『おっさんずラブ』や『孤独のグルメ』など、おっさんを主人公にした作品も増えてきた昨今。女子の心を癒す漫画の主人公も、イケているおじさま(通称、イケオジ)になりつつあります。 そんな今のイチオシは「闘うおじさま」!長らくバトル漫画の主人公を牽引してきた青年たちは、今その座を密かに奪われようとしています。少年たちが勇気と友情で乗り切る一方で、闘うおじさまたちは、いろんな敵と、そして己と戦っています。その姿が尊い……いや、もはや美しい! この記事では、経験と孤独で切り拓いていく「闘うイケオジたちの世界」へと誘います。
近年、萌えを通り越して感動を覚えるような存在を「尊い」と呼ぶようになりましたが、なんといっても究極に尊い存在はイケオジ。この記事では、イケオジが楽しめる漫画を紹介していきます。
まずご紹介するのは『TIGER & BUNNY』よりワイルドタイガーです。
冷静沈着なメガネの若者と、髭が特徴的ないかにもなおっさんがタッグを組んだ「ヒーローもの」ということで、アニメ放送後話題になった作品。その人気に後押しされるようにコミカライズされました。
アニメのプロデューサーが「蓋を開けたら女性ファンばかりだった」とコメントしたことでも有名ですが、アクションがかっこいいのはもちろん、綿密に設計されたワイルドタイガーの「おじさま像」が女子の心をがっちりと掴んだのではないでしょうか?
- 著者
- ["上田 宏", "サンライズ"]
- 出版日
- 2012-09-19
物語の舞台はシュテルンビルトという未来の架空都市。「NEXT」と呼ばれる、特殊能力を持った人間が誕生するようになった世界です。
「NEXT」の中には、その能力を生かしてスーパーヒーローとなるものもいます。彼らが町の平和を守る様子はテレビで放送され、ある種のショーとなっていました。彼らはスポンサーのロゴをつけたスーツで闘うことで、生計を立てている状況。彼らにはヒーローとしての名前があり、日常では素性を隠しています。
主人公は、普段は顎髭とハンチングといういかにもなおじさん。ヒーローとしての名前がワイルドタイガー、本名は鏑木・T・虎徹といいます。ヒーローとして活動をはじめてから10年以上立っており、人気は急降下中。
他のヒーローたちが炎や氷を操ったり、空中を自由に飛び回ったりする派手な能力を持っているのに対して、虎徹の能力は5分間だけ力持ちになるというのもなんともしょぼい…。決め台詞が「ワイルドに吼えるぜ!」なんてところには、昭和の匂いを感じずにはいられません。
スポンサーから手を引かれそうになり、急遽バーナビー・ブルックスJr.という新鋭と組むことに。小生意気な青年バーナビーは、虎徹のことを「おじさん」呼ばわり。なかなかそりの合わないコンビ「TIGER&BUNNY」が誕生したのでした。
仇を打つことに一直線な青年バーナビーと違い、虎徹が抱えている悩みはさまざま。
虎徹には彼がスーパーヒーローであることを知らないまま育った娘がいます。年々うだつが上がらなくなっていくけれど、それを家族には打ち明けられない彼の姿はまるで万年係長。アニメではころころ変わっていた表情も、漫画では憂いを帯びた横顔をじっくりと堪能することができます。
若手についお節介がすぎて煙たがられるけど、がんばっちゃう。そんな姿も虎徹のイケオジポイント。人気をとることに必死な若手たちから一歩引いて、むしろ彼らがヒーローとして長く活躍するためにはどうしたらいいのか、じっくり一人一人と向き合う姿勢は理想の上司像ともいえますね。
髭の生やし方がダサいのもまたおっさんぽさを助長しており、枯れ専(=高年齢キャラが大好きな人たち)からするとたまりません。人気の無さにたまに「どうせ俺なんて」とやさぐれているシーンも愛らしさ満載。
若手と組むことに苦戦するおじさまをもっと堪能したいなら、サラリーマンとWe Tuberを目指す高校生の物語『We Tuber』もおすすめです。
若い頃放送作家を目指していた主人公、武田権助。就活の際にその夢を諦め、彼は大企業の常務にまで上り詰めました。そんな勝ち組人生にもかかわらず、彼の表情はどこか不満げ。46歳の今なお、どこか心残りがあるのでした。会社や家族、そして過去の自分と葛藤する毎日を送っていました。
そんなある日、ラジオで聞いた「レンタルおっさん」に酔った弾みで登録してしまいます。
