読書離れ、本離れが叫ばれる昨今ですが、「読書の力」はいまだ健在。世界のトップリーダーたちは精力的に本を読み、年収と読書量は比例するともいわれています。今からでも遅くありません、読書に挑戦してみませんか?この記事では、初心者でも絶対に最後まで読み切れる、魅力的なおすすめ小説を紹介していきます。
「メディア良化法」が制定された日本。武力行使も辞さないメディア良化委員があらゆるメディアを監視し、表現が不適切だとされた創作物は検閲され、規制を受けています。
読みたい本が読めない……幼い頃から本が大好きだったヒロインの笠原郁は、過剰な検閲から本を守るため、図書館の防衛組織「図書隊」に入隊しました。
図書隊には、高校時代にメディア良化委員から救ってくれた恩人こと「王子様」がいるはず。憧れの気持ちを抱いたまま、持ち前の情熱と体力で、女子隊員初の図書特殊部隊に昇格するのです。
- 著者
- 有川 浩
- 出版日
- 2011-04-23
2006年に刊行された有川浩の作品。発売直後から話題となり、「本屋大賞」では5位に入賞、本作を含む「図書館戦争」シリーズは「星雲賞」の日本長編作品部門を受賞しています。漫画化や映画化、テレビドラマ化、アニメ化もされました。
ディストピアを描いたSF小説でありながら、主人公である郁の成長を描いた青春小説、さらにはミリタリー小説の要素も含んでいます。
しかし本作の何よりの魅力は、郁と、指導教官である堂上の恋愛要素。郁は女性ながら身長170cmでとことんまっすぐな性格。一方の堂上は165cmで、真面目すぎる不器用な性格。そんな2人が大好きな本を守るために戦い、お互いを思いやり、徐々に自分の気持ちに気づいていく様子にキュンキュンが止まりません。
メディア良化委員と図書隊という対立構造もわかりやすく、登場人物たちの会話劇はコメディ要素も多いので、読書初心者の人でも楽しめる一冊でしょう。
高校2年生の時に賞を受賞してから、人気作家への階段をあっという間に駆け上ったチヨダ・コーキ。しかし、自身の作品を真似た殺人事件が起こったことから、執筆活動を辞めていました。
それから10年。脚本家の環に誘われて、都心から少し外れた場所にあるアパート「スロウハイツ」に住むことになります。そこには漫画家や画家、映画監督志望者などのクリエイターが住んでいて、お互いに刺激をしながら創作活動をしていました。
しかし、そこへコーキのファンだという自称小説家の莉々亜が入居してきたことから、生活が大きく変わっていきます。
- 著者
- 辻村 深月
- 出版日
- 2010-01-15
2007年に刊行された辻村深月の作品。漫画化、舞台化もされて人気を博しました。
かつて藤子不二雄や手塚治虫、石森章太郎など著名な漫画家たちが暮らしていた「トキワ荘」を彷彿とさせる「スロウハイツ」。ほとんどの住人たちはまだ業界で花を咲かせておらず、それぞれ本気で夢を追いかけています。
上巻では、彼らひとりひとりのバックグラウンドも含めた個性が語られ、下巻ではコーキの過去の事件を絡めながら、それまで伏線だということに気づいてすらいなかった伏線を怒涛の勢いで回収。その巧みな構成と驚きの展開で、思わず涙がこぼれるラストまで一気読みできるでしょう。
何かを創作することで知らない誰かを助けていて、反対に誰かが創作したもので自分も助けられることがある、そんな目に見えない繋がりがまた創作につながっていく……クリエイターたちの情熱にエネルギーをもらえる作品です。
時は1980年代後半のバブル時代。静岡に住む鈴木とマユは、合コンで知り合い、やがて恋人同士となってクリスマスイブをともに過ごしました。
しかし、鈴木が東京の親会社へ転勤することになり、遠距離恋愛となった2人はだんだんと疎遠になっていきます。鈴木は東京で出会った同僚の美弥子と急接近。一方その頃、マユは……。
- 著者
- 乾 くるみ
- 出版日
- 2007-04-10
2004年に刊行された乾くるみの作品。2015年には映画化もされました。
「side-A」と「side-B」それぞれで、鈴木とマユの恋愛が描かれています。「side-A」では2人が合コンで出会ってから幸せなクリスマスイブを過ごすまで。「side-B」では2人の関係が徐々にぎくしゃくし、鈴木は美弥子と浮気。一方でマユは鈴木との子を妊娠していましたが堕胎して、とうとう別れてしまうまでが描かれています。
