほしい」と言われるのでした……。
その男性の名は名取香太郎。麻子の会社の開発部に勤めるプランナーだと言います。
最初はにおいを嗅がれることを拒否していた麻子ですが、リリアドロップの商品が大好きな彼女は、「新商品開発のため」と真剣な眼差しの彼に協力することに。それから彼は、宣言どおり1週間、毎日においを嗅ぎにくるのでした。
目標としていた新商品の企画提案も終わり、1週間が終わります。最終日、これからもにおいを嗅ぎたいという名取。そのまま麻子の太腿に手が伸びてきて……男性経験のない彼女は戸惑います。
出会った当初から強引な名取と真逆な性格の麻子は、何かあるたびに一進一退。いかにして彼女の心を射止めるのでしょうか。
麻子は悩みを抱え込んでしまう性格のため、なかなか前進しない展開も多くあります。しかし名取のリードもあって、飽きずに楽しめる恋愛漫画となっています。
2人が互いに惹かれあったり、悩んだりする様子が丁寧に描かれている純愛ストーリーです。青年誌である「週刊Dモーニング」での連載ではありますが、女性からの支持も根強いのはそのためでしょう。
本作が気になった人は、スマホアプリのインストールをおすすめします。数話無料で読むことができるため、「読んでみたらあまり好きじゃなかった……」なんてことを防げます。下のボタンから簡単にインストールできるので、ぜひ使ってみてくださいね。
社内恋愛を題材にした漫画というと、恋路を邪魔する人がでてきたり、ドロドロした関係になったりと、人間関係のトラブルが描かれることも多々あります。
しかし本作では、読者が不快になるようなネガティブな人物は登場しません。作者が「自分が描きたいと思えるポジティブなキャラクター」にこだわった、本作の主な登場人物を紹介します。
- 著者
- 山田 金鉄
- 出版日
- 2018-10-10
あらすじでも説明したように、本作は麻子のにおいを嗅ぎたいがために、名取が猛アプローチをかけるところから始まる物語です。当然、麻子のにおいを嗅ぐシーンが頻出します。
会社の給湯室で、非常階段で……ときには覆いかぶさるように、ときには勢いよく麻子の胸元に飛びつくようににおいを堪能する名取。麻子の「におい不足」になると気迫がやつれたり、ちょっと変態じみています。
しかし本作の「においフェチ」という要素は、麻子と名取の関係性を深める役割も担っています。
麻子にとって名取は、自分の好きな香りを開発している人。そのため、新商品の開発に協力できるなら、どんな形であれ麻子にとっては喜ばしいことでした。
その証拠に、名取が「俺ばっかりいい思いして申し訳ない」というと、麻子はこう返します。
「いい思いならたぶんずっと前から……私の方がしています」
(『あせとせっけん』1巻より引用)
お互いに好意を持っていることが伝わるシーン。彼らのやりとりに、ほっこりしてしまいます。
また、名取は麻子のにおいを嗅いで、商品開発に役立てているだけではありません。嗅覚が人より敏感な彼は、麻子の「においの違い」で、わずかな感情の違いにも気付くことができるのです。
表面上は楽しそうに振る舞っていても、においを嗅ぐだけで彼女の「心の奥に抱えている寂しさ」を察知します。
「におい」をきっかけとして、心を通じ合わせていく2人。名取の奇行も面白く、男女関係なく楽しめる内容となっています。
仕事ができ、社内でも注目を集める存在である名取とは対照に、麻子はとにかく自分に自信がありません。
恋人同士になれても、名取を雲の上の人のように感じています。そんな麻子のコンプレックスを、少しずつ和らげていく名取。彼の器の大きさに、思わず読者も惹きつけられます。自分に自信を持てない人は、「こんな恋人がほしい」と思うかもしれません。
また、名取が提案した「同棲」に麻子が悩むエピソードも。
同棲をすることで「嫌な面を見られるかもしれない」という不安があるといいます。
想像が先走り、幻滅されるのを怖れる麻子。そんな彼女や名取を救うのは、会社の同僚たち。それぞれ違う立場からアドバイスをくれます。実際に勇気づけられるようなリアルな意見を、一部紹介します。
名取が意見を求めたのは、同期で営業部の立石。3年付き合い、同棲までした彼女と別れた過去があります。
彼がフラれた理由は、彼女から子どもがほしいと言われ、受け入れることができなかったから。仕事がうまくいっていないかった当時、その不安から彼女の希望を通す勇気がなかったと語ります。その経験から、金言となるアドバイスをします。
「大事なのは……同棲で生じた問題を2人で解決することなんだよ」
「不安や不満を許容してもなお相手と一緒にいたいと思えるかどうかなんだ」
(『あせとせっけん』4巻より引用)
また麻子も、恋人と同棲している同僚の坂下に意見を求めます。「名取と結婚する気があるのか」と聞かれ、麻子は「そういう話はしていない」と答えました。「なぜ同棲するのか」が決まっていない麻子に、彼女はアドバイスを送ります。
「無理に結婚を目指さなくてもいいから、一緒にいる理由は自分のなかではっきりさせておくべき」と。一般論ではなく、坂下ならではの考えを伝えてくれるところに、グッとくるシーンです。
彼らの意見を踏まえて、2人はどのような決断をするのか、心情の変化にご注目ください。
- 著者
- 山田 金鉄
- 出版日
- 2018-10-10
前述のとおり、本作はフェチを前面とした変態性を楽しめる漫画ではありませんが、「多少なりとはエロいシーンを見たい」という読者の期待にもちゃんと答えてくれる漫画です。
麻子の家で初めて2人が夜をともに過ごすシーンや、温泉旅行に行って2人で露天風呂に入浴するシーンなど、イチャイチャがたくさん絵が描かれています。
なかでも注目してほしいのは、オフィスラブならではの、周りから隠れてイチャイチャする場面。
給湯室でこっそり逢引したり、滅多に人が来ない書物庫の奥で大胆なことをしたり……なかでも、会議室を貸し切って2人でランチをするシーンは見所です!
