『七色いんこ』が知られていないのはもったいない!隠れた名作が無料で読める!

更新:2020.4.8

『鉄腕アトム』や『ブラックジャック』が有名すぎて、あまり知られていない手塚治虫の名作があります。それが『七色いんこ』。名俳優にして大泥棒の活躍を描いた演劇漫画です。ミステリアスな主人公の魅力とともに、演劇という独特の内容にも引きこまれます。 そして驚くのは、緻密に張り巡らされた伏線!それらがつながる瞬間、『七色いんこ』の魅力にはまってしまうはずです。それでは手塚治虫の隠れた名作ともいえる本作の魅力を、ご紹介していきます。 本作はスマホアプリで無料で読むことができるので、気になったらそちらからご自身で読んでみるのもおすすめです。

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『七色いんこ』が面白い!名作なのに知られていないのはもったいない!

『七色いんこ』が面白い!名作なのに知られていないのはもったいない!
出典:『七色いんこ』1巻

手塚治虫作品といえば、『鉄腕アトム』や『ブラック・ジャック』が有名ですよね。それらに比べると、本作『七色いんこ』はややマイナーな印象かもしれません。 

しかし、復刊によって読者が手に取る機会が増えたことや、石田敦子の『HeiSei七色いんこ』、中谷チカの『劇団二十面相VS七色いんこ』など、リメイクやオマージュ作品の登場によって再び注目され、人気が高まっているのです。

本作のテーマは演劇。主人公は知る人ぞ知る、どんな観客も魅了する実力を持った、代役専門の役者です。ところが彼にはもう一つ別の顏があって……。

なぜそんなことを続けているのか?彼を追いかける女性刑事につかまってしまうのか?いんこの素顔は?本名は?

クライマックスには、そうしたすべての謎を解く仕掛けが用意されています。ときに独特のギャグセンスを織り込みながら、そうと気づかせず用意周到に作り上げた『七色いんこ』の世界。まさに手塚作品の隠れた名作といえるでしょう。

この記事では、『七色いんこ』の面白さや魅力をご紹介していきます。本作はスマホアプリで無料で読むことができます。気になる方は、ぜひそちらもチェックしてみてくださいね。

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あらすじを簡単に紹介

あらすじを簡単に紹介
出典:『七色いんこ』1巻

七色いんこは代役専門の役者。素人ながら抜群の演技力で観客を魅了し、演劇界ではその名が知られています。しかし舞台への出演依頼のやり方が変わっています。

「新宿区私書箱5826432」宛てに手紙を郵送すること。

さらにいんこに代役を依頼する際の条件が「劇場で何が起こっても見て見ぬふりをする」というもの。実は、彼は劇場の観客から金目のものを盗む泥棒だったのです! 

そんな条件を飲んででも、彼に代役を依頼するのは、それほど観客の心を震わせる演者だから。

名俳優でありながら大泥棒というギャップと、決して素顔を見せないミステリアスな魅力に読者はどんどんはまっていくはずです。

七色いんこがかっこいい!

時にはコミカルに、時にはハードボイルドに、舞台によってさまざまな表情を見せるいんこ。ここからはその魅力を、より具体的にご紹介していきます。

本作はもとは雑誌「少年チャンピオン」で連載されていたため、少年漫画らしいコミカルな描写も見られます。クールな主人公が時に飼い犬に振り回されたり、社会風刺的なセリフをギャグ要素として挟んだり、手塚治虫独自のセンスが光ります。本作を語るのに欠かせない特徴といえるでしょう。

また、いんこが役者として舞台で披露する演目はもちろん、ストーリー展開そのものが演劇に対するオマージュとなっている作品も少なくありません。まるで舞台の外にも演目が広がっていくような、一種独特の世界観を味わえます。

さらに後半には、突出した演技力と起点の効いた泥棒家業をこなしていた主人公に、「ホンネ」と名乗る不思議な存在が絡みます。完璧に見えた主人公の、内に秘めた闇の部分にスポットが当たるのです。そしてついには予想もつかない方法で、彼はこの問題に立ち向かいます。

コミカルな描写、独特の世界観、主人公の裏側、こうした手塚作品ならではの魅力が、七色いんこのカッコよさを引き出しているといえるでしょう。

おすすめのエピソードなども紹介しながら、次はその魅力を詳しくお伝えしていきたいと思います。

著者
手塚 治虫
出版日
1981-09-01
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手塚治虫のギャグセンスに脱帽!「日本の国土」って何?心身症を治す方法とは?

手塚治虫のギャグセンスに脱帽!「日本の国土」って何?心身症を治す方法とは?
出典:『七色いんこ』6巻

常人では思いつかないようなユーモアが炸裂するのが本作の魅力の一つ。

たとえばいくつか登場する「日本の国土!」というセリフ。キャラクターが驚いて思わず声をあげるとき、「えっ!」とか「なんだ!?」などの言葉が使われます。しかし、そこで突然叫ばれる言葉が「日本の国土ッ」。

一見すると意味不明ですが、当時の社会や政治の状況などを考慮すると、これは北方領土問題のことを指しているようです。

突拍子のなさを感じますが、連載当時、日本の誰もが多かれ少なかれ関心を持っていたであろう北方領土問題。それを一発ギャグへ昇華させてしまう、手塚治虫ならではの着眼点とセンスが感じられます。

また、物語が進むにつれて、いんこは自身の「ホンネ」と向き合うことにジレンマを感じ、心身症になってしまいます。

最初は幻覚や幻聴として現れる「ホンネ」に苛つく程度でしたが、やがて舞台で演技はおろか、車の運転もままならなくなってしまうのです。途方に暮れるいんこでしたが、『作者を探す六人の登場人物』という戯曲からヒントを得て、解決策を思いつきます。

それはなんと、いんこ自身が作者である手塚治虫に会いに行き、直談判して心身症の設定を取り消させてしまうというもの!

