「少年探偵団」シリーズのおすすめは?あらすじと魅力、「みんなの」も紹介!

更新:2021.11.21

大正から昭和にかけて活躍した推理小説家、江戸川乱歩。数々の代表作がありますが、この記事ではそんな彼が子ども向けに執筆した「少年探偵団」シリーズを紹介していきます。怪人二十面相と明智小五郎、そして小林少年が活躍する姿に心躍らせた記憶がある方も多いのではないでしょうか。

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「少年探偵団」とは?できた経緯や主なメンバーを紹介

 

日本を代表する推理小説家、江戸川乱歩が子ども向けに執筆した「少年探偵団」シリーズ。初めて発表されたのは、第二次世界大戦の始まる前、1936年のことです。雑誌「少年倶楽部」に連載され、子どもたちの間で大人気になりました。戦後連載が再開されるとさらに人気が広がり、当時はクリスマスプレゼントの定番になるほどだったそうです。

シリーズに登場する「少年探偵団」は、名探偵・明智小五郎の弟子である小林芳雄少年を団長とする、子どもだけの探偵団です。結成のきっかけは、1作目の『怪人二十面相』にて、明智小五郎がさらわれてしまったこと。師匠の帰りを待つ小林少年に、怪人二十面相から宝石を狙われていた羽柴家の息子が提案し、10人の少年少女から成る「少年探偵団」が誕生しました。

「少年探偵団」といえば、往年の読者が口を揃えるのが「BDバッジ」でしょう。小林少年が発案した徽章で、Bは少年、Dは探偵を表しています。団員の証だけでなく、攻守ともに活躍する優れもので、後世のさまざまな推理小説にも影響を与えたそうです。

また小林少年の特技は変装です。事件を解決する過程で女装をすることもあり、そのクオリティは確かなもの。そのほか明智小五郎の姪である花崎マユミ、メンバーで1番力が強い井上一郎、探偵団の七つ道具を発明する大友久、のんびり屋の野呂一平など個性豊かな団員たちの活躍も見どころでしょう。

「少年探偵団」シリーズ『怪人二十面相』のあらすじと魅力を紹介

 

怪人二十面相は、20の顔をもつ変装の達人。本当の顔は誰も知りません。予告をしたうえで盗みをはたらく怪盗として世間を騒がせています。

ある時怪人二十面相は、資産家である羽柴家に保管されていたロマノフ朝の宝石を盗み出し、次男の壮二も誘拐。当主の羽柴壮太郎は名探偵・明智小五郎に捜査を依頼しますが、ちょうど明智が留守をしていたため、助手である小林芳雄がが怪人二十面相に挑むことになり……。

著者
江戸川 乱歩
出版日

 

「少年探偵団」シリーズの1作目です。

本作の見どころは、怪人二十面相と明智小五郎の出会いの場面。変装して目の前に現れた怪人二十面相に対し、明智は驚くそぶりも見せずに対応します。2人の駆け引きが緊張感にあふれた文章で綴られ、スリル満点です。

また怪人二十面相は、怪盗でありながら「紳士」なのも魅力的。本作の冒頭では血が嫌いだと明言していて、「少年探偵団」シリーズで人が死ぬシーンはありません。彼の持っている拳銃は玩具で、子どもの読者が安心して読める作品になっています。

「少年探偵団」シリーズ『少年探偵団』のあらすじと魅力を紹介

 

相次ぐ幼女誘拐事件で東京中を震撼させている「黒い魔物」。今回は、篠崎家の5歳の少女と、宝石を盗み出してしまいました。

篠崎家の息子は「少年探偵団」の団員でもあり、団員たちは何とか機転をきかせて彼らを救出。後日小林少年は、明智小五郎の話を聞くなかであるストーリーに気がつき……。

著者
江戸川 乱歩
出版日

 

