5分でわかる特定秘密保護法!内容と問題点、アメリカなどの反応をわかりやすく解説

更新:2021.11.22

2013年に成立して以来、さまざまな議論がくり返されている「特定秘密保護法」。この記事では、その内容や制定されたきっかけ、問題点、各国の反応などをわかりやすく解説していきます。おすすめの関連本も紹介するので、ご覧ください。

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特定秘密保護法とは。主な内容と「スパイ防止法」との関係も解説

 

「特定秘密保護法」は、2013年に成立し、翌2014年に施行された日本の法律です。

その目的は、国の安全保障に関わる4分野「防衛」「外交」「スパイ活動防止」「テロリズム防止」、そのうち55項目の情報を「特定秘密」に指定し、これらの情報の取り扱い方を定め、漏えいを防くことにあります。

「特定秘密」は原則5年で解除されますが、内閣が承認すれば最大で60年まで期限を延長することが可能です。

また罰則も規定されていて、「特定秘密」を扱う公務員や民間業者による情報漏えい、新聞記者などが不当な方法で「特定秘密」を入手した場合は、最大で懲役10年の罰則が下されます。

特定秘密保護法が制定される前にも、1985年の国会で「国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案」、通称「スパイ防止法案」の制定が議論されたことがありました。日本ではスパイ活動を取り締まる法的根拠が存在せず、スパイを防ぐことができないと考えられたためです。しかし、国民の権利を侵害するリスクが懸念され、廃案となり実現しませんでした。

その後2001年に「自衛隊法」が改正された際、「防衛秘密」の規定が新設されるなど、情報の取扱いに関する法整備が進んでいきました。そして、尖閣諸島問題が2010年に先鋭化したことをきっかけに、情報管理に関する議論が活性化。特定秘密保護法が国会に提出され、成立に至ったのです。

特定秘密保護法が作られたきっかけは?

 

日本で特定秘密保護法が作られた背景には、先述したようにスパイ活動に対する法整備がなされていないことが挙げられます。

特定秘密保護法に肯定的な立場からは、日本もスパイ活動を防ぐ枠組みを作らないと、友好国や同盟国との協力関係に支障をきたすことが指摘されていました。

2007年にアメリカと「GSOMIA(軍事情報包括保護協定)」が締結されたことからもわかるように、機密情報を諸外国と交換・共有する動きが活発化しています。もし日本が情報を漏えいすると、その影響は日本以外にもおよんでしまうのです。

さらに2010年9月、尖閣諸島沖で、中国の漁船と海上保安庁の巡視船が衝突する事故が起こりました。すると同年11月4日、海上保安庁の職員がその映像を政府の了承を得ずにネット上で公開し、大きな反響を呼びます。

この動きに対し、当時の内閣官房長官だった仙谷由人は、「国家公務員法の守秘義務違反の罰則は軽く、抑止力が十分ではない」と述べ、特定秘密保護法の制定に前向きな姿勢を示しました。その後政権交代を経て、第二次安倍内閣によって特定秘密保護法が制定されたのです。

このように高度な機密情報をめぐって諸外国と協調する必要性があったこと、人々の間で機密情報に対して注目が集まったことが、特定秘密保護法が制定されたきっかけだといえるでしょう。

特定秘密保護法の問題点。これまでの「見直し」も紹介

 

高度な機密情報を取り扱うために制定された特定秘密保護法ですが、その内容に対して懸念も示されています。それは、「特定秘密」の名のもとに、国民の知る権利や報道の自由、情報公開が制約されてしまうのではないかというものです。

仮に政府が知られたくない情報を「特定秘密」に指定した場合、国民が知るべき情報も隠ぺいされてしまいます。さらに戦前の「治安維持法」のように、特定秘密保護法の罰則規定が言論弾圧に利用されかねないことも問題視されています。

これに対し政府は、恣意的な運用を防ぐため、特定秘密保護法の制定とあわせて、内閣府内に「独立公文書管理監」、衆参両議院に「情報監視審査会」を設けました。

それでも依然として批判はなくなりません。「独立公文書管理監」が政府から独立しているとは言い難い、「情報監視審査会」は構成員が頻繁に入れ替わって十分に機能していない、などの声があります。

こうしたなか、政府は2019年12月に特定秘密保護法の運用見直しを決定。具体的には、これまで法適用の対象となった70の行政機関のうち、「特定秘密」を保有したことのない42の機関を法の適用から除外するというものです。

機密情報の保護と国民の権利の間で、特定秘密保護法は揺れ動いています。

特定秘密保護法に対する、アメリカをはじめ各国の反応

 

国内で論調が二分されているのと同じように、世界の特定秘密保護法に対する反応もさまざまです。

以前より日本と防衛関係強化を進めてきたアメリカ政府は、特定秘密保護法を歓迎する立場をとっています。2013年12月、アメリカ政府は国務省副報道官のハーフを通じて、特定秘密保護法の成立を歓迎する考えを示しました。

一方で東アジアでは、否定的に捉える論調が目立ちます。

韓国の日刊紙「ハンギョレ」は、特定秘密保護法成立の報道に際して、日本の右傾化を懸念する論評を発表しました。中国共産党の機関紙「人民日報」は、「秘密保護法は日本の平和憲法の精神を破壊」と題した論説を発表し、強い反発を示しています。

また言論の自由を守るために設立されたNGO「国境なき記者団」は、特定秘密保護法の成立を理由に「世界報道の自由度ランキング」の日本の順位を下げています。

若手弁護士たちが条文を大胆に口語訳

著者
明日の自由を守る若手弁護士の会
出版日

 

特定秘密保護法は条文の言い回しが難解で、実際に読んでも理解するのが難しい法律です。本作は、条文を大胆に口語訳し、図やイラスト、漫画なども活用しながらわかりやすくまとめたものです。

内容を紹介するだけでなく、秘密の対象が曖昧であることをはじめ、その問題点についても解説。本作を読むことで、特定秘密保護法の概要や、論争となっている部分を把握できるでしょう。

特定秘密保護法の危険性を小説で読む

著者
北沢 栄
出版日

 

本作は、特定秘密保護法の危険性を訴える立場から執筆された小説です。

あらすじは、自衛隊の新型戦闘機に関する機密情報を聴きだした主人公のジャーナリストが、特定秘密保護法違反の容疑で逮捕起訴されるというもの。

あり得るかもしれないフィクションを描くだけでなく、ベルリンの壁崩壊前後の東ドイツの実話も挿入されていて、法によって国家権力が肥大化するとどうなるのか考えさせられる一冊です。

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