はじめまして、片桐美穂と申します。茨城県出身。25歳。役者です。 今までやった役。「アヒージョが遅え」と店員に文句をつけるヤンママ。ベテランソープランド嬢。居酒屋店員。「ピザ早く持ってこいよ」と電話をガチャ切りする女。茨城在住であることを異様に気にする女。エトセトラ。エトセトラ。場を掻き回す「女ジャイアン」的な役も、なんなりと。 今月から連載させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
最近は人生の「酸いも甘いも」でいったら完全に「酸い」の役ばかり演じておりますが、実は3歳からクラシックバレエを習いはじめ、一時期はプロを目指して頑張っていた私。青春時代のほぼ全てをバレエのレッスンに費やしました。
バレエの本とダイエットの本以外に「活字」に触れる機会がなく、雑誌ですら「対談」のページは飛ばして、写真だけを見る始末。周りが『ONE PEACE』で盛り上がる中、漫画の読み方もイマイチ分からないまま成長。
舞台の専門学校に通っていた頃は、台本を渡され、「わ! 文字がいっぱい!」とキャパオーバー。そのまま台本に突っ伏してしまうことは日常茶飯事でした。
初回は、そんな「本からの逃亡生活」を歩んでいた私ですら、どっぷりハマった……いや、魅力的過ぎてハマるしかなかった本を、幼少期から順に紹介したいと思います!
- 著者
- 林 明子
- 出版日
- 1989-06-30
幼い頃、母親がよく読み聞かせをしてくれていたので、じつは家には絵本が溢れていた。その中で1番好きなのが、この「コンとあき」。「あき」と、あきのおばあちゃんが作ったキツネの人形「コン」との2人の物語。
コンは、あきが産まれて、病院から帰ってくる時を、ベッドの横で待っている。それからずっと一緒の2人だが、コンはあきが成長するにつれ、古びてしまう。
コンを治してもらうため、2人は電車に乗っておばあちゃん家に向かうのだが、様々な災難に見舞われるのだ。小さな体をいっぱいに使って、「僕がお兄ちゃんだぞ!」と、あきを全力で守るコン。この姿が、まぁ、なんとも尊い。昔、おばあちゃんに頼まれたのだろうか。
コンは電車のドアにしっぽを挟まれても、砂丘で犬に襲われても、「だいじょうぶ、だいじょうぶ」とあきを心配させないように言うのだ。何度も何度も。大人になった今は「どう見たって大丈夫じゃないだろぉ!」とつっこみを入れてしまう。だが、涙なしでは読み進められない。果たして、2人は無事におばあちゃんの家にたどり着けるのだろうか。大人でもハラハラする冒険物語。
様々な現実を目の当たりにしていくあきが、少しずつ強くなっていく様子も見所の1つ。こちとら産まれたときからあきを見守っているので、あきが泣いていたら、すぐにでも手を差しのべたい!!が、ぐっと我慢。
あとはなんと言っても、林明子さんの絵が素晴らしい。フワッとしたフォルムに、優しいタッチ。母性本能をくすぐられて、子供を生んでもいないのに、まるで自分の子供の冒険を見ているような気分になり、心がぎゅう!っと締め付けられる。
私は自分の大切な人や物を守れているのだろうか。
守るために自分で考えて行動しているのだろうか。
立ち止まって自分を見つめ直すことが出来る、私にとって大事な1冊だ。
- 著者
- 山岸 凉子
- 出版日
私が夢中になった漫画「舞姫 テレプシコーラ」。
2007年、第11回手塚治虫文化賞マンガ大賞受賞作。
作者は山岸涼子さん。いや、山岸涼子先生。山岸先生の別のバレエ漫画「アラベスク」が好きだった母が買ってきた。元々は雑誌『ダ・ヴィンチ』で連載していた大人向けの作品。過激な描写があるとは露知らず、中学生の私は「コレ、見ちゃいけないやつだ……!」と、悪いことをしている気分になりながらぐいぐい読み進めた。
プロのバレエダンサーではなく、小学生から高校生までの同年代のダンサーの話というのが、当時の私を夢中にさせた1番の要因だろう。
主人公は、母親が教えるバレエ教室に通う、六花(ゆき)。
六花には全国で1、2位を争うダンサーの姉、千花(ちか)がいるのだが、千花はトップ故の悩みに苦しめられている。出来て当たり前。ミスをしたら駄目。嫌味を言われ、いじめられ、綺麗に踊ることが人から嫌われる要因になる。とてつもなく残酷な世界だ。大好きなはずのバレエに追い詰められ、バレリーナになる使命を背負った千花の未来は……。どうなっちゃうの!
