ハードSFとは?定義とおすすめ小説を紹介!海外の名作から、日本の傑作まで

更新:2020.2.25

SF作品のなかでも、科学的・論理的に整合性のとれたアイディアを用いた「ハードSF」というジャンルがあります。緻密に計算しつくされた設定が面白く、科学のもつ可能性を感じさせてくれるのが魅力でしょう。この記事では、ハードSF小説のなかから特に読んでおきたい作品を、海外の名作から日本の傑作まで紹介していきます。

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ハードSFとは。定義を解説

 

ハードSFとは、SFのなかでも本格派の作品、または科学性が強い作品と定義されるジャンルのことです。

すでに世の中で用いられている科学技術や一般的に知られている知見を利用し、科学的・論理的に構築されたアイディアをもとに執筆されるのが特徴。緻密に練られた設定で、整合性のあるストーリーとなっていて、納得感を得ながら読むことができます。

なかには、ハードSFといわれている作品のなかから、科学的に誤っている点を探す人がいるほど、コアなファンが多いジャンルだともいえるでしょう。

ではここからは、ハードSF小説のなかから、特におすすめのものを紹介していきます。科学の力でこんなことができるのか、と驚かされるかもしれません。

ハードSFを語るなら外せないおすすめ小説『コロンビア・ゼロ: 新・航空宇宙軍史』

 

強大な軍事力によって太陽系を支配していた航空宇宙軍と、外惑星連合が戦った「第一次外惑星動乱」から40年が経ちました。

しかし太陽系の各地では、新たな争いの予兆が見え始めています。

著者
谷 甲州
出版日
2017-06-22

 

2015年に刊行された谷甲州の作品。「航空宇宙軍史」シリーズとしては約20年ぶりの新刊で話題になり、「日本SF大賞」を受賞しました。同シリーズは、航空宇宙軍という軍事組織に太陽系を支配されているという世界を舞台に、地球だけでなく太陽系の惑星を巻き込んだ宇宙戦争が描かれています。

本作の見どころは、「第一次外惑星動乱」が終結し、敗戦国である外惑星で技術革新が次々と起こり、再軍備が進んでいく様子。運動エネルギーを用いた兵器、高性能のエンジン……現実味のあるテクノロジーが次々と登場します。特に、作者の谷甲州は工学部出身で建設会社で働いた経験もあることから、宇宙における構造物の建て方などは読みごたえがあるでしょう。

第二次大戦が開戦するまでの緊張感が高まっていくさまを体感しながら読める、ハードSFファンにおすすめの作品です。

宇宙空間に存在する謎の光の正体とは?『バビロニア・ウェーブ』

 

太陽系から3光日という場所にある、バビロニア・ウェーブ。直径1200km、全長は5380光年という超巨大なレーザー光の束です。

いつから存在するのか、どのようにしてできたのかはわかりませんが、バビロニア・ウェーブに反射鏡を差し入れることで人類は膨大なエネルギーを得ることができるようになりました。そばには送電基地が建設され、燃料をめぐる争いもなくなります。

しかしその裏では、ある計画が進行していて……。

著者
堀 晃
出版日
2007-02-21

 

1988年に刊行された堀晃の作品。「星雲賞」の日本長編賞を受賞しています。

エネルギー不足のために大規模太陽光発電を計画していた人類。主人公のマキタは、発電のために創られたスペースコロニーで生まれ育っています。地球ではない場所で生きてきた彼の価値観や、重力に慣れない感覚などが興味深いです。

バビロニア・ウェーブが見つかったことで人類はエネルギー問題から解放されますが、送電基地で次々と不可解な事故が続きます。ミステリー要素を含みながら物語は進行し、バビロニア・ウェーブの正体がわかるラストにかけての展開は圧巻です。

また、ハードSFは登場人物の心理描写が少ないといわれることが多いですが、本作では内面も多々描かれているのもポイント。日本のハードSFを代表する作品ともいわれているので、ぜひ読んでみてください。

ハードSFの始祖と呼ばれる小説『重力の使命』

 

宇宙探索をおこなう人類。超重力の惑星スクリンに着陸させたはずの無人探査機が、行方不明になってしまいました。

このままでは機材もデータも回収できず、ここまでの調査が水の泡になってしまいます。悩んだあげく、メスクリン星に住む知的生命体に支援を頼むことにするのですが……。

著者
ハル・クレメント
出版日

 

1954年に刊行された、アメリカのSF作家ハル・クレメントの作品。クレメントは本作以外にも多くのハードSFを執筆しています。

メスクリン星は超重力の惑星で、高速の自転をしています。1日は17分と4分の3、気温はマイナス100度以下。惑星自体も平べったい形です。このような環境で人類が生きられるはずはなく、メスクリン星に住んでいるのはムカデのような形をした知的生命体です。

気温、扁平率、飛距離、潮位、圧力……超重力を科学的に計算しつくした、ハードSFらしい細かい設定が魅力的。ディテールがしっかりしているからこそ、刊行から半世紀以上が経っても違和感なく読むことができます。ハードSFの始祖ともいわれている作品なので、読んでおいて損はないでしょう。

海外ハードSFの名作!人類と知的生命体のファーストコンタクト『竜の卵』

 

「竜の卵」と名付けられた中性子星は、地球の670億倍という非常に強い重量がありながら、生命体を育んでいました。チーラと呼ばれるそれは、数mmの大きさしかなく、人類とは異なる時間の感覚で生きています。

人類は彼らとの接触を試みるのですが……。

著者
ロバート L.フォワード
出版日
1982-06-01

 

1980年に刊行されたロバート L.フォワードの作品。フォワードは物理学者で、特に重力波検出について研究しています。当初は他のSF作家にアイディアを提供していましたが、本作で小説家デビューしました。

「竜の卵」の直径はおよそ20kmしかありません。しかし太陽の約半分の質量があり、重力は地球の670億倍。1秒で5回自転をし、表面温度は8000度です。そんな環境で生きている生命体チーラは、人類の100万倍のスピードで生きていて、人類の15分が60年に相当します。

当初彼らは、人類の探査機を見つけた時に「神」と認識していました。しかし人類がチーラへ知識を渡しはじめると、あっという間に進化をし、人類をしのぐ科学力を手に入れるのです。

たった数mmの生命体が、数字という概念を発見し、技術を身に着け、政治をし、宗教まで発展させる様子は見ていて惹きこまれるもの。終盤に、時間の感覚が異なる人類とチーラが一瞬の対面を果たすシーンは感動的でしょう。専門知識を駆使したハードSFをお楽しみください。

新時代のおすすめハードSF『ランドスケープと夏の定理』

 

22歳で教授になった世界的天才物理学者を姉にもつ「ぼく」。ある日、宇宙空間にある国際研究施設にいる姉から呼び出されました。

彼女はそこでとんでもない実験をしていて……。

著者
高島 雄哉
出版日
2018-08-30

 

2018年に刊行された高島雄哉の作品。「創元SF短編賞」を受賞しています。

物語は、天才物理学者の姉が、岩の中から物理法則の異なるもうひとつの宇宙を発見するところから始まります。頭脳のおもむくままに実験をおこない、「知性」に関する定理を打ち出していく彼女の奔放っぷりと、それに振り回されるようで実は秀才の「ぼく」が定理を発展させていくストーリー。聞きなれない単語も出てきますが、読み進めていけばだんだんと理解できるはずです。

あらゆる知性は翻訳可能でわかりあえるという「知性定理」が印象的。姉が10兆人に分裂するとはどういうことでしょうか……。科学の難しさと面白さの双方を体感できるハードSF作品です。