原稿用紙の上でくり広げられる、いんこと手塚治虫の応酬には注目。本来作品を思いどおりにできる作者の手塚が、自ら生み出した登場人物、いんこの勢いに押される様子は、すっかり関係があべこべです。

なにより、作者が登場人物と対峙する場面を描くとは、普通ならば思いつかない展開です。あり得ないことも実現させてしまう、手塚治虫の思い切りのよさには思わず感心します。

演劇に合ったストーリーに引き込まれる!

演劇に合ったストーリーに引き込まれる!
出典:『七色いんこ』4巻

毎回さまざまな舞台に出演する「いんこ」。そのつど数々の演劇作品に触れられるのも、本作の楽しみの一つです。

そして、いんこが演じる舞台の外でも、テーマとなる演劇になぞらえて展開するストーリーが見もの。

登場人物たちの人間ドラマとして描かれる一方で、フィクションならではの非現実的で不思議な出来事が起こることもあります。

『オンディーヌ』では水の精を思わせるような不思議な少女が登場したり、『青い鳥』ではコンピューターが人間を敵として攻撃してきたり、オカルトからSFまで、その展開はさまざま。

演劇をテーマにすることで、幅広いジャンルの作品をモチーフにしたネタが楽しめます。

『七色いんこ』おすすめエピソード:ハムレット

 

シェイクスピアの名作『ハムレット』の主演俳優が麻薬密売の容疑で捕まり、出演できなくなります。公演直前の事件に頭を抱えた演出家は、半信半疑ながら七色いんこに代役を依頼するのですが……。

記念すべき第1話であり、七色いんこや千里万里子(せんりまりこ)という主要人物の紹介も兼ねられているエピソードです。

いんこの扮装スキルや演技力の高さ、そして華麗な盗みの手口などが披露され、あっという間に彼の魅力にひき込まれます。

いんこを追う刑事の千里との関係や、彼の出自に関わる秘密についてものほめかされていて、今後の展開への期待が高まる第1話です。

 

著者
手塚 治虫
出版日
1981-09-01
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『七色いんこ』おすすめエピソード:人形の家

『七色いんこ』おすすめエピソード:人形の家
出典:『七色いんこ』1巻

イプセン原作の『人形の家』は、夫の人形のように生きてきた女性が、自分自身の人生を歩むために家を出ていく物語。

この舞台の主演女優として地位を得たノーラは、いつしか夫のこともないがしろにする高慢な女性となっていました。

妻の態度を改めるきっかけを求め、夫・ジミーは、自身の代役として七色いんこを招き、ノーラと共演させようと考ますが……。

ノーラとジミーという2人の関係が、演劇の『人形の家』と対比して、夫婦の立場が逆転しているところが面白く感じられるエピソードです。

いんこの演技に圧倒された後も、自身のプライドにばかり固執するノーラ。その結果、ジミーをはじめとする全てのものが、彼女のもとから去っていきます。 

彼女がどのような結末を迎えたのかは、ぜひご自身の目でお確かめください。 
 

『七色いんこ』おすすめエピソード:化石の森

 

以前の仕事で麻薬の密売組織から金を盗んだために、いんこは密輸団から追われ、捕まってしまいます。金のありかを聞き出すため、密輸団は素性を隠して知人の家の防空壕跡を借り、そこでいんこを拷問しようと考えるのですが……。

緊迫した状況下でそれぞれの人物の本心が露わになるという演劇作品、『化石の森』になぞらえたストーリーです。密輸団とのやりとりやアクションシーンなど、ハードな展開も見もの!

また、このエピソードには、手塚作品ではお馴染みのキャラクター「アセチレン・ランプ」が密輸団のリーダーであるのに加え、「鉄腕アトム」もイラストで登場します。

作品の垣根を越えてキャラクターを登場させる、手塚治虫らしい一面も感じられる一話です。2巻に掲載されていますので、ぜひご覧ください。

 

著者
手塚 治虫
出版日
1981-11-01

『七色いんこ』の結末に驚愕!今までの伏線が繋がる見事な最終回

 

ほぼ1話完結のストーリーとして展開されてきた本作ですが、実は各所に伏線が張られています。最終回ではそれらが一気に繋がって回収される爽快感を得られるでしょう。

第1話から、いんこの出自と関わりがある人物として、鍬潟隆介(くわがたりゅうすけ)という男の名が上がっています。その他にも、意外なエピソードが伏線になっているのです。

たとえば千里万里子の鳥アレルギーの設定。コメディ要素と思いきや、実はきちんとした理由があります。

また、千里がお見合いから逃げ出す話や、そのお見合い相手なども、予想外な形でいんこと繋がっています。その真相は、本編で確かめてください。

連載が続く過程で、キャラクターに新たな設定が追加されるのは、多くの作品で見られます。

しかし、この見事な伏線回収を見ると、作者が初めに七色いんこという人物を綿密に作り上ていたことがわかります。十分に計算されたタイミングで、少しずつ彼の過去に繋がるエピソードが配置されていったのでしょう。

最終回を踏まえた上で、最初からもう一度読み直すのも面白いはずです。いんこがどのような想いで舞台に立ち、演技に臨んでいたのか、また違った味わいを感じられるのではないでしょうか。

 

著者
手塚 治虫
出版日
1982-10-01
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俳優であり泥棒でもある七色いんこ、そのマスクの下に隠された真実とは?衝撃の最終回はぜひご自身の目で確かめてください!

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