『ここは今から倫理です。』結末までの見所を考察。ありきたりじゃない答えとは【ネタバレ注意】

更新:2021.3.9

「倫理」とは一体何なのか……。その答えを教えてくれるのが、倫理教師と悩みを抱える生徒たちとの交流を描いた『ここは今から倫理です。』。ただの学園ものではなく自分らしく生きることを教えてくれる作品として、幅広い世代から支持を集めています。 2021年1月からテレビドラマも放送されており、大注目の本作。この記事では、誕生のきっかけや魅力、そして気になる結末の考察もしていますので、ぜひご覧ください。

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『ここは今から倫理です。』がドラマ化!原作のあらすじ、ドラマの見所を解説!

『ここは今から倫理です。』がドラマ化!原作のあらすじ、ドラマの見所を解説!
出典:『ここは今から倫理です。』1巻

 

『ここは今から倫理です。』は高校の倫理教師と生徒たちの交流を描いた、雨瀬シオリによる青年漫画。高校で倫理を教える男性教師が様々な悩みを抱える生徒たちと、「倫理」を通して向き合い対話していく姿が描かれています。

宗教とは何か、より良い生き方とは何か、幸せとは何か、ジェンダーとは、命とは何か。倫理を学んだことがある人もない人にも胸に刺さる、学園ヒューマン漫画です。

本作の見所は、決して立派な大人ではない人間味溢れる教師・高柳から放たれる、ありきたりじゃない胸を打つ名セリフ。

あくまで自分が解決するのではなく、倫理を通して生徒たちにその悩みと、どう向き合っていくのかを諭すリアルさや、学園ものだけどキラキラしていないストーリーが、学生だけでなく大人からも共感を得ています。

2020年2月19日に発売された単行本4巻で、テレビドラマ化が発表。2021年1月から山田裕貴主演で放送されています。

詳しくは「ここは今から倫理です。」公式サイトでチェック!

教師でありながら教師らしくない、どこか影ある高柳ですが、教え子たちの悩みに関しては誰よりも真摯に向き合います。倫理教師として、大人として、教え子たちを導いていく高柳が、ドラマでそのように演じられるのか注目。

この記事ではそんな本作の魅力と共に、今後の結末についても考察していきます。

 

『ここは今から倫理です。』誕生のきっかけは、叔母の死にあった

まずは本作が誕生したきっかけを紹介します。本作は、作者の叔母の死がきっかけで誕生しました。彼女はうつ病を患っており、働くことができず母親と2人暮らしをしていました。

ある日、親戚から何気なく心のないことを言われてしまった彼女は落ち込み、それから「何が何でも死ななければ」と思ってしまったのです。

そして1週間かけて死ぬ準備をして、自殺してしまいました。

その後、彼女の遺品からあるものが見つかります。それが付箋がびっしり貼られた倫理の教科書と哲学書、「対話日記」と書かれた日記でした。付箋にはたくさんのメモ書きがあり、日記には誰にも打ち明けていなかった叔母の様々な思いが書かれていたのです。

それはまるで生きるための勉強の跡のようでした。作者は叔母が必死に生きようと戦っていたことを知り、同時に彼女の人生を「うつ病だった人の自殺」で終わらせたくないと思います。

その結果、できあがったのが『ここは今から倫理です。』でした。

作者は本作を読んで叔母のように、何かに悩んでいる人が少しでも救われるようにと思いを込めて描いているそうです。

そんな作者の実体験が基になっているからこそ、登場人物のリアルな思いが伝わり、幅広い世代の読者から共感を得ているのではないしょうか。

また、これ以降はこの誕生のきっかけだけでなく、なぜ本作がこんなにも支持されているのかという理由について考察していきます。

考察:ありきたり、じゃない言葉。多くの人の共感を呼んだセリフ

 

本作には高柳が引用する、哲学者たちの名言がたくさん登場します。中でも読者から多くの共感を得たのが、単行本1巻に収録されている2話「くだらない人間」です。

大学生の彼氏に騙されてレイプされてしまった女子生徒は、絶望を感じて学校の屋上から飛び降りようとします。そんな彼女を止めようと、同級生が「命の重さに比べたらちっちゃいこと」と言うと、高柳は次の言葉を言い放つのです。

「恋に破れても… 家族が死んでも いじめられても 就職に失敗しても 
仕事がイヤでも お金がなくても 人生が… 退屈でも!!