「少年探偵団」シリーズの2作目です。

本作のラストでは、怪人二十面相が火薬の樽に火を放ってアジトを爆破。「少年探偵団」たちは彼を捕まえることはできませんでした。以降、怪人二十面相が姿をくらますために爆破をしようと試みる様子がたびたび描かれるので注目してみてください。

また本作では、BDバッジを撒いて居場所を知らせたり、万年筆型の懐中電灯など七つ道具を活用したりと、「少年探偵団」のアイテムが物語を盛りあげるのもポイント。小林少年の初めての女装も披露されます。

「少年探偵団」シリーズ『大金塊』のあらすじと魅力を紹介

 

資産家である宮崎家から盗まれたのは、暗号が書かれた紙きれの半分。その暗号は、莫大な埋蔵金のありかを示しているといわれています。

捜査を依頼された明智小五郎は、宮崎の子どもと「少年探偵団」のメンバーを入れ替えることを思いつきました。身代わりとして小林少年が敵方に潜りこむのですが……。

著者
江戸川 乱歩
出版日

 

「少年探偵団」シリーズの4作目。怪人二十面相ではなく、絶世の美女とされる盗賊の首領が登場します。

身代わりになった小林少年は、見事に暗号文の半分を取り戻すことに成功。ここからは、実際に埋蔵金を探す冒険に出かけることになります。

「ししがえぼしをかぶるとき からすのあたまのうさぎは三十 ねずみは六十 いわとのおくを さぐるべし」(『大金塊』より引用)

この暗号は、大人になっても忘れられないというファンがいるほど。謎解きと宝探しという子どもが夢中になれる要素がたっぷりつまっているのが魅力でしょう。

いよいよ金塊があるとされる洞窟に辿りついた時、またもやアクシデントが発生。最後までハラハラする展開を楽しめる一冊です。

「少年探偵団」シリーズ『怪奇四十面相』のあらすじと魅力を紹介

 

逮捕されて獄中にいた怪人二十面相は、世間が自分のことを「二十面相」と呼ぶことに不満を抱いていました。自分の変装のバリエーションはその倍はあると、「四十面相」への改名宣言と、新たな犯行予告を新聞広告に掲載します。昼夜を問わず監視されているはずの四十面相は、どのようにして脱獄するのでしょうか。

さらに明智小五郎も、獄中にいる四十面相と面会をしていて……。

著者
江戸川 乱歩
出版日
2009-03-05

 

「少年探偵団」シリーズの8作目。二十面相の改名という子ども心をくすぐる設定が、読者を物語に引きこみます。

本作では、いつにも増して小林少年の活躍が光ります。脱獄、黄金骸骨の暗号、小林少年の拘束、洞窟の探検など怒涛の展開のなかで、推理力や決断力がどんどんレベルアップしていることがわかるのです。

怪人四十面相と小林少年の、変装対決も見どころです。今回は人間だけでなく郵便ポストに変装するシーンもあり、子どもの読者もイメージを膨らませながら読むことができるでしょう。

【番外編】『みんなの少年探偵団』とは?あらすじと魅力を紹介

 

「少年探偵団」シリーズの愛読者だった作家たちが、それぞれの視点でシリーズをオマージュした作品。

怪人二十面相と明智小五郎の誕生や、40代になった小林少年など、乱歩の世界観を活かしてサイドストーリーを創作したアンソロジーになっています。

著者
["万城目 学", "湊 かなえ", "小路 幸也", "向井 湘吾", "藤谷 治"]
出版日
2016-12-02

 

江戸川乱歩生誕120周年を記念して、2014年に刊行された作品です。万城目学、湊かなえ、小路幸也、向井湘吾、藤谷治という豪華な顔ぶれ。彼らはみな「少年探偵団」シリーズに夢中だったそうで、リスペクトをしている様子が文章からもひしひしと伝わってくるでしょう。

連載当時の世情を理解しつつ、現代のエッセンスが織り込まれているのが特徴。当時「少年探偵団」シリーズに胸を躍らせていた大人にもおすすめの一冊です。

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