- 著者
- 出版日
- 2019-12-26
彼を最初にレンタルしたのは動画配信をしている高校生。ファミレスで話を聞くうちに、放送作家魂に火がついた武田は高校生の動画ネタを一緒に考えてあげるようになり…。
高校生に翻弄される武田も面白いのですが、秘書やホステスなど武田に惚れかかっている女性たちが彼の秘密に近づいていくハラハラ展開も見ものです。「ザ・ジャパニーズ・おっさん」を見たい方はぜひチェックしてみてください。
「ジジイ、かっこいい!」がキャッチコピーの『銀狼ブラッドボーン』。
表紙でキッと睨みを利かす白髪のおじさまに、ハートを打ち抜かれた女子が続出したとか…しないとか。主人公は70代なので、おじさんというよりはおじいさんに近い年齢ではありますが、元吸血鬼ハンターとしての経験を生かして、自国を脅かす存在と闘います。
シリアスな場面以外で飛び出す「年寄りジョーク」も楽しみどころ。彼が闘う化け物たちの謎と、シワやキズに刻まれた彼の過去が徐々に解き明かされるサスペンスアクションをぜひお楽しみください。
- 著者
- 出版日
- 2015-08-12
物語はイケメンにミーハー女子が喰われるという衝撃的なシーンから始まります。いわゆる捕食です。その後、彼女は歯や骨だけが抜かれたおぞましい死体となって発見されたのでした。
「骨抜き事件」と命名されたこの不気味な犯罪は、被害者を増やしていきますが、その所業が人間離れしており、警察はどう対策するべきかも見当がつきません。そこで、引退していた伝説の元吸血鬼ハンター、ハンス・ヴァーピットに声がかかります。
70歳にもなるハンスになぜこんなハードな依頼が舞い込んだのか。経験豊富で、技量も確かなハンスに解決を期待していたのはもちろんですが、失敗しても伝説の彼が「生贄」となることで、国が動くための大義名分を作りたいという隠れた意図もありました。
ハンスは警部からの依頼の手紙から、そういう背景も読み取った上で「老いぼれの最後の仕事」として引き受けることを決めるのです。ここから人間と吸血鬼、そして化け物の3者の戦争が始まります。
彼が闘うのは吸血鬼をはじめとした化け物ですが、それは常に衰えていく自分の肉体との戦いでもあります。この漫画で個人的に一番推したいポイントは、「老い」を美しく描いているところ。
白黒の漫画だからこそ、口周りや額の皺がくっきりと描かれており、彼のこれまでのタフな人生を物語っています。瞳のアップのシーンもあるのですが、少年のキラキラ、青年のギラギラと燃える感じではなく、どこか静かで悲しみを湛えています。
また、表紙からもわかるように普段はメガネをかけていないのですが、手紙を読むシーンなどでは老眼ゆえ「メガネじじい」になるわけです!フレームの細いメガネが、口周りや額の皺と相まって麗しさを加速させます。
かといってただの偏屈じじいではなく、一緒に住んでいる半吸血鬼の女の子や事件で相棒となる女性刑事にはユーモア溢れるトークで暖かく接します。今回紹介する漫画のなかでも女性の扱いの巧さはピカイチではないでしょうか。
というのも、彼には自分を更生させてくれた妻がいたのです。バトルシーンでは、年齢と普段の温厚さからは想像もつかないパワフルさを魅せますが、そのギャップに惚れかける女性たちにもスマートに接します。心はかつて愛した妻にしかない…なんて余計に燃えるものがありますよね。
実際にいたら、孫のような態度で接近して肩を揉むフリをしながら、傷にそっとふれて警戒する顔を見てみたいですね……!
『銀狼ブラッドボーン』については<漫画『銀狼ブラッドボーン』が無料で読める!魅力を全巻ネタバレ紹介!>で紹介しています。ぜひご覧ください。
銀狼ブラッドボーンの背景は、近世ヨーロッパを彷彿とさせる架空都市。どこか鬱々とした町の様子と、ハンスがくり広げるジョークには英国の香りも漂います。
イギリス紳士的なおじさまが好みなら、バトル漫画ではありませんが『雨宮教授のお茶の時間』もおすすめ。主人公は英文学教授の雨宮先生。彼にはイギリスからやってきた姪がおり、彼女の祖国シックを和らげようと、英国児童文学に出てくるお菓子を一緒に作ることになります。
- 著者
- 鷹野 久
- 出版日
- 2019-12-09
多くは語らないけれど、姪の気持ちにそっと寄り添う雨宮教授はまさに紳士!