それがどんな理由でも 
命に換わる程 重い絶望になるんです!!」

(『ここは今から倫理です。』1巻より引用)

確かに命は重いです。ですが、人間生きていればたくさんの挫折を味わいます。それは時に、命よりも重い絶望になることも。

高柳は自殺しようとする女子生徒の「絶望」という感情を決して否定せず、理解を示すのです。

普通ならば、「生きていたらきっと良いことがあるはずだよ」とか「死んだら何もできない」と、死ぬことを否定する言葉を言ってしまいがちではないでしょうか。

でも、それを絶対に言わないのが高柳。ありきたりな言葉ではなく、人の心の深い部分を理解しようとする姿が読者の心を惹きつけり理由なのでしょう。

 

著者
雨瀬 シオリ
出版日
2017-11-22

考察:スッキリした解決じゃないからこそのリアルさ

考察:スッキリした解決じゃないからこそのリアルさ
出典:『ここは今から倫理です。』1巻

本作には生徒の抱える悩みによって、解決しないものもあります。でも、それこそが本作の魅力なのです。

高柳は一般的な大人が考えるような、正論を押し付けることはしません。

なぜなら高柳自身も不完全な人間だから。彼らと同じように悩みを抱えているし、完璧な答えを持ち合わせていないのです。

それでも大人として、倫理の教師として、生徒たちの悩みに真摯に向き合い、彼らがその悩みにどう向き合っていくべきなのかを導いてくれます。

「倫理は人の心に触れ、自分の心に触れてもらう授業です」

(『ここは今から倫理です。』1巻より引用)

本作では生徒たちの悩みを先生が解決するのではなく、彼らが自分自身に向き合って前を向いていく姿が描かれているのです。

考察:学園のストーリーだけど、キラキラした内容じゃないから、共感

考察:学園のストーリーだけど、キラキラした内容じゃないから、共感
出典:『ここは今から倫理です。』4巻

本作に登場する生徒たちは学園ものでありながら、キラキラしたストーリーは描かれていません。

家庭に問題があったり、取り柄のない普通な自分に悩んだり、コンプレックスに悩んだり、人間関係に悩んだり……。それぞれが悩みを抱えながらも、普通を装って生活している様子が描かれるのです。

たとえば「対物性愛」という人や動物といった命のあるものではなく、建物や物に愛情を抱いてしまう嗜好を持つ女子生徒や、母親から充分な愛情を貰えなかったために他人との会話や距離感が掴めない「愛着障害」を抱えた男子生徒など、学園ものにしてはなかなか重めなテーマを扱っています。

でも大人は彼らの悩みを、なかなか理解してくれません。そんな彼らの救いとなったのが高柳でした。

彼らは高柳から病名という枠にはめられた対応ではなく、自分の悩みに向き合った対応をしてもらい、自分なりに考え、幸せを見つけていきます。学園漫画特有の皆で悩みを解決していこう!という流れではなく、1人1人が倫理を通して自分自身の悩みと向き合っていくのです。

たしかに友人たちと一緒に何かを達成して、青春を味わうことも大切なことではあります。でも現実は、そんなにキラキラしたものではないことの方が多いのではないでしょうか。

1人で悩み苦しみながらも、生きていくことを真剣に考えていく。その姿が、共感できる理由なのです。

『ここは今から倫理です。』の結末を考察!【ネタバレ注意】

倫理の授業を受けている生徒たちと向き合い、彼らの悩みを共に考えてきた高柳。2020年3月現在、最新巻の単行本4巻では、自分自身と向き合い、自分の人生を前向きに捉えるようになった生徒たちの卒業シーンが描かれており、彼らの成長を感じる内容です。

しかし、肝心の高柳の心の闇は深まるばかりです。悩みを抱える生徒たちを導いてきた彼には、いくつもの気になる過去があります。

大学生時代に憧れていた恩師と話したかったから吸い始めたというタバコのエピソードや、悩んでいる人にしか興味が湧かないという感情、3巻で登場した闇の世界で生きる男性・ジュダとの関係性。そして4巻で明かされた、「結婚には懲りた」という発言……。

生徒たちとのやりとりの合間で彼の過去が明かされていくのですが、その詳細までは分かりません。おそらく彼の過去がすべて明かされたときに、彼が抱えている本当の悩みが解決され、物語の結末を迎えるのではないでしょうか。

4巻でひとまず第1章を終えている本作。第2章では新しい生徒たちに入れ替わり、新たな倫理の授業が始まります。第1章では出なかった、宗教やジェンダーについての問題が浮上するのかもしれません。第2章も楽しみですね。

著者
雨瀬 シオリ
出版日
2020-02-19

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