普通の男の子と普通の女の子の、誰もが経験しそうな恋物語なのですが、恋愛小説がミステリー小説に代わるのは、なんとラスト2行。驚きのどんでん返しが待っていて、もう1度最初から読み返さずにはいられません。読書初心者であれば特に、騙される楽しさにヤミツキになってしまうのではないでしょうか。
「イニシエーション」とは、「通過儀礼」という意味。どれだけ真剣に愛した人でも、終わってしまえばすべて通過儀礼になってしまうのでしょうか。人間の怖さも感じられる、エンタメ小説です。
市立S中学校で教師をしている森口悠子。ひとり娘で4歳の愛美を、自身の職場である中学校内で亡くしています。警察は事故として処理しましたが、森口は自身が担任している1年B組の生徒2人による犯行だと突き止めるのです。
終業式の日。森口はB組の生徒たちに、自分が教師を辞めることを告げたうえで、「愛美はこのクラスの生徒に殺された」「犯人である少年AとBには、恐ろしい復讐を仕掛けた」と告白しました。
- 著者
- 湊 かなえ
- 出版日
- 2010-04-08
2008年に刊行された湊かなえのデビュー作。「本屋大賞」をはじめさまざまな文学賞を受賞し、累計発行部数は350万部超え、100刷を突破しています。読んだあとに嫌な気持ちになるミステリー「イヤミス」の代名詞になりました。
森口の復讐は、少年AとBにHIV感染者の血液が入った牛乳を飲ませる、というところから始まります。読者はそのやり口にまず驚くのですが、その後もクラス内で起きる虐めや新たな殺人に、心が休まる暇はありません。それでも惹きこまれて読むのをやめられないのが、本作の何よりの魅力でしょう。読書初心者でも心をグッと掴まれるはずです。
ほとんどの登場人物が身勝手で、傲慢で、読んでいると苛ついてしまうほど。殺人の動機や復讐の全貌、そして衝撃のラストまで、人間の醜い部分を赤裸々に描いた作品です。
主人公の「ぼく」は、大きな過ちを犯して死んだ魂です。罰として輪廻転生のサイクルから外されていました。
しかしある時、天使業界の抽選に当選し、生まれ変わるチャンスを獲得。魂のホームステイ先は、自殺を図った中学3年の少年、小林真の体です。
「ぼく」は、家族や友達に恵まれず、醜い容姿で、絵を描くことだけが趣味だった真として、日々を過ごさなければいけなくなりました。
- 著者
- 森 絵都
- 出版日
- 2007-09-04
1998年に刊行された森絵都の作品。「産経児童出版文化賞」を受賞し、高校生が選ぶ読みたい文庫ナンバー1にも選出されています。
真の体に乗り移った「ぼく」。彼の父親はひどく利己的で、母親は不倫をしており、兄は意地悪、初恋相手のひろかは援助交際をしていることを知ります。しかし日々を過ごしていくうちに、最低最悪だと思っていたその環境が、実はカラフルなことに気づくのです。
普段の自分が見ているのは、物事のひとつの側面に過ぎないことを教えてくれる作品。何かに悩んだりつまずいたりした時に、きっと助けてくれるでしょう。児童文学なだけあって、文章に癖はなく読みやすいのもポイント。最後に「ぼく」の正体がわかった時は思わず感動してしまう、読書初心者におすすめの一冊です。
廃墟となった円形劇場に、みすぼらしい身なりをした少女モモが迷いこんできました。モモは人の話を聞く才能があり、彼女と話をした街の人々は、問題ごとの解決策が浮かんだり、幸せになったりと、満ち足りた気持ちになって帰っていきます。
しかしある時、街に「灰色の男たち」がやって来ました。彼らが時間を奪うと、街の人々は心の余裕をなくしていつもイライラするようになってしまうのです。
モモは街の人々を救おうと、時間をつかさどるマイスター・ホラのもとを訪れるのですが……。
- 著者
- ミヒャエル・エンデ
- 出版日
- 2005-06-16
1973年に刊行された、ドイツの作家ミヒャエル・エンデの児童文学。世界各国で翻訳されましたが、日本で特に人気となりました。
「時間」という普遍的なテーマは、読書初心者でもとっつきやすいはず。時間を失うと、もっと大切なものまで失ってしまうという教訓がわかりやすく描かれています。灰色の男たちに時間を奪われて心の余裕をなくしてしまった人々を、何ももっていないはずのモモが救うという構図も考えさせられるものがあるでしょう。
児童文学に分類されてはいますが、大人も教養として読んでおきたい名作です。