文学の話になるとつい熱くなり、うんちくを語りはじめますが、姪にたしなめられ落ち込む様子もなんだかキュートです。そして、なんといっても登場するお菓子がどれも美味しそう。
『不思議の国のアリス』に登場するハートの女王のタルトなど、小さいころ読んだ海外文学に登場したスイーツが、日本でも再現しやすいレシピで紹介されています。
教授として学生と、伯父として生意気な姪と、そして自分の体重と…小さな戦いは数あれど、丁寧に対応していく教授の日常に触れてみては。
原作は「小説家になろう」の人気シリーズ。グルメと冒険と異世界、という最近はやりの組み合わせではありますが、それを他に類のないものにしているのが、主人公の老騎士・バルド。
「死への旅路」という重いテーマながら、生きるための大切な欲求である「食」と組み合わせることで、スイスイ読み進められる漫画となっています。絵になったことで、ファンタジーの世界ながら食べ物がどれも美味しそうで、イケオジと合わせて2度美味しい作品に仕上がっています。
- 著者
- 菊石 森生
- 出版日
- 2017-03-17
小説版とは違い、漫画は主人公バルド・ローエンの若い頃の話から始まります。
舞台となる異世界は、大きな壁に囲まれており、その隙間から時に「魔獣」が進入してきます。その隙間に面した辺境の地では、その領主に仕える騎士には魔獣を倒す役目も与えられていました。バルドは「人民」に忠誠を誓っていましたが、実際には領主の姫のお守りを召使っていました。
ある時、遠征にでかけたバルドを迎えに行き、姫は魔獣に襲われます。バルドが身を挺して守りますが、その時に彼のトレードマークともいえる顔を横に走る大きな傷を負います。そしてそれをきっかけにバルドと姫の間にあった、主従を超えたような関係はなくなってしまうのでした。
そして時は経ち、バルドは58歳に。人民のために働き続けた彼には、家族も恋人もいません。騎士を引退する彼は「誰かのために戦う」というしがらみから解放されたのです。そこで彼は、美味しいものを食べつつ霊峰に向かい、ゆるやかに死に向かう旅へと出ます。しかし最強の騎士であった彼は行く先々でも頼られ、伝説を残すことになるのでした。
突然ですが「美味しそうにものを食べる人」ってキュンとしませんか?『孤独のグルメ』が流行ってドラマシリーズが続いたのも、また『きのう何食べた?』が昨年の話題をかっさらったのも、普段は強面のおじさまたちが「食べる時」だけは無防備な表情でがっつく。その姿が、ギャップ萌えさせるからだと思うのです。
イケオジは若い頃さんざんモテているので、老いて女性にチヤホヤされたところで鼻の下を伸ばしたりはしません。その落ち着きが、社会でハラスメントに疲れ切った私たちを癒すのです。
しかし、そういったクールなおじさまたちも、「食欲」の前では青年に戻ります。若かりし頃は量で満足していた胃が、経験を経て舌が肥え、質を求めるようになるのです。でもやっぱりキャパが分からず無茶して食べちゃうときもある。食べすぎて後悔する顔もなんだか可愛くて…。
もし現実にバルトみたいなおじさんがいたら、とにかく餌付けしたいですね!各地のお土産とか、手作り弁当・お菓子で釣りたい。一緒に居酒屋に行ったら、揚げ物とかでちょっと胃もたれしちゃうところが見たい。妄想が広がります。
過去の戦いを忘れられず、つい現役で頑張っちゃうおじさまがお好きなら『ライドンキング』もおすすめです。半分はギャグですので、電車内で読む場合は吹き出さないよう注意してください。
「どっかで見たことある気がする…」そんな嫌な予感から始まる『ライドンキング』。
読み進めていくとこのおじさん、○シアの○ーチン大統領だよね……と突っ込みたくなる、絶対的・肉体派リーダーなのです。
- 著者
- 馬場 康誌
- 出版日
- 2019-01-09
物語の舞台はプルジア共和国。その圧倒的な格闘能力から、「強い者」を君主としてあがめる同国では、アレクサンドル・プルチノフという男が終身大統領として就任していました。
テロリストに襲われたことで、彼自身は傷一つ付けられれない(といっても、トラックで突進されている)のですが、その攻撃のはずみで「異世界」に飛ばされてしまうのです。
実は彼には日頃の政務に追われながらも、ある夢がありました。普段国家を乗りこなすプルチノフは、生き物を乗りこなし、思うがままに遠乗りをしたかったのです。
そう、異世界にはまだまだ彼が乗りこなしていないものがたくさん!火炎翼竜にケンタウロス…そのはじめて対峙するモンスターたちに、プルチノフは興奮を隠しきれません。
弱きを助け、強きを打ち砕きながら表情を崩さず戦っていく彼は、やはり指導者にまつりあげられてしまいます。しかし、新しいモンスターに「ライドン」した時だけは、少年のように顔をほころばせるのです。
無表情ないかついおじさまにギャップ萌えしたい方にはぜひおすすめしたい作品です。
どのおじさまも、豊かな個性と経験が燻銀(いぶしぎん)のようにひかるキャラクターばかり。この春は、おじさまにときめいてみませんか?
スマホのアプリでは、さまざまなイケオジ漫画を読むことができます。購入する漫画はじっくり決めたい……そんな人はぜひ無料の漫画アプリをインストールしてみてくださいね。