青春の瑞々しさを感じた、おすすめの小説5冊

青春の瑞々しさを感じた、おすすめの小説5冊

更新:2021.12.14

青春って何だと問われて定義できなくとも、あれは青春だったと言うことはできる。持て余しているのだと思う。エネルギーを、時間を。持て余すばかりに、答えの出ない問答を繰り返して悩んでみたり、あてどもない旅に出たりするんじゃないか。そしてそんな時間は、人生にとってとても貴重なものだ、と私は思う。今回は私が勝手に青春の瑞々しさを感じた小説を5冊、ご紹介します

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青春の日々、教室の風景

著者
川島 誠
出版日
2005-06-25
教室の風景を思い出すことができる。かつて通っていた教室には確かに、いろんな種類の人がいた。この物語に出てくるこども達。‘‘笑われたい’’人も、斜に構えた人も優等生も、いわゆる不良と呼ばれる人も、いた。特に少年の思春期が描かれているので、自分が実際に通ってきたはずはないのだけれど、何故だか納得させられる。分かる気がするといった感触が不思議と、ある。男の人がこの本を読んだら懐かしく昔を思い出すんだろうか。「笑われたい」「バトンパス」「インステップ」「夏のこどもたち」から成る短編集。

くやしさを捨てながら走る

著者
関口 尚
出版日
2005-07-20
自転車を漕ぎながら、(教室であった出来事の)くやしさを捨てながら走っている……という始まりに早速心を持っていかれてしまった。くやしさを捨てながら走るっていう感覚、とても身に覚えがある。映画館で働く年上の女性に想いを寄せる高3の主人公植野、と今井。2人の、自分の気持ちを先に悟られまいとする微妙な言動の不自然さにリアリティがあって良い。そして今井の夢である「箏」に対する潔癖さと、それを言葉なくとも理解する植野との関係性が素敵で理想的でとても好きです。まさに青春の日々です。

悩んだり恋をしたり

著者
江國 香織
出版日
1995-05-30
「こうばしい日々」はアメリカに暮らす11歳の大介、「綿菓子」は小学生の‘‘みのり’’視点の物語です。大介は食堂でパーネルさんだけが器の縁にスープをこぼさないのをちゃんと自分で見て知っているし、お婆ちゃんに「みのりには恋はまだ分からないわね」と言われたって、みのりはちゃんとせつない恋をしています。そして2人とも、当たり前に悩みだってあるのです。11歳の頃の感覚っていくつかしか鮮明には覚えていないけれど、大人が思うよりも一人前に悩んだり恋をしたりしているんだよなぁと、思い出されました。

59年製のキャデラック、再会の旅

著者
橋本 紡
出版日
2009-07-28
18歳の夏休み、ひとり59年製のキャデラックに乗った少年が、ヒッチハイカー達を拾いながら旅をする。1985年の米国映画『ファンダンゴ』に強烈に憧れたお兄ちゃんと、お兄ちゃんに憧れた少年の再会の旅でもありました。映画の台詞でもある、「There's nothing wrong with going nowhere, son. It's a privilege of youth(あてどもない旅、それは若者の権利だ)」。古本屋さんで買ったこの本。上の台詞のところでページの角を折ろうとしたら、既に前の所有者に折られていて少し、嬉しかった。

2人だけの大切な物語

著者
田辺 聖子
出版日
1987-01-01
“あんたのはじめてと、アタイのはじめてとは質がちがう。アタイのはじめては中身濃いのんや。アタイが海見たん、これが二度目やもん”

ジョゼは祖母と2人で住んでいて、祖母は車椅子の彼女を人に見せるのをいやがり、夜しか出してはくれなかった。そんな訳もあって、ジョゼのはじめては全部、中身が濃いらしい。ほとんどジョゼと青年恒夫だけがこの本の登場人物で、2人の間で起こること一つひとつがとても瑞々しくて貴重に感じられます。26ページほどのお話ですが、足りない描写なんてまったく無く、私にとって、とても大切な物語になりました。

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