突然ミーティングルームの鍵を締めた名取。なにが始まるのかと思えば……麻子のにおいを真剣に嗅ぎだします。彼の部屋で過ごした夜を思い出し、赤面する彼女。会社で昼間からイチャイチャしていて周囲の人にばれないのか、読んでいるこちらまでドキドキさせられてしまいます。
麻子とイチャイチャするためなら、他のことなどお構いなしという名取の性格も読み取れるシーン。彼女を愛する真っ直ぐな姿に、ときめく女性読者も少なくないはずです。
このように、キュンとするようなシチュエーションでイチャイチャする2人がたくさん描かれているので、ぜひお気に入りのシーンを見つけてみてください。
また、本作の作者が様々なフェチへのこだわりをもって描いているからこその魅力にもご注目です。次章では作者のこだわりについて説明します。
登場人物のキャラクターや仕草にいたるまで、「こだわり」が本作では多くみられます。好きな人にはピンポイントでグッとくるような仕草や設定について紹介します。
たとえば名取ににおいをかがれている時の麻子の表情。「女子の赤面」が好きな作者は、さまざまなシーンで麻子を赤面させます。またその表情はシーンごとに微妙に異なるため、赤面女子フェチの方も楽しめるでしょう。
また彼女が普段から履いている「ストッキング」からも作者のフェチが伝わるシーンがこちら。
肌着をストッキングにしまうところがポイントだそうです。細かいこだわりを探しながら読むのも本作の楽しみ方の1つ。
作者・山田金鉄公式ツイッターでは、本人によるこだわりを、「心血ポイント」として解説しています。制作の裏側を知ることができるので、作品と合わせてチェックしてみてください。
『あせとせっけん』が初の連載作品である作者。今後に期待が高まります!気になった方はぜひ、本作を手にとって読んでみてください。
- 著者
- 山田 金鉄
- 出版日
- 2018-10-10
本作に登場する麻子の手料理にも注目してみてください。読者の中で「美味しそう!」と話題です。
単行本を買うと、カバーの折り返しに「あてにならないレシピ」として作り方が掲載されているのも嬉しいポイント。実際に再現する人も続出しています。
ここでは、簡単に再現できる豆腐を使った料理のレシピと鶏肉を使ったレシピを紹介します。
①鶏もも肉のネギだれ焼き
材料(1~2人分)
適量(ネギだれ):
(『あせとせっけん』1巻より引用)
香りに敏感な名取は、この料理を一口食べてこう言います。
「ネギが良いのか……?いやごま油の香りも最高だな……全部最高だ!」
(『あせとせっけん』1巻より引用)
②サクサク冷やっこ
材料(1つ分)
こちらは、豆腐に揚げ玉とネギをトッピングして昆布つゆ(原液) をかけるだけ。冷奴と揚げ玉の相性が抜群です。
「におい」を接点としてつながる2人だからこそ、料理が出てくるとより幸せを感じるシーンになっています。
本作が好きで、他にも似ている漫画作品を読みたいと思う方は、『フェチップル』という作品がおすすめです。
- 著者
- るり原 ズラチー
- 出版日
『あせとせっけん』はにおいフェチをテーマとした漫画でしたが、『フェチップル』は「背中フェチ×髪の毛フェチ」が楽しめる作品です。
筋肉のほどよくついた背中を持っている、髪フェチの男性・柚木と、豊かな長い黒髪をしている、背中フェチの女性・言花が居酒屋で運命的な出会いを果たすところから物語はスタート。
2人は付き合うことになりますが、お互いの髪と背中にしか興味がありません。究極のフェチカップルです。言花が体を露出した格好で寝ていても髪にしか目がいかない柚木。対する彼女は、風邪を引いて寝込んでいる時、柚木が彼女のことを心から案ずる言葉をかけても、
「今のセリフ向こう向いてもっかい‼」
(『フェチップル』1巻より引用)
と、あくまで背中にしか興味がありません。
時に本当に愛し合っているのか不安になるほど、体のパーツへの偏愛がたっぷり詰まった作品です。
『あせとせっけん』よりもさらにフェチ漫画としての濃度の濃いラブコメディとなっています。自分の性癖に引け目を感じている人にはあわせてオススメの漫画ですので、気になる方は無料で読めるスマホアプリでぜひ読んでみてください。