もう1人、壮絶な人生を歩む人物がいる。六花が通う学校に転校してくる少女、空美(くみ)だ。酒乱の父親からは虐待を受け、貧しすぎる家庭のため、なんと、母親に児童ポルノのモデルにさせられる空美。凄惨な撮影のシーンは中学生の私にとっては、とても見ていられない風景だった。
一見女の子には見えない容姿だが、卓越した実力の持ち主で、千花も一目置くほど。2人が初めて一緒にレッスンを受けたシーンは相当痺れた。きらびやかで豪華でロマンチックだと思われているクラシックバレエの裏側が、リアルに描かれた物語である。
体の条件が良くないが、踊ることが大好きな六花の姿に、当時の自分をついつい重ねてしまう。中学2年生の夏のコンクール。元々体が大きかった私は、生理が止まってしまうほどの過激なダイエットをした。レッスンでは先生から「あんたは人の10倍練習してやっと人と同じ踊りが出来る。」と言われ、その通りに必死に練習した(この頃の私は「触れたら怪我する。」「ジャックナイフだ。」と言われた程、切羽詰まっていたらしい……)。
そのコンクールには、教室から私を含め4人が出場したが、
…….私だけ予選落ちした。
泣いた。めちゃくちゃ泣いた。
努力なんてなんの意味もない。と本気で思った。
そんな私はこの、「バレエを好きで好きでたまらない」六花の姿に少し救われ、「好きこそ物の上手なれ」と「続ける大切さ」を教わった。六花は私の中で勇者に見えたのだと思う。
今はバレエは趣味となり、職業はバレリーナではなく、役者をやっているが。昔と変わらず自分と向き合う日々。やはり必死にバレエをやっていた過去の私が支えてくれている。私の人生のバイブル的作品だ。
ここ最近で1番夢中になったのは、「パチンコ必勝ガイド」でライターデビュー後、様々なエッセイや旅行記を出版しているゲッツ板谷さんのエッセイ集「情熱チャンジャリータ」。エッセイ集は、本が苦手な私には持ってこい。しかも、下ネタが大炸裂してるらしい。そんなの読むしかないじゃないか!
読み始めた私は3行で心奪われた。呼吸するように次々と繰り出される下ネタに、自分の日常では考えられない「日常」が目の前でくり広げられていく。
紹介したい話がたくさんあるが、私が言葉にしてしまうと魅力が半減してしまう。それほど彼の言葉選びは、とてつもなく下品で愛に溢れているのだ。が、せっかくなので私の心を奪った冒頭部分の一部を。
クラスメイトの真理子(仮名)と、自宅で「乳くり合って」いたところ、(乳くり合う、って言葉、使わねえ〜!)別のオンナにドンドンとドアを叩かれた時の会話がこうだ。
(がんばれっ、オレ!一世一代の頭の回転を発揮しろおおおっ!!)
「はいっ、わかった!じゃあ、ホントのこと言うわ。……よ、吉村さんが来てんだよ、今」
『誰よっ、吉村さんって!?』
「ふ、風鈴みたいなモノを作ってる人だよっ」
『風鈴とココのドアが開けられないことと、どういう関係があるのよっ!?』
「ナメんじゃねえええっ、吉村さんを!!」
『はあ?』
「く、詳しいことは明日話すけど、普段は入れないミルクをコーヒーに混ぜてんだよっ、この人はあああっ!!それがどういうことかわかってんのかっ、貴様は!?金沢明子に至近距離から歌われても倒れちゃうんだよっ、今の吉村さんはっ!!」
こういった、愛(?)と下ネタ、情けないけどばかばかしくて笑っちゃうようなエピソードの連続。
この本は作者のゲッツ板谷さんと、その周りの人物のエピソードが主なのだが、とにかく板谷家の人々がぶっ飛び過ぎている。なんならこの本は、ファンタジーなんじゃないかと思うくらい規格外だ。
彼らとは絶対友達になりたくないが、もう大好きになってしまった事実は変えられない。なんなら、出会いに感謝している。ありがとう。
彼らは、自分が悩んでいることが、どれだけしょうもないか教えてくれる。
海外で絶景を見た時に、自分の小ささを感じるのに似ている。くよくよしがちの私に、失敗を恐れない勇気を教えてくれた。って、いつどんな性癖に目覚めたか、とか、ソープに行った話とかそんな話ばかりだなのが……。
今、自分の日常に飽き飽きしている方は、ゲッツ板谷さんの刺激的な日常に触れてみるのはいかがだろうか。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
3冊とも、読書の世界へ足を踏み入れる第1歩として、最適なんじゃないかと思います。なぜなら、私が読めたので。
ぎゅっ!と凝縮された世界に翻弄されること間違いなし。家にいることが多い今だからこそ、色んな世界に旅立ちたいものですね。
来月は何を紹介しようかな。
また、お会いしましょう!