パラレルワールドを用いた小説おすすめ6選!並行世界で起こるSFやミステリー

更新:2020.3.15

今ある世界と並行して存在する別の世界「パラレルワールド」。自分が存在しない世界、片思いの相手と恋人同士でいられる世界、現実とは真逆の歴史を進む世界など、SF好きならずとも興味のそそられる作品ばかりです。この記事では、パラレルワールドを用いたおすすめの小説を紹介していきます。

  • twitter
  • facebook
  • line
  • hatena

東浩紀が描くパラレルワールドとは『クォンタム・ファミリーズ』

 

時は2008年、主人公の葦船往人は35歳になる売れない小説家です。妻の友梨花と2人で暮らしていますが、子どもはおらず、数年前に義父が亡くなってからは2人の関係もぎくしゃくしていました。

ある日から、往人の携帯電話に、葦舟風子という人物からメールが届くようになります。風子は往人の娘だと名乗り、27年後の2035年からメールを送っているというのです。

事態を把握できないまま、往人は風子の指示どおりにアリゾナへ行きました。以前義父の別荘があったという場所に行ってみると……義父が生きていて、妻の友梨花との関係も良好で、娘の風子がいるパラレルワールドへ迷い込んでいたのです。

著者
東 浩紀
出版日
2013-02-05

 

2009年に刊行された東浩紀の作品。批評家や哲学者として活動してきた東の、初めての単著長編小説で、「三島由紀夫賞」を受賞しました。

パラレルワールドにやって来た往人は、新たな人生を謳歌します。しかしやがて、こちらの世界で自分が計画したというテロ事件に巻き込まれてしまうのです。

本作で描かれる2035年の世界では、量子回路の発明によってパラレルワールドを干渉できるようになっていて、往人はそこで「できたかもしれないけどやらなかったこと」「なれたかもしれないけどならなかったもの」を求めていきます。

哲学、量子論、文学、村上春樹の「35歳問題」、テロリズム……東浩紀の思想をSF小説に反映した骨太な作品。読み始めは難易度が高いと思うかもしれませんが、自分の人生を見つめ直し、家族との再生を図る普遍的な物語として読める傑作です。

恋愛と友情が生み出す並行世界を描いた東野圭吾ミステリー『パラレルワールド・ラブストーリー』

 

敦賀崇史と三輪智彦は、中学時代からの親友です。大学院まで一緒に過ごし、現在はコンピュータメーカーが運営する最先端テクノロジー研究教育機関に、2人揃って在籍しています。

ある日崇史は、智彦の恋人を紹介されることになりました。そして、女性の顔を見て驚愕。津野麻由子という名の彼女は、崇史が学生時代に電車の中で見かけてから想い続けていた女性だったのです。

嫉妬心を抑えることができない崇史。しかしある朝目覚めると、麻由子が隣にいます。自分の恋人だというのですが……。

著者
東野 圭吾
出版日
1998-03-13

 

1995年に刊行された東野圭吾の作品。映画化もされ、累計発行部数は110万部を超えるベストセラーです。

物語は、智彦と麻由子が付き合う世界と、崇史と麻由子が付き合う世界の2つが分断されたまま、それぞれ進行していきます。同じ登場人物なのに関係性が違う、まるでパラレルワールドのような世界。読者は一体どちらが真実なのかわからず、2つの世界の記憶をもつ崇史とともに迷いながら読み進めることになります。

やがて、パラレルだった世界が一繋ぎになる構成はお見事。キーとなるのは記憶の書き換えなのですが、科学的な内容と、恋愛と友情どちらをとるのかという古典的な問いのバランスが絶妙です。真相がチラチラと見え隠れするにつれて膨らんでいく不安も、エンタメ要素たっぷり。最後までハラハラドキドキが止まらない一冊です。

自分がいなかったパラレルワールドで何を思う?『ボトルネック』

 

高校1年生の嵯峨野リョウは、2年前に亡くなった恋人の諏訪ノゾミを思い、彼女が亡くなった福井県東尋坊に来ていました。しかし母から兄が死んだという連絡を受け、地元の石川県金沢市に戻ろうとしたところ、崖から転落してしまいます。

目を覚ましたリョウがいたのは、金沢の自宅。しかしそこには、見たこともない姉のサキがいました。

著者
米澤 穂信
出版日
2009-09-29

 

2006年に刊行された米澤穂信の作品。デビュー前から温めていた題材をおよそ10年かけて完成させた、渾身の一冊になっています。

流産で死んだはずの姉がいて、自分が生まれなかったパラレルワールドにやって来たリョウ。元の世界では亡くなってしまったノゾミもいて、兄も生きています。

「自分が生まれた世界」より、「自分が生まれなかった世界」のほうがはるかに素晴らしい……リョウは、自分自身が大切な人にとってのボトルネックになっているのではないかと疑念を膨らませていくのです。

パラレルワールドというSF要素はあるものの、その内容は人間の存在意義や醜さを描く重たいもの。思いつめるリョウに突き付けられる、ラスト一行は衝撃です。

人間の本質を考えるパラレルワールドを用いた小説『五分後の世界』

 

少年時代に家出をしてから、犯罪者まがいの堕落した生活をしていた小田桐。ある日箱根でジョギングをしていたところ、ふと気づくと硝煙が漂うぬかるみのなかを集団で行進していました。

そこは、五分間だけ時空がずれた「もう一つの日本」。第二次世界大戦で降伏することを拒否したため、次々と原爆を落とされて大日本帝国はほとんど崩壊。人口はわずか26万人で、「アンダーグラウンド」と呼ばれる地下に都市を作り、いまだに連合国とゲリラ戦を続けています。

著者
村上 龍
出版日

 

1994年に刊行された村上龍の代表作のひとつ。1996年には続編の『ヒュウガ・ウイルス 五分後の世界II』も発表され、ゲーム化もされています。

変わり果てた姿になったパラレルワールドの日本にやって来た小田桐。全員がプライドをもち、ゲリラ戦に果敢に臨む姿を目の当たりにして、そこに理想郷を見出していくのです。

何よりもその設定が秀逸なのと、それに負けない迫力ある戦闘の描写に圧倒されてしまうでしょう。目の前に浮かぶ登場人物たちの姿もエネルギーに満ちています。アンダーグラウンドで小田桐が活き活きとしていく様子を見ると、人間の本質とは何なのだろうと考えさせられるでしょう。

人生の「やり直し」は幸せなのか『リプレイ』

 

時は1988年。ジェフ・ウィンストンはニューヨークのラジオ局でディレクターをしていました。しかし突然心臓発作を起こし、43歳の若さで死んでしまいます。

ところが彼が目を覚ますと、そこは1963年。18歳の自分に戻っていたのです。知識と経験はそのままに、体だけが若返っている……ジェフは人生をやりなおそうと、夢中で動きはじめます。

著者
ケン・グリムウッド
出版日
1990-07-27

 

1990年に刊行された、アメリカの小説家ケン・グリムウッドの作品。ファンタジー作品を対象にした世界的に権威のある「世界幻想文学大賞」を受賞しています。

株やギャンブルで大儲けをするジェフ。しかし、1988年の同じ日、同じ時間に再び死んでしまうのです。そして目を覚ますと、また18歳の自分に戻っていて……何度もリプレイされるのですが、同じ人生は1度もありません。

人生をくり返すことは幸せなのでしょうか、孤独なのでしょうか。普通の人間の何倍も長い人生を生きた彼が、最後に何を思うのか、注目してみてください。

「もしも」のパラレルワールドを描いたディックの代表作『高い城の男』

 

第二次大戦で枢軸国側が勝利した世界。アメリカは日本とドイツによって分割統治され、ナチスの覇権で人種差別はいっそうひどくなり、東洋思想がアメリカ人たちの生活にも深く入り込んでいます。

そんな世の中で、「高い城の男」と呼ばれる謎の人物により執筆された小説『イナゴ身重く横たわる』が流行。アメリカ人の間で密かなベストセラーとなっていました。その本には、戦勝国となったアメリカという「もしも」の物語が描かれていて……。

著者
フィリップ・K・ディック
出版日
1984-07-31

 

1962年に刊行された、アメリカの作家フィリップ・K・ディックの作品。「ヒューゴー賞」の長編小説部門を受賞しています。

第二次世界で枢軸国側が勝ったパラレルワールドで、枢軸国側が負けた仮想小説が流行しているというのがキモでしょう。アメリカ人は日本文化の影響を強く受け、何をするにも易経の結果を参考にしています。作中作である『イナゴ身重く横たわる』の内容も易経で決めたそうです。

最後は、いまいる世界が本物なのか、偽物なのかわからない終わり方。真実と虚構、そして疑いが幾重にも重なり、考察のしがいがある一冊になっています。