台湾文学おすすめ6選!翻訳された人気作家の小説を紹介!

更新:2021.11.22

歴史を振りかえってみると、数多くの国に統治されてきた台湾。文学においても、長い間「中国文学の一部」という位置づけでした。しかし現在、人口わずか2300万人の台湾から発信される作品が、人口14億人の中国語圏で広く愛される逆転現象が起きているのです。注目度の高いおすすめの台湾文学を紹介していきます。

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社会現象になった衝撃作!おすすめの台湾文学『房思琪(ファン・スーチー)の初恋の楽園』

 

台湾南部、高雄の高級マンションに住む13歳のスーチーは、文学好きの美少女。ある日、同じマンションに住む憧れの国語教師に作文を見てあげると言われ、訪れたところ、レイプされてしまいます。

50代のカリスマ教師が、自分の立場と、文学を愛する純粋な少女の心を利用した重大犯罪。しかしスーチーは、その関係から抜け出せなくなっていくのです。

著者
["林奕含", "泉京鹿"]
出版日

 

2017年に刊行された林奕含(リン・イーハン)のデビュー作。日本では2019年に翻訳出版されています。作品に「これは実話をもとにした小説である」と書かれていたことから、作者自身の体験なのではと、台湾で社会現象になりました。

1991年生まれの作者は、医者の娘で成績も優秀でしたが、高校2年の時にうつ病を発症。医大に入学するも3度の自殺未遂をくり返し、本作が刊行された2ヶ月後に26歳で自殺しました。

自分をレイプした犯人を初恋の相手だと思い込まなければ、保てない正気。ガラス細工のように繊細なスーチーがひたすら痛々しく、詩的な文章との対比で性犯罪の残酷さが浮き彫りになります。

彼女のほかにも、スーチーの幼馴染や、夫からDVを受けている女性、国語教師の元彼女などが登場。周囲の人がうらやましがる高級マンションの内側で、皮肉にも恐ろしいことが巻き起こっているという現実が読者の心も締め付けます。読後も深い余韻を残す作品です。

台湾史100年と家族の物語『自転車泥棒』

 

古い自転車をコレクションしている小説家の「ぼく」。かつて失踪した父親とともに行方不明になった自転車を探す旅に出ます。

仕立屋として実直に働いていた父が、当時ひどく高価だった自転車に乗って、なぜ家族の前から姿を消したのか。主人公の思いは、一気に20年前に戻っていきます。

著者
["呉明益", "天野健太郎"]
出版日

 

2018年に刊行された台湾の人気作家、呉明益(ウー・ミンイー)の作品。200冊以上の資料を参考にし、台湾史100年を描いた壮大なスケールの長編で、「国際ブッカー賞」にもノミネートされました。透明感あふれる翻訳が定評だった天野健太郎の遺作でもあります。

主人公は、父親の行方を追う過程で、自転車にまつわる人々の歴史を掘り起こしていきます。日本統治下のマレー半島の銀輪部隊、ミャンマーの原生林の国民党兵、アジア象の1000kmにおよぶ中国への送還、内戦……。

歴史の荒波にもまれながら生きた人々の話は残酷で哀しいものばかりですが、どこか幻想的でノスタルジック。台湾人から見た戦争観を知るうえでも興味深い一冊です。

甘酸っぱいおすすめ青春恋愛小説『あの頃、君を追いかけた』

 

やんちゃで悪ガキの柯騰(コートン)は、成績優秀で品行方正な美少女の佳儀(チアイー)に恋心を抱いています。

ある日、担任教師がチアイーの真ん前の席にコートンの席を移動させました。彼女に問題児のお目付役をさせようという魂胆です。

著者
["九把刀", "阿井 幸作", "泉 京鹿"]
出版日

 

2006年に刊行された九把刀(ギデンズ・コー)の作品です。コーは大学在学中からインターネット上で小説を発表して有名になり、台湾の数々の文学賞を受賞した人物。本作が映画化される際は、自らメガホンを取りました。映画は日本でも2018年に公開されています。

教え方が上手いチアイーのおかげで、どんどん成績が上がっていくコートン。子どもっぽいけど素直でまっすぐな彼のことを、チアイーも憎からず思いはじめます。しかし2人の距離は近づいているのに、コートンはどうしても告白をすることができません。

青春と恋愛の甘酸っぱさに、台湾の情緒とラストの意外性が重なって、爽やかで切ない読後感が待っています。恋愛っていいなあと素直に思わせてくれる青春小説です。

女だらけの台湾版マジックリアリズム小説!『冬将軍が来た夏』

 

台中にある幼稚園で保育士をしていた「私」。園長の息子にレイプされて深く傷つき、職も失ってしまいました。

そんな彼女のもとに、死んだはずの祖母と5人の老女、そして「テレサ・テン」と名付けられた1匹の老犬が突然現れました。そして7人と1匹は、共同生活を始めることになるのです。

著者
["甘耀明", "白水 紀子"]
出版日

 

2017年に刊行された甘耀明(カン・ヤオミン)の作品。作者は大学生の時から小説を書きはじめ、地方新聞の記者を経て作家デビューしました。立て続けに6つの文学賞を受賞し、その多彩な表現力を「千の顔を持つ作家」として評価されています。

ローテクな老女たちは社会からつまはじきにされていますが、みんな個性的でパワフル。自分の才覚だけで生きるユニークな特殊技能をもっています。傷ついている主人公のために、あれこれと手を尽くす様子も微笑ましいでしょう。

濃密で愛にあふれた、ひと夏の時間を堪能できる作品です。

日本人こそ読むべき、原発事故を扱ったサスペンス小説『グラウンド・ゼロ 台湾第四原発事故』

 

台北近郊にある第四原発に、原因不明のメルトダウンが発生。台北は非難区域となり、人々は台南へ移動することを余儀なくされました。

原発で働いていた関係者のなかで生き残ったのは、エンジニアの林群浩ただひとり。記憶を失った彼の頭には、なぜか次期大統領候補者の姿が刻まれていて……。

著者
["伊格言", "倉本 知明"]
出版日

 

2017年に刊行された伊格言(エゴヤン)の作品。福島の原発事故に触発されて執筆されたそうで、「呉濁流文学賞」「華文SF星雲賞」を受賞しました。

物語は、事故から2年が経った大統領選挙間近の現在と、事故以前の出来事が交互に語られていく構成です。事故が起きた原因や、林群浩が記憶を失った理由がしだいに明らかになっていき、後半では人々が原発事故向き合い、立ち直っていく過程が描かれています。

後戻りできないほど進んだ文明の恩恵と、それを当たり前に享受する人間の驕りについて、あらためて考えさせられる作品です。

台湾を知るうえで必読の歴史ノンフィクション『台湾海峡一九四九』

 

1895年から1945年の日本の統治時代、並行して巻き起こっていた国共内戦、そして1949年に敗戦した蒋介石率いる国民党が台湾に撤退するまでを描いたノンフィクションです。

作者が自身の19才の息子に向けて、血塗られた歴史を語り聞かせるかたちで描かれています。

著者
["龍 應台", "天野 健太郎"]
出版日

 

2009年に台湾で刊行された、龍應台(ロン・インタイ)の作品。作者は大陸から台湾に移った外省人の子だそうです。日本の6分の1の人口しかいない台湾で、42万部を売りあげた超ベストセラーとなりましたが、中国では禁書となりました。

日本人、ドイツ人、オーストラリア人、アメリカ人、中国人、そして台湾人……当時を知るさまざまな立場の人にインタビューをし、オムニバス形式で彼らの生きざまとその背景を語っています。

作者は本書を「歴史書ではなく文学」だと位置づけていますが、本書の内容は今日の台湾を形成する紛れもない事実。死っておきたい一